第3章41話『【大罪冠】『嫉妬』リオネ/元【十執政】『第八位』サフィナ・カレイド』
100話目です!!
「はぁーぁ……。変な時間に起きちゃったな……」
午前四時頃だろうか。こんな時間に目が覚めてしまい、仕方なくリビングまで歩いている。
暗い廊下を歩く、ピンク髪の少女。ヨナギ・カナタのクラスメイトである、サフィナ・カレイド――ではなく、彼女に瓜二つの少女、【大罪冠】『嫉妬』リオネだ。
「……ん?」
ふと、リオネは立ち止まる。右手側にある部屋に、灯りがついているようだ。きっと、この部屋にいる者が起きているのだろう。
コンコン、と扉を叩くと、「いいですよ」と声が返ってきた。だから、リオネはドアノブを回して部屋に入った。
目の前には、椅子に座ってこちらを見ている紫髪の少年。その容姿をリオネは瞳に映すと、
「こんな時間に何してるの、バラム?」
「それはこっちのセリフでもあるんですがね。僕は今、《支配の呪い》で遠くにいる人間を操っている最中なんですよ」
「ああ、『強欲』の力ね。誰を操ってるの?」
「別に大した人物ではないです。ただの盗賊を操ってるだけなので」
彼、『強欲』バラムの持つ《支配の呪い》はその名の通り、人を支配することができる。
そのため、今は人間を支配してなにかやっているようだ。
「それで、リオネは何をしにここにきたんです?」
「目が覚めちゃってね。なんかもう眠れそうにないからリビングに行こうとしたら、バラムの部屋が明るかったからさ」
「ああ、そうなんですね。僕はちょっと眠れなくて。なのでこうやって、力を高めようとしていたんですよ」
頑張り屋さんだなぁと思うと同時に、リオネは「やっぱりバラムは『強欲』だ」と思った。
その称号に合うように、バラムは力を求めている。
――いや、力だけではない。仲間も、運も、地位も、権力も、何もかもだ。
それこそが、『強欲』として生まれた彼の運命だ。
「リオネこそ、呪いを使いこなす練習すればいいんじゃないですか?」
「そうだね。でも、私の《侵夢の呪い》は相手がいないと練習できないからさ。一人じゃどうしても無理でね」
「たしかにそうですね。それなら、外に出て二人で練習しますか?」
「あ、いいじゃん。じゃあやろっか」
――そして、『嫉妬』と『強欲』は部屋からいなくなった。
◆◇◆◇
「はぁー。変な時間に起きちゃったー」
午前四時頃だろうか。こんな時間に起きてしまい、もう目を閉じても全然眠れないため、リビングに向かって歩いている。
暗い廊下を歩く、ピンク髪の少女。【大罪冠】『嫉妬』リオネ――ではなく、オリジナルである少女、サフィナ・カレイドだ。
「よいしょっと」
花のように綺麗な桃色や黄緑色が入った対の扇、フロリーレを手に取って、顔に向けて仰ぐ。別に暑いというわけではないが、ちょっとしたサフィナの癖だ。
「こんな時間じゃ誰も起きないよねー。寝てる部屋に入るのも悪い気がするしー、やっぱりリビングでくつろいどこうかなー」
現在この家に住んでいるのは彼女だけではない。幼馴染のロエン・ミリディアとヴァルク・オルデイン、そして、親友のミレーナ・ネフェリアがいる。
だが、三人はこんな早い時間には起きないし、今も自分の部屋でぐっすり寝ているだろう。
明日は学校で時間も時間だし、邪魔するのも悪い。
ソファーに座ると、元々持っていたタオルを膝にかける。
「そういえば最近手入れしてなかったなー。アタシの大事な扇だもんねー」
そう言いながら、サフィナはフロリーレの手入れをする。
見た目はただの綺麗な扇だが、刃は鋭い斬撃を起こすことができる強力なものだ。
そのため、手をザクッと切らないように細心の注意を払いながら、タオルでフロリーレを優しく擦る。
「うんうんー。これでまた変なのが襲ってきても大丈夫だねー」
全く昨日は酷い目にあった。
ロエンとともに【大罪冠】とかいう組織のアジトに行ったら戦う羽目になり、結局地面の空間が割れ、商店街まで戻されたのだ。
また昨日のようなやつに襲われることがないように、日頃から注意をしておこう。
そう思った。
――それにしても。
「それにしてもー、あのヴェルドとかいうやつ、セルヴィと同じ顔だったなー」
【大罪冠】『暴食』ヴェルドであるが、その顔をサフィナは知っていた。
かつて、『破壊神』と『魔王』が率いていた【十執政】という組織で『第八位』として活動していた彼女だが、そのときの同僚と同じ顔だった。
だが、その同僚は死んだはず。一体、なにがどうなっているのだろうか。
「はあーぁ、考えてもわかんないしいいやー。アタシあいつのこと嫌いだしー、また会ったら斬ればいっかー」
見た目に合わず怖いことを言うものだ。自分の発言になんとも思っていないのか、冷たい目がフロリーレに向けられる。
「そういえば、アタシとそっくりな【大罪冠】もいるんだっけ?」
アレスから、サフィナにそっくりな【大罪冠】『嫉妬』リオネのことは聞いたが、彼女はまだ会ったことがない。
自分と同じ姿の敵が目の前に現れたら、普通ならどうするのだろうか。
普通なら――、
「自分と戦うなんて、普通ならできないよねー。だけど……」
それでも、サフィナにはある。――自分を殺す覚悟が。
――いや、覚悟ではない。彼女はただ――、
「アタシが敵にいたって、どうも思わないからねー」
自分を愛していない少女には、自分と同じ姿の敵がいたとしても関係ないのだから。




