開拓エリアへ到着
翌朝、出発前にどうもゴタゴタがあったようで、予定よりやや遅れて『クレセント』を出発する形となった。
馬車に揺られて、メルルがそのゴタゴタの理由を話していた。
「まさか、兄さんがここまで酷かったとは……」
「あの人はメルル相手にシスコンを発動してるのか?」
「いや、メルル以外にも開発エリアにいるメルルの妹に対してもシスコンを発動していた」
「ホント参ったわねぇ。 統治とかはできる子なのに…。 襲い掛かって来るなんてね」
「『メルルは渡さん! 死ねぇ!!』と言われる羽目になるなんて思いませんでしたよ」
カトルが呆れたように嘆く理由、それはメルルの兄のセインにあった。
セインは、統治などの内政において力を発揮している優秀な人物なのだが、その裏ではかなりのシスコン気質を持っていた。
今回も宿屋から出たカトルの前に、セインが剣を持って襲い掛かってきたが、あまりにも隙が大きかったのか、カトルは身体を反らして回避し、そのまま真空投げのような投げ技でセインを投げ飛ばした。
後から来たユリナは、セインを止められなかったことを謝罪し、気絶したセインに束縛の首輪をつけて、町長の仕事をさせることで落ち着いたのだ。
「あれ、下手したら離婚案件だね……」
「うむ……。 開拓エリアに着いて、落ち着いたらセインを教育し直そうかね」
「…その方がいいと思います」
メルルが、そのうちユリナが離婚しないかが気になりだしたので、カルロスは落ち着き次第、改めて教育をし直す方針を固めたようだ。
「あと、あの時のカトル君、すごく落ち着いて対処してたよね」
「そうよね~。 あの真空投げみたいな技、初めて見たわ~」
「あれは無意識でやったから。 意識して出来るもんじゃないよ」
次の話題は、カトルがセインに対して落ち着いて対処していた事に触れた。 メルルもカトレアも、あの真空投げのような技は初めて見るようだが、カトル自身は無意識でやったとのこと。 今後は意識して出来る保証はないそうだ。
それでも、目を輝かせながら二人はカトルを褒めたたえていた。
そんなやり取りをしながら、時々トイレ休憩を踏まえつつ、馬車は開拓エリアへと向かって走っていった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
数回のトイレ休憩を挟みつつ、一度も襲撃に遭わずに夕方に差し掛かった時にようやくカルロスが言う開拓エリアが見えて来た。
「ここがあの開拓エリア……」
「一部建物が建っているみたいだけど……」
「ああ、幾つかの建物はここに来てくれた有志達が建てたものだよ。 そのメルルの妹とその夫が住む家やメルルやカトル君が住む予定の家もあるよ」
「いつの間に…」
開拓エリアに立っている一部の建物を見て嘆いたメルルに、カルロスが説明をしていた。 カトルはいつの間にか自分たちが住む家が建てられていた事に驚きを隠せないでいた。
「有志達の大半が『建築魔法』という生活用の魔法を持ってるから。 材料さえあれば魔法で簡単に建てられるのよ」
「建築魔法って…便利ですね」
「建物という限定はあるけどね」
カトレアからは、有志達の大半が生活用魔法の一つ、『建築魔法』の使い手であるため、材料次第でかなり早く建物を建築できるという事を聞いて、カトルは便利だなと感想を述べた。
「今は総合ギルドを建築中ね。 このエリアでも冒険者は必須だろうし」
「じゃあ、完成したら私達はそこで冒険者登録でもしておこうよ」
「そうだね。 僕達はそれくらいしかできないだろうし」
そして、冒険者用の総合ギルドが建築している最中であることを知り、メルルはそこで冒険者登録をしようと考えていた。 カトルも同じ考えのようで、メルルの考えに同意した。
「あ、メルルお姉ちゃーん」
ふと、女の子の声が聞こえて来たので、振り向くとそこに銀髪のセミロングヘアーの少女と茶髪の少年がこっちに来ていた。
「クルル……! それにエクス君も」
「お久しぶりです、メルル義姉さん。 そして、こちらの方が……?」
「うん、カトル君。 色々あってここに来たの」
「カトルです。 よろしくお願いします」
「あ、私はクルル・ラクレインです。 よろしくお願いします、カトルお兄ちゃん」
「僕はクルルの夫のエクス・ラクレインと言います。 よろしくお願いします」
メルルの妹のクルル、そして夫のエクスに出会ったカトルはお互いに自己紹介をした。
「それで、お姉ちゃん。 報告があったけどセインお兄ちゃん、またやらかしたんだって?」
「うん。 カトル君に斬りかかってきたんだよ。 でもカトル君は落ち着いて真空投げのような技で対処したけどね」
「カトルお兄ちゃん、すごい!」
「いや、無意識でやったから次は出来ないよ」
「それらの技は、無意識でもなかなか出来るものではないですよ」
「そうなのか?」
セインの話題に入った時に、改めてカトルの対処の内容が伝わった時にクルルもエクスもカトルを尊敬の眼差しで見ていた。 それに慌てたカトルの様子をメルルは微笑ましく見ていた。
「もうすぐ夜になりそうですし、食事は僕らの家でどうですか?」
「そっか、もう夜になるんだね。 お腹もペコペコだし丁度いいね」
「このエリアの名前も決まったし、発表しないとね」
空がもうすぐ暗くなることに気付いたエクスが、カトルとメルルを食事に誘い、メルル達は了承した。 開拓エリアの名前も決まったというので発表もしたいとクルルも言っていた。
カルロスとカトレアは、その様子を見て後を任せられると踏んだのか、カトルに『メルルを頼むよ』と言って、開拓エリアから去っていった。 多分、セインの再教育をするためだろう。
こうして、カトルは新たな生活の場を得たのである。
作者のモチベーションの維持に繋がりますので、よろしければ、広告の下の評価(【☆☆☆☆☆】のところ)に星を付けるか、ブックマークをお願いします。




