聖光祭前半~王城内パーティにて~
時は昼真っ盛り。
まもなく、ベルセリアの王都ジョンストンにおいて、冬の祭り『聖光祭』が始まろうとしていた。
「しかし、前半は王城内でパーティとはな」
「そうだね。 そうそう、これもお父さんから聞いた話だけど、伝統なんだって。 国民全員で楽しむ祭りは夕方になってからみたいだし」
「なるほどなぁ」
そう、前半は招待された人たちで集まってパーティをする形のようだ。
国民が楽しむお祭りは夕方から夜にかけて行われるようだ。
現在王城内の大広間にいるのは、他国で言う貴族クラスの人間ばかり。
カトルにとっては肩身が狭い雰囲気が漂っている。
「メルルはこういうのには慣れてるのか?」
「まぁ、お父さんに連れられた時が多かったからね。 グズマのパーティに加わるまでは」
「ああ、やっぱり経験済みか……」
メルルが至って冷静な佇まいだったので、もしやと聞いてみたが、やはりカルロスに連れられてその手のパーティに参加させられたことが何度かあったようだ。
そういう意味ではメルルも経験者だといえよう。
「大丈夫だよ。 何かあれば徹底的に黙らせておけばいいから。 ジェフ国王様のお墨付きを貰ってるから」
「何事もない方がいいんだけどね」
「あはは…、確かにね」
場違い感が強く感じているカトルにメルルが励ます。 相手がおかしな絡み方をしてきたら徹底的に黙らせてもいいというジェフ国王のお墨付きを貰っているからだ。
何事もない方がいいのだが、こういうパーティでは大体何かが起こる確率の方が高いとか。
「あ、ジェフ国王の挨拶だ」
「となると、そろそろパーティが始まるね」
大広間の壇上にてジェフ国王の挨拶のスピーチが行われていた。 これが終わるとパーティが開始される。
ちなみに夕方から行われる国民向けの祭典も、国王のスピーチが終わればスタートされる。
「では、皆様はルールと思いやりを守りつつパーティを楽しみください」
短めのスピーチで終わらせたジェフ国王の挨拶が終わるとすぐにパーティが開始される。
カトルとメルルは、定位置から動かずに目前にある料理を少し食べながら周囲を見る。
結構、多くの貴族クラスの人間が会話を交わしている風景が目に映る。
「あ、お姉ちゃんにカトルお兄ちゃん」
「クルル、それにエクス君も」
「どうもです。 お二人も招待状が届いていたんですね」
「ああ、ジェフ国王直々のね」
少し会話の光景を見ていた所で、クルルとエクスが声を掛けてきた。
やはり二人は『ホーエル』の代表として来ていたのだ。
「お父さんとお母さんは来てないね」
「まぁ、セイン兄さんの教育で来れないでしょ。 グズマの再々逮捕の件での話し合いもあるし」
「ああ、確かに……」
「おやおや~、そこにいるのは辺境伯の娘じゃないか~?」
クルル達との会話に割り込むように声を掛けて来た事でクルルとメルルは不快感に顔を歪めた。
カトルがその声のした方に視線を合わすと、あまりにもチャラすぎる男がそこに立っていた。
「いやいや、まさか平民の者までこの王城に入れるとはねぇ」
(なんだこいつ……?)
こちらの不快感をよそに、言いたいことを捲くし立ててくるチャラ男。
カトルもこの男に不快感を示しだした。
「何、あんた? 話に割り込まないでくれる? すごく鬱陶しいんだけど」
「何を言ってるんだい? 平民と会話をしている辺境伯の娘がいると知れば割り込むのがルールなんだよ」
「そんなルール、あんたが勝手に作ったんでしょ。 他の人から聞いたよ」
「平民と会話をするのをやめさせるまでは徹底的に割り込ませてもらうさ。 平民は汚いからね~」
(クルル、あいつは?)
(ジェフ国王が悩ませていたベルセリアに巣くう貴族主義の家系だよ。 まさか、自分から来てくれるとはね)
メルルがチャラ男に喧嘩を売りに行っている間に、クルルに聞いた所、どうもベルセリアに巣くう貴族主義の家系の者らしい。
先代ベルセリア国王、ならびに当代のジェフ国王は、反貴族主義の考えなのでなるべく差別意識の高い貴族主義の者を一掃したいと考えているようだ。
カトルが、ジェフ国王に目配せすると国王は軽く縦に振るように頷く。
「さぁ、そんな男と別れてこの私と…ぶべぇっ!?」
メルルとチャラ男の会話の途中で、カトルがチャラ男の頭を掴みそのまま顔面を地面に押し付ける。
(物理法則もなにもあったもんじゃないね)
顔面が地面に押し付けられている時に、いつの間にか逆立ちするかのような体勢になっていた事で、メルルは苦笑いしながら見ていた。
「ぐっ、な、何をする……! 平民ごときが……!」
「あなたが平民と罵る方は私の友人なのですが……?」
「はっ、ジェ、ジェフ国王!?」
カトルが頭を押さえている間にジェフ国王が近くにやってくる。
それを待ってたカトルは奴の頭から手を離す。
「前々から気になっていましたからね。 国民を平民と罵り、自分本位で差別する家系がいるとの事で。 で、今回のわが友のカトル君を中傷したことであなたの家系がそうだったと」
「で、ですが……!!」
「我がベルセリアは反貴族主義です。 先代王妃である私の母もあなたから見れば平民だった者ですよ? いわば、あなたは私の母も中傷していたのと同じですよ」
「あ…!」
ここまで言われてようやくチャラ男が気付く。
ジェフ国王の母親……先代王妃が、元は他国で言う平民であった事に。
これを知ったチャラ男は顔面を蒼白させて震えていた。
「さて、あなたには早速、牢屋に入れてもらいます。 あなたの家系も調査して解体も視野にいれますからね」
「い、いやだぁぁぁぁぁぁっ!!」
ジェフ国王の一言で、チャラ男が兵士に連れられていく。
奴の家系も調査されることになり、解体も視野に入れるだろう。
「メルル、大丈夫だったか?」
「すごく不快だったけど大丈夫だよ。 まさか、カトル君を中傷してくるとは思わなかったよ」
「あの男と家系に関しては、解体も考えてるし僻地への追放も考えているし、後は私に任せてほしい」
「分かったよ。 期待してるからな」
ジェフ国王が改めてカトルやメルルに、今回の男やその家系の処遇について伝えた。
カトルもこの辺りは国王に任せた方がいいなと思い、彼に託した。
いきなりのトラブルがあったが、その後はパーティは平和的に行われたようだ。
そして、夕方になり本命の祭りが開かれる。
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