ギルドにて保護された女の子
年が明けて、グズマの末路を手紙で知ってからさらに一週間が経過した。
ホーエルはまだ寒さが厳しいものの、日中は多少暖かくなり、冒険者活動もしやすくなったそうだ。
「さて、私達も今年度の活動を始めよう」
「そうだね。 ようやく雪も解けたから活動もしやすいだろうな。 日中は暖かいし」
カトルとメルルも例にもれず、今年度初の冒険者活動を行う事にしたようだ。
といっても暖かい日中限定でだが。
ホーエルのような極寒だとトイレが近くなるメルルの体質が足を引っ張っているようだが……?
色々と準備をしてギルドに向かうと受付嬢さんが出迎える。
「あ、カトルさんにメルルさん、いらっしゃませ」
「ん、どうしたんですか?」
だが、いつもと違うと感じたメルルが受付嬢に尋ねる。
「実は一時間前に子供を保護したんですよ」
「子供?」
「はい。 今はスタッフルームで休ませていますが……、どうも心を閉ざしているみたいで」
「それって、捨てられたとか?」
「おそらくは……」
受付嬢から子供を保護したという内容を聞いて、少し驚いたが、心を閉ざしているという話にメルルは捨てられたのではという予測を立てた。
その予測を受付嬢も肯定するような発言をしている。
「どんな子なんです?」
「幼い女の子ですね……。 年齢はおそらく10歳くらいかと。 魔力は高いんですが」
「一目見ても? 心を閉ざしているだろうから遠目からでも」
「カトル君、ロリコン?」
「違う!」
「冗談だよ。 私も気になってるから、一目遠くからでも見ておこうかなって」
「分かりました。 こちらから……」
幼い女の子が気になったのか、カトルとメルルは一目見ようと受付嬢に許可を貰う。
受付嬢は、その女の子がいるというスタッフルームに案内する。
「こちらです」
そう言ってドアを開ける受付嬢。
カトルとメルルがひょっこりと覗くと確かに幼い女の子が椅子に座ったまま俯いていた。
女の子は水色のロングヘアの可愛らしい容姿をしていた。
服はおそらくギルドから渡された物だろう。
紺色のブレザー風味だった。
「本当にショックを受けている様子だね……。 心、ここにあらずって感じだよ…」
「ああ、もし本当に捨てられたのだとしたらその両親は酷い事をしていると考えてしまうな……って、あれ?」
「え!?」
カトルとメルルがひそひそ話をしていると、二人の気配に気づいたのか、女の子がこっちに向かってきた。
近くに来た女の子はそのままカトルの服の裾を握ってきた。
「おにーちゃん……、ぎゅってして……」
「え、えぇ……?」
いきなりの女の子の発言に、カトルは困惑する。
突然の事に、どうするべきかをメルルに目配せした。
「その子の願いを聞いてあげよう」
「分かった。 こうでいいかな?」
「……ん」
メルルからの許可も貰い、カトルが自信なさげにその女の子を抱きしめる。
女の子は満足そうに眼を細めている。
その直後に女の子が涙を流して来たので、暫くカトルが女の子を抱きしめてあげたようだ。
「落ち着いた?」
「うん」
少しの間、女の子を抱きしめていたカトルは、女の子が満足そうだった反応を見て一度離した。
そして、女の子に改めて話しかける。
「落ち着いた所で……、君の名前教えてくれるかな? 僕はカトル・ラクレイン」
「私はメルル・ラクレインだよ。 よろしくね?」
「わたし、ノエル・エルフィア……」
メルルに頭を撫でられながら、自分の名前を言う女の子……ノエル。
その傍らで受付嬢が一瞬表情が歪んだような様子だったようで、それに気付いたカトルは受付嬢に尋ねた。
「受付嬢さん、エルフィアっていう苗字知ってるんですか?」
「ええ、力がモットーの戦士系の家系だそうで…それによる差別意識が強い家系だという事でギルド間では有名ですよ。 主に悪い意味で」
「悪い意味で?」
カトルが思わず聞き返す。
悪い意味でという言葉に引っかかったのだろう。
「ここだけの話、エルフィアの家族は10歳になったら素質検査をしているらしく、戦士の素質がない者は問答無用で追放しているそうです」
「マジですか……、酷い家系ですね」
「そう思います。 ノエルちゃんがかわいそうで……。 戦士以外は不要と言う理由ですから」
エルフィアという家系の話を聞いて、怒りを隠せないカトルと受付嬢。
「苗字から察して、多分ノエルちゃんも戦士ではなかったから追い出されたのかも知れませんね」
「職業で差別するなんて許せないですよ」
「ですね…。 一応、国王様に相談されてみては?」
「ジェフ国王にか……、ノエルちゃんの事を何とかしてから相談するか…」
カトルは内心怒りを感じながら、視線をメルルと戯れるノエルに移す。
受付嬢からジェフ国王に相談をしたらというアドバイスも貰ったので、ノエルの事を何とかしてから相談する事を決意した。
次は6日(木)更新予定です。
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