祭りの最中での語らい
祭りが始まって数時間が経過した。
アイドルの歌のお披露目の前半戦も終わり、今は食事タイムのようなものになっている。
みんなテンションが高く、はしゃぐ時はしっかりはしゃいでいるようだ。
そんな中で、彼らはというと……。
「楽しんでますか?」
「あ、エクスか? まぁ、それなりにはね」
「そうですか」
祭りが始まってしばらくして、メルルがクルルの相手をしているのをカトルが見ていた所に、エクスが声を掛けて来た。
「グズマの再脱走の件、クルルから聞きました。 出来るだけ関わりたくない程にトラウマを抱えていたんですね」
「まぁ、特にグズマとマライアが酷かったな……。 メルルが多少気を使ってくれたのが救いだったが」
カトルは勇者パーティ在籍時の嫌な思い出がトラウマとなっており、特にグズマとマライアからの苛めが酷かったことも打ち明けた。
メルルのおかげで何とかなったのが救いだという事も。
「大変だったんですね」
「そうなんだよな。 勇者パーティ在籍時は地獄だったよ」
そう言いながらエクスと二人でまったりとジュースを飲んでいる時だった。
「おーい、二人してなーにしんみりしてんのー?」
「「シエラさん!?」」
エクスとカトルの背後からシエラが現れ、すぐにスキンシップを取ってきた。
「シエラさん、なんでここに?」
「前半の歌が終わって、私達アイドルも食事タイムだからだよー。 そんでカトルくん、メルルとクルルちゃんは未だに姉妹対話かなー?」
「ああ、メルルが愚痴ってクルルがそれを聞いているだけなんだがな」
「メルルも余程ストレスが溜まってたんだよ。 あのクズ勇者の件で」
「ああ……」
未だに続くメルルの愚痴をクルルが聞いている光景をシエラも見ており、彼女曰く、グズマの件でやはりストレスが溜まっていたのだとか。 それを聞いたカトルは何故か納得してしまった。
「マネージャーさんから聞きましたけど、今後の公演とかはグズマ次第みたいですね」
「らしいよー。 そのクズ勇者が国を壊滅させられたら中止になっちゃうかもだしね」
「セレティアの騎士団が上手く奴を止めてくれることを祈るしかないな」
シエラ達『マジカルアイドル・ピュアキュア』の公演も、グズマ次第では中止もありえるという話を聞き、カトルはセレティア騎士団に早く対処をしてくれることを祈っていた。
「あれ? シエラもいてたんだ」
「少し前からいたよー」
ようやく愚痴を言い終わったメルルが、シエラに気付いてこう言った。
当のシエラは不機嫌そうに頬を膨らませていた。
「クルル……、悪いなメルルが……」
「あー、しょうがないよ。 メルルお姉ちゃんも相当ストレスが溜まってたみたいだし…。 でも、カトルお兄ちゃんが一緒だったから保てたみたいだよ」
「そうなのか?」
「あはは……、恥ずかしながらね」
後から来たクルルに、カトルが代わりに謝罪したが、クルルは仕方がないと割り切っていた。
そして、メルルもカトルがいたからこそ精神が保てたという事実を知った。
元々対立をしていたために、抱え込んでいたに違いない。
それを知ったカトルは、恥ずかしがるメルルに視線を向けていた。
「とにかく折角の祭りなんだし、今は楽しもうよ。 トイレも多く設置したから飲みすぎても大丈夫だしね」
「あー、それは助かるねー。 アイドルはトイレに行かないなんて都市伝説だもん。 アイドルだってトイレに行くんだから」
「僕達の前でそれを言わないで欲しいんだけどね」
「エクスに同意するよ……。 無防備すぎるだろ、シエラさんも」
「いやー、それほどでもー」
「いやいや、褒めてないからね!?」
シエラの大胆ともとれる発言にカトルとエクスがやや引いた。
しかし、その後のカトルの言葉に褒め言葉ととらえたシエラが照れだしたので、メルルがすかさずツッコミを入れた。
「あー、そうだー。折角だから先だってメルルとカトルくんに私のサインもあげるよー」
「あれ、いいの? サイン会は祭りの終盤じゃなかった?」
「メルルとカトルくんには特別に先にあげてもいいとマネージャーさんの意向だよー。 はい、これ」
「あ、ありがとう」
「どーいたしまして♪ じゃあ、私は他のみんなと話にいくねー」
シエラは、カトルとメルルに自分のサインをあげると、他のメンバーと一緒に話をしに行ったのだ。
「しかし、可愛いサインだね」
「そうだな、わざわざ二枚も……。 飾っとくか?」
「そうだね、リビングと寝室に飾っちゃおう」
貰ったサインをインベントリに仕舞う。
「これでよしっと。 じゃあ、今度こそ楽しもうか」
「そうだな。 食べ歩きで色々食べていくか?」
「いいよー」
そして、改めてカトルとメルルは、この祭りを丹念に楽しむことにしたのである。
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