ノエルの為のパーティをしよう
エビルグリズリーの一件から一週間。
あれからのメルル達は、何事もなく冒険者活動に精を出していた。
なお、ギルドに報告をした際には受付嬢は驚きのリアクションをしていた。
極寒の地となっている『ホーエル』の村周辺で、そのような魔物が出たことはある意味異常だというのだ。
この件については、後でジェフ国王にも報告をしておくという事で纏まり、報酬も従来よりお金は多く、さらにマジックポーションも多数貰った。
そして、一週間が経った今現在、自宅でメルルがある発言をした。
「ノエルちゃんの為のパーティをしよう!」
「メルル?」
「お、おねーちゃん?」
メルルが突然、ノエルの為のパーティをしようという発言に、カトルとノエルは固まる。
「急にそれを言い出すとは、理由は何だい?」
カトルがメルルに、パーティをしようと言った理由を聞く。
「ほら、ノエルちゃんの身の回りとかであまり大掛かりな事ができなかったじゃない?」
「確かに、ノエルちゃんを魔法使いとして鍛えたり、この村や僕達の家族の一員として生活させることに慣れるのを優先していたしな。 クルル達の協力もあって」
「そうそう。 さらにエビルグリズリーの件もあってね。 ようやく落ち着いたし、ノエルちゃんも生活に慣れたことだし、ここでささやかなパーティでもしようって思ったんだよ。 ノエルちゃん、元の家ではそれすらしてもらえなかったみたいだし」
ノエルがメルル達の家族の一員となってから、彼女の身の回りの事や冒険者活動をする際にノエルを魔法使いとして鍛えたりなどで、大掛かりなパーティなどをしている余裕はなく、当時のノエルもそういう精神状態ではなかったのだろう。
また、ラクレイン家の一員としての生活にも慣れていないので、そっちを優先する事でクルル達からも同意を得たようだった。
直近ではエビルグリズリー出現による恐怖の払拭もあり、ここまで落ち着いた時間は取れなかったようだ。
そして、今ようやくノエルも落ち着いたので、そのタイミングでメルルがパーティをしようと言ったのである。
「わたしの……?」
「そうだよ。 折角ノエルちゃんが私達の家族になったんだしね」
メルルがノエルにしっかり目線を合わせながらそう言うと、ノエルの瞳に涙が浮かび上がる。
今まで誕生日とかでそういう事をしてもらえなかった事もあり、初めて自分の為にそうしてもらえると分かった途端に涙が止まらなくなる。
そんなノエルの様子に気付いたカトルが、優しくノエルを抱きしめる。
「よっぽどパーティをしてくれる事が初めてかつ嬉しかったんだろうね」
「あれ、クルル?」
カトルが感極まって泣きそうになるノエルを抱きしめている様子に母親のように見守っているメルルの隣にいきなりクルルが現れた。
「クルルおねーちゃん?」
「どうやって来たんだよ、クルル」
「ちょっとした転移魔法の実験だよ」
「おいおい……」
転移魔法の実験の過程で突然メルルの家に転移したらしく、それを聞いたカトルは呆れかえっていた。
「パーティをやるなら私達も手伝うよ。 ノエルちゃんは今では私にとっても可愛い妹分だしね」
「いいの?」
「うん。 料理は私達の方で受け持つから、飾りやプレゼントはカトルお兄ちゃんやメルルお姉ちゃん達に任せるよ」
「悪いね、クルル」
クルルとメルルが話し合いをしている間に、カトルはノエルと触れ合っていた。
「ノエルちゃんは何か欲しいものがある?」
「んー、大きいぬいぐるみ……かな?」
(大きいぬいぐるみか。 確かあのよろず屋で売ってたな……)
かつてメルルに案内してもらったあの大きなよろず屋に、ぬいぐるみも売っていた事を思い出したカトル。
あそこならノエルが欲しがるぬいぐるみがあるのかも知れない。
「分かったよ、ノエルちゃん。 ぬいぐるみを買ってくるから楽しみにしてくれ」
「うん!」
カトルは少し考えたが、ノエルの為に欲しいぬいぐるみを買ってあげる事に決めたようだ。
「メルル、少しの間ノエルちゃんを頼むよ」
「どこに行くの?」
「よろず屋。 ノエルちゃんの欲しいものを買いにいくから」
「分かった。 ノエルちゃんは任せて」
「頼むよ、メルル。 じゃあ行ってくる」
「いってらっしゃい」
話し合いを終えたメルルにノエルを任せて、カトルはすぐによろず屋へと向かう。
その様子をメルルとクルルは微笑みながら見送った。
次は諸事情により2月15日(火)更新予定です。
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