場所の特定と乙女のピンチ
「ファンに成りすました何か?」
「ああ、男性に人気のあるアイドルならその中に紛れ込んだりとかして、そのアイドルを壊したりとか。 ファンが多ければ多いほどそういう奴も出てくるからな」
「いわゆるアンチね。 確かに厄介なファンと同じく危険だね」
「ギルドにはそっち方面での情報もあるか確かめてもらおう」
多数のファンに紛れ、ファンに成りすました存在……いわゆるアンチの存在を仄めかしたカトル。
それを聞いたメルルは確かにありえそうな感じだとして納得したようだ。
そこでギルドにはそっちの方面での情報もあるか、確かめてもらおうと考えていた。
「あ、カトルさんにメルルさん、そしてノエルちゃん!」
「受付嬢さん、どうしたんです?」
ギルドに入ったと同時に、受付嬢が慌てた様子で出迎えた。
何があったのかと思い、メルルは彼女に尋ねた。
「お昼に『マジカルアイドル・ピュアキュア』の仮の事務所から壁をすり抜けて一人のアイドルを俵のような扱いにして運んでいた人影を見つけた冒険者がいて、追いかけようとしたら転移アイテムで逃げられたと……」
「ええ!? お昼に!?」
「転移アイテムとすり抜けアイテムを持っていたという事は……、確実に下調べをしていた可能性があるな」
「うん。 それにすり抜けアイテムはあの『スナップクリスタル』と同様、制作も使用も禁じられてるアイテムだからね。 もしかしたら……」
「じゃあ、どこに連れていかれたかは分からないの?」
どうも昼に仮の事務所の壁をすり抜けて一人のアイドルを攫った人影を冒険者の一人が発見したが、転移アイテムで逃げられたとの事。
事前に下調べしており、かつ世界各国で禁止されてるすり抜けアイテムを使ったのという事で、嫌な予感を過らせた。
その傍らでノエルがアイドルの少女がどこに連れていかれたかは分からなくなったのかと受付嬢に尋ねていた。
「幸いにもアイドルの服には内部に感知アイテムが組み込まれているらしく、何らかのトラブルが起きた時に起動する仕組みのようで、現在こちらの感知魔法で反応した場所はここです」
「ここは……!?」
「かつて『アリストクラット』の拠点を攻め入った時に向かった霧の森だね。 ここ辺境から転移で向かわないと間に合わない場所に移すとはやってくれるね」
受付嬢から示された魔法の地図に感知魔法によって反応した場所が、かつてカトル達が『アリストクラット』壊滅に向かう際に敵が拠点として構えていたという霧の森だった。
辺境であるここホーエルからは転移で向かわないと間に合わなくなる場所でもあり、そこを利用した犯人に怒りを露にした。
「どうするの、おにいちゃんにおねえちゃん?」
「もちろんそこに向かうよ。 幸い、追加報酬で転移アイテムを貰ってるから、すぐにそこへ向かうよ」
「だが、攫ったのが昼前。 今は夕方になってるかし、タイミングもあるからな。 メルル、準備は?」
「うん、用意してきたよ。 後はもう一人は冒険者は必要かな?」
「では、彼を呼びますので連れて行ってあげて下さい」
そう言うと受付嬢は、掲示板付近に考え込んでいる冒険者を呼んだ。
「彼はアレスさん。 例の少女とは幼馴染のようでして……」
「彼女を助けたかったのですが、一人ではと考えていたら丁度良かったです。 よろしくお願いします」
「こちらこそ」
「それじゃあ、私達はすぐに転移で霧の森に行ってきます」
「はい、お気をつけて」
件の少女とは幼馴染であるアレスと言う冒険者と共に、メルルは転移アイテムを使い霧の森へと転移した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
一方で、攫われたアイドルの少女は……。
(な、何でこんな目に……)
かつてアリストクラットの拠点だった屋敷の中で縄で縛られ、床に座らされた少女は必死で脚を擦り合わせていた。
彼女がトイレに行くタイミングで彼女の目の前の男に攫われたのだ。
どうやって目の前の男が仮の事務所に入り込み、トイレに行くタイミングを狙ったのかは分からない。
ここ最近の厄介なファンたちによる盗撮騒動で警戒していたはずだった。
(ううっ、この男はなんの目的で……、も、もう限界……)
彼女の乙女のピンチは限界寸前だった。
しかし、男は何かを持ちながらニヤニヤしている。
哀願しても拒否されるのだから、もうどうしようもない。
そして、とうとう最悪な時間が訪れた。
「あ、あ、あ、あ……! も、漏れ……」
少女がそこまで言った直後、小さい音と共に彼女の周りに水溜まりが作り出されてしまったのだった……。
次は諸事情により5月3日(火)更新予定です。
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