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お祭り終盤~アイドルのサイン会~

「いやー、飲みすぎちゃったね」


「ホントだよ。 トイレの場所が色んな所にあったからいいようなものを」


「うん、流石に反省してる。 調子に乗って飲んじゃったしね」


 祭りも終盤に差し掛かった所で、カトルとメルルはトイレのある場所から戻ってきた。

 どうもメルルが調子に乗ってお茶などの水分を過剰に摂ってしまった模様。

 そのために急にトイレに行きたくなったのだとか。

 幸い、トイレが多く設置されているので混雑せずに利用できたのはよかったというべきか。


「私がトイレに行ってる間に、向こうはサイン会が開かれてるね」


「そのようだな。 俺達はシエラさんからサインを貰ったけど」


 そして、広場を見やるとシエラ達アイドルグループの『マジカルアイドル・ピュアキュア』のサイン会が行われていた。


「やはりというか、男性陣が多いな」


「シエラ曰く、元々男性向けのアイドルグループだからね」


「順番待ちを守らない奴も多いなぁ」


「それは困るね……。 あ、スタッフの人が順番待ちを守らない人を制裁した」


 終盤にさしかかった時期に開催されたサイン会に、順番を守らない人間をスタッフが制裁している光景を二人は遠くから見ていた。

 スタッフもスタッフで大変なんだろうとカトルは思っていた。


「でも、思ってた以上に盛り上がったよね。 アイドルグループのおかげで」


「確かにね。 グズマの件でしばらくここにいる羽目になったとはいえ、それにめげずに元気づけるんだからね」


 この祭りは、『ホーエル』村においては初めての祭りなので、規模も小さめに質素な祭りになる感じだったが、アイドルグループが参戦したおかげで予想以上に盛り上がりを見せていた。

 カトルとメルルも、グズマの再脱走の件で色々ショックを受けていたが、この盛り上がりで嫌な事が忘れられるようになった。


「クルルやエクス君も村の代表として頑張ってるみたいだしね。 私達も頑張らないと」


「そうだね。 僕達に出来るのは冒険者くらいだけど、この村を守るためには……」


 お互いの決意を改めて確認した二人は、再度サイン会の光景に目を配った。


「あー、段々酷くなってきてるねー……。 スタッフさんが一人怪我してるよ」


「僕達も介入した方がいいかな?」


「どうだろう? スタッフさんに聞いてみるよ」


 そう言いながら先にメルルが、倒れたスタッフに聞いてみた。


「カトル君、頼むって。 最悪力づくで排除してもいいからって」


「あれだけカオスになったらなぁ。 分かった、やろう」


 メルルがスタッフから許可を貰った事を告げられたカトルが、サイン会の現場に近づいていく。


「そこのみんな? 順番は守ろうな?」


「う、うるせぇ!! 俺が先に……げぼぉっ!?」


「他のみんなからもあんたが割り込んでたのを見ていたからね。 なお、僕もそれを目撃したから」


 腹パンされ、蹲る悪質ファンをカトルがそう発言しながら見下ろす。


「ひ、ひぃ……!!」


 見下ろすカトルの目が、男から見たら恐ろしい光景だったのか、軽い悲鳴を上げた後で気絶した。


「こうなりたくなかったら、順番はちゃんと守るようにしてください。 いいですね?」


「あっ、はい……」


 他の悪質ファンも、今回の光景に首を縦に振らざるおえなかった。

 それだけ、カトルの瞳が恐怖に感じたんだろう。


「順番を守ってくれるなら、気絶者一名は安い……かぁ」


 それを後ろで見ていたメルルは、苦笑いをしながらそう独り言ちた。

 その後は滞りなくサイン会が終わり、アイドルの子たちやスタッフからもお礼を言われたそうだ。

 やはり何人かの悪質ファンには困っていたようだ。

 カトルとメルルは、シエラ以外のメンバーからもお礼としてサインを貰った。


「お礼を言われるのは嬉しいけど、飾る場所……どうしよう?」


「後で額縁でも買っておこうか?」


「そうするしかないか」


 他のアイドルからサインを貰ったカトルが、飾る場所に悩んでいたがメルルから額縁を買って飾ろうという案が出され、カトル自身もそれに同意した。


「もうすぐお開きだね」


「ああ……、最初こそグズマの件がフラッシュバックして楽しめなかったけど、何とか楽しめたね」


「私もだよ。 馬が合わなかったあいつらの事を思い出してしまって、最初は楽しめる感じじゃなかったしね」


「さっきも言ったけど、僕達はこの村を守るために頑張らないとな」


「うん」


 お互いの手を繋ぎながら、会話する二人。

 視線を戻すと、クルルが祭りの終わりのスピーチをしている最中だった。


 こうして、『ホーエル』村の最初の祭りは、無事に終わりを告げたのだった。


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