第19話『刹那の危機』
「さて、俺は適当に商店街をふらついてるから、制服もらってきて良いぞ」
「僕も本屋に行ってくるからね」
「え!?」
商店街に着いた途端、ラインとアレスがそんなことを言い出した。一緒に服屋まで来てくれるのかと思っていたが、全然そんなことないようだ。
「何驚いてんだよ。服くらい一人で買ったことあるだろ?」
「そりゃもちろんあるけどさ。異世界だから不安っていうか……。ただこれを見せればいいだけ?」
「そうだね。その後に、サイズを測ってからカナタに合った制服を貰えるよ」
まあ、それだけなら別に……良いか。ちょっと心配な面もあるが、ただ制服をもらうだけ。そう自分に言い聞かせる。
「じゃあ、行ってくる……あ、れ?」
そして、気づいた時にはラインとアレスは既にいなくなっていた。
(早っ!? あいつらどういう身体能力してんだよ……? ――とりあえず、服屋入るか)
二人の身体能力に驚きながらも、カナタはゆっくり服屋に入る。
そこには、何やらよく分からない装飾が沢山施されていて、大量の服が掛けられていた。
(へぇ、凄いなここ。――っと。俺は店員さんに用があるんだった。レジは……あそこだな)
「あの、すみません」
「はい、どうかしましたか?」
レジに向かい、カナタは店員の男性に声をかける。優しい声で丁寧に対応してくれた男に合格通知書を見せ、
「制服をここで受け取るように言われたんですが……」
「ああ、魔法学園の方ですか。サイズとか色々と測らないといけないので、こちらに来てもらってもいいですか?」
「あ、はい、大丈夫ですよ」
そして、カナタは試着室まで連れていかれた。
◆◇◆◇
(えっと、なにか新しい本はないかな?)
カナタとラインと別れ、一人となったアレスは本屋で興味が引かれる本を手に取ってはめくり、手に取ってはめくりを繰り返していた。
(うーん、どれも見たことあるものだもんね。新しい本が見たいなぁ)
彼らの住む、ファルレフィア邸には図書室があり、いつの時代のものか分からない昔のものから現代の本までほとんど揃っている。
それもこれも、代々住んでいた先祖が揃えていったものだ。他の兄妹たちはそこまで興味がなかったみたいだが、読書が好きだったアレスは家にある本は全て読破している。
最近でも、読む本は増え続け、図書室の本棚はさらに多くなってきている。
(あれ、なんだろうこれ? 新しい本かな? えーっと。――へぇ、面白そう。これと、あと何冊か買おうか)
一冊は決まったようだ。それは、新しく入った小説。そして残りの本も決め、アレスはレジへ進んだ。
「ありがとうございましたー」
店員さんに頭を下げ、本屋から出るアレス。
(カナタはまだサイズを測ってる途中かな? 兄さんは木陰で休んでるね。先にカナタの方に向か……。――まずい)
先にカナタと合流しようと考えたアレス。しかし、その刹那、危険を感じた。ラインの身に何かが襲いかかろうとしている。
服屋に向かおうとしていた足を逆方向に向け、一気に走り出した。
◆◇◆◇
(ふらついてるとは言ったけど、なんにもすることねえな……)
本屋に行ったアレスとも別れ、一人となったラインは道をただ単に歩くだけだった。
「今日も日差しが強くて暑いな……。木陰にでも行くか……」
このまま進めば、巨大な森がある。そこにある木の影で休もうと考えたのだ。
「よしっと……」
木に背中を向け、ゆっくりと座る。日差しを全て森が防いでくれる上に、微量に吹く風が冷たくて気持ちがいい。
「こんな日に、あいつらよく遊びに出かけたな……」
ラインとアレスの妹である、セツナとレンゲ。そして、メイドのセレナとエルフィーネは朝から仲の良い友達と遊びに行ったのだ。
「あいつら、今日は帰り遅そうだしな。カナタの買い物が終わったら、俺もどこかに行ってくるか」
木を背もたれにしながら今日の予定を試行錯誤中のライン。
そんな彼に、後ろから声がかけられた。
「あれ、ラインお兄ちゃん、こんな所で何してるの?」
「え? ……セツナ?」
それは、友達と遊びに行っているはずの妹だったのだ。周りを見てみるが、もう一人の妹と、メイドの姿はない。
「……今日はもう帰りか? 早いな。レンゲたちは?」
「レンゲたちはまだ遊ぶって。あたしは疲れたから帰ろうと思ってて。一緒に帰ろ?」
そう言うセツナに目も向けず、ラインはゆっくりと立ち上がる。
そして、
「ああ、そうだなぁ!」
「――ッ!?」
次の瞬間、セツナの右腕は吹き飛ばされた。困惑し、泣きそうな表情でラインを見つめるセツナ。
「ら、ラインお兄ちゃん? どうしてこんなことするの?」
「どうしてかって? ――お前、ふざけてんのか? いい加減にしろよ?」
「ふざけんなって言われても、あたし、何もしてな――」
再び、謎の力がセツナの左腕を消し飛ばした。泣きそうな顔でラインを見つめる彼女を冷たく睨み、ラインは言葉を紡いだ。
「てめぇは誰だって聞いてんだよ」
「――――」
――ああ、やっぱりバレちゃったか。




