エビルグリズリー、遭遇
「おにーちゃん、おねーちゃん。 はい、これ」
「おっ、これまた鮮度のいい雪降り草だな」
「みたいだね。 すごいよ、ノエルちゃん」
「えへへ……♪」
ホーエル村の東にある湖にて、カトルとメルル、そしてノエルは雪降り草の採取に来ていた。
ノエルが鮮度の高い雪降り草をしっかり採取してくるので、カトルとメルルは彼女の頭を撫でながら誉めた。
ノエルも誉められて嬉しいのか、満面の笑顔を浮かべている。
東の湖もようやく雪が溶けたばかり。
なので、村周辺よりは雪降り草の数が多いのだが、スライムがよく出現するので対処が出来る冒険者が必須なのだ。
「よし、これでいいかな?」
「いいんじゃないかな? 大半はノエルちゃんが採取してくれたけど」
「おーい、ノエルちゃんそろそろ終わるよー」
「はーい!」
規定数の雪降り草の採取が終わったので、カトルはノエルを呼んだ。
ポテポテとこっちに来る姿がまるで小動物みたいで可愛いのか、メルルと共に顔を綻ばせた。
「じゃあ、私がスタッフさんに完了のハンコを押してもらうように頼むから、ノエルちゃんと待ってて」
「ああ、わかったよ」
「はーい」
メルルが近くのスタッフに採取依頼の完了のハンコを押して貰いに行く間、カトルはノエルと戯れた。
「おにーちゃん、ぎゅー」
「ははは、ノエルちゃんは甘えん坊だなぁ」
ノエルを抱きしめるカトルは、ノエルが自分の胸の辺りを頬擦りする様子に思わず笑顔がこぼれる。
「今までが辛い扱いをされたんだし、しょうがないよ。 ハンコ押してもらったよ」
「よし、じゃあ帰ろうか」
「おにーちゃん」
「ん?」
依頼完了のハンコを押し終わり、村に帰ろうとした矢先に、ノエルがカトルを呼び止めた。
「ノエルちゃん、どうしたの?」
「何がこっちにくる……。 怖いのがこっちに……」
「怖いのが……って、足音が?」
メルルもどうしたのかと、ノエルに聞いた所、怖いのがこっちに来るという。
それを聞いたメルルも、今しがた足音が聞こえたみたいだ。
「この足音と獣の咆哮は……まさか?」
カトルもノエルを抱いたまま、足音と獣の咆哮が聞こえたようで、しかもそれに心当たりがあるような言い回しだった。
「来る……! カトル君……!」
メルルの発言と同時に茂みが大きく揺れる。
「グルル……」
その茂みから現れたのは、熊の魔物だった。
「ひぅっ!」
「な、なんでこのホーエル村近辺にあの魔物が……!?」
ノエルは、熊の威圧感に恐怖を感じたのか、カトルにしがみつく。
スタッフも、ホーエル村近辺に熊の魔物が来るなんて思わなかったのか、同じく恐怖に震えている。
「え、エビルグリズリー……」
そして、その熊の魔物の名前が『エビルグリズリー』であることがメルルによって判明した。
「そんな!! 冬は冬眠中のハズのエビルグリズリーが何故……!」
「あの威圧感からして……、多分『穴持たず』になったエビルグリズリーだよ。 かつてのグズマパーティ時代にも同様の奴と出くわしたからわかる。 あの状態じゃまともに戦っても勝てないよ」
「そうだったな。 あの時もあのやり方で倒せたんだったか」
カトルとメルルがグズマパーティにいた時に同じ穴持たずのエビルグリズリーと出くわした事があったようで、そんな状態のエビルグリズリーとはまともに戦っても勝てないと言う。
だが、二人はあるやり方で、そのエビルグリズリーを倒したとか……?
「どうやってですか?」
「エビルグリズリーには、他の熊系の魔物と違って致命的な弱点があるからね。 同時にそれが熊の魔物としては欠陥みたいだし」
「弱点?」
「後で教えるよ。 とにかく今はそれを遂行するために……」
「ふぇ、おにーちゃん!?」
「「逃げるっ!!」」
「「えええーーーっ!?」」
カトルはノエルをお姫様抱っこをして、メルルはギルドスタッフの腕を掴んでそのままエビルグリズリーから逃げた。
二人はエビルグリズリーの弱点をつく為らしいのだが、直後の逃げるという行動にノエルとギルドスタッフは驚きの悲鳴をあげていた。
次は諸事情により25日(火)更新予定です。
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