行方不明のアイドル
時期は本格的に春が訪れ、冒険者活動もしやすくなったのでカトルとメルルもノエルを連れて冒険者活動に精を出した。
もちろん、カブの栽培もやっている。
カトルとメルルは前回のカブの栽培で間引きに失敗したことで、いささか慎重になっているみたいだが、それでも楽しめれば問題はないだろう。
そんな折、シエラとマネージャーらしき人が直接メルルとカトルの住む家に来たのだ。
「え!? それ本当なの!?」
「うん、本当なんだよー。 それで『マジカルアイドル・ピュアキュア』は活動できないみたいで……」
「その子はお手洗いに行くと言って、大広間を出て行きましたが、夕方になっても戻ってこないので。 ギルドの方でも依頼として出してます」
シエラとマネージャーらしき人が言うには、『マジカルアイドル・ピュアキュア』のメンバーの一人がトイレに行ったきり戻ってこないらしく、ギルドの方でも捜索依頼を出した位だ。
どうも、この手のユニットはメンバーが一人でも欠けると活動が不可能になるらしい。
この世界のユニットグループならではの欠点でもある。
「他の子たちはどうしてます?」
「現在は村長様の家で厄介になってもらってます。 やはり、一人がなんらかのトラブルに見舞われた事でショックを受けているのではと……」
「そうですか……」
他の子たちはクルルの家で厄介になっているらしい。
どうも件の少女が行方をくらませた事にショックを隠し切れないようだ。
「ねぇ、シエラ」
「何かな、メルル?」
「マネージャーさんにも聞くけど、ここまでの間に何か変わった事とかない? 厄介ファンが増えたとかでもいいから」
「厄介ファン……」
「そういえば……」
「心当たりはあるんですか?」
やや重苦しい雰囲気だが、メルルはふと気になる事があったのか、シエラとマネージャーに今までで変わった事はなかったのかと聞いた。
そこでマネージャーがふと何かを考えていたらしく、カトルも気になったのか聞いてみた。
「厄介ファンの数は去年の秋祭りと比較して増えてる傾向があったんです。 中には盗撮まがいな事をする厄介ファンも現れたようで、護衛の冒険者様に止めてもらっていましたね」
「盗撮まがいまで……」
「シエラもやられたの?」
「うん、着替えの所を撮られたよー。 魔導具の『スナップクリスタル』によって」
「あの魔導具か。 使い方次第で犯罪にもなりえるから、世界各国が販売をしないならびに作らないようにしたみたいだけど」
「誰かがこっそり作ってこっそり持ってきたんだろう」
「確かに『アリストクラット』に属していた貴族主義の家系の中に世界が制定したルールに不快感を抱いてた奴らもいたね。 そいつらと繋がってたりとか」
グズマの一件でクルルが提案して開催した秋祭りの時と比較して、厄介なファンが増えたとマネージャーは言う。
さらに、その厄介なファンの中に盗撮まがいのことをする輩もいるようで、シエラも被害に遭ったという。
その輩は、禁断の魔導具の『スナップクリスタル』を所持しているという。
この魔道具は性質上、使い方次第で犯罪に使われる可能性も孕んでいる事から、世界各国がそれを販売ならびに政策はしてはならないと決められている。
これを破った場合は生涯牢獄生活となる。
だが、貴族主義を掲げていた『アリストクラット』に加入していた者たちはそのルールに不快感を抱いていた。
メルルとカトルはもしかしたらその者と厄介ファンが繋がっているのではと予想した。
とはいえ、ここで予想していても時間が過ぎるだけなのも事実。
そこで二人も行動を起こそうと決意した。
「私達もその子を探しますよ。 ギルドを通じてになりますが」
「申し訳ありません。 こちらも情報を集めますのでよろしくお願いします」
マネージャーに件の少女を探すことを伝えると、お願いしますと頭を下げてから家を出ていく。
仮の事務所に行き、情報を集めるためだろう。
「シエラはお留守番お願いね。 これで結界張っておくから」
「うん、分かったー」
メルルは魔道具の『結界石』を使って結界を張りながらシエラに留守番を頼むと告げた。
村長のクルルの家は他のアイドルの子たちを住まわせているため、部屋が一杯らしいからだ。
シエラに留守番を任せて、ノエルを連れてギルドに向かうカトルとメルル。
その最中に、カトルはこう言った。
「家で予測した内容と同時進行で他の可能性も調査した方がいいかもな」
「他の可能性?」
「どういうこと?」
カトルの発言にメルルとノエルは首を傾げる。
その様子に微笑ましさを感じつつも、それを抑えながら真面目にこう言ったのだ。
「今さっき頭が過ったんだけど、ファンに成りすました何かが仕込んだ可能性もあるんだ」
……と。
次は諸事情により4月26日(火)更新予定です。
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