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『クレセント』の町にて

本日(12月8日)の2回目の投稿です。

 馬車は現在、北東へ進んでいる。 新たな開拓エリアは、王都から北東にあると、カルロスの弁。 距離的には日をまたぐほどの距離なので、幾つかの町で小休止、ならびに一泊するようだ。


「それにしても、結構遠い場所にあるんですね」


「まぁな。 我が領地は中心の町『ステークス』を始め基本王都から離れた場所を収めているからな。 『クレセント』が一応王都に近い場所ではあるが、それでも馬車で9時間はかかるよ」


「大体は王都へは転移魔法で済ましてしまいますからね~」


 馬車内でカトルは、カルロスとカトレアの話を聞いていた。

 ラクレイン一家が治める領地は、基本的に王都から離れているらしい。 そんな中でも王都に近いとされている『クレセント』の町でも馬車で9時間はかかるようなので、基本は転移で移動しているようだ。


「今回はカトル君とメルルがいるからな。 特にカトル君は『クレセント』とその先の開拓エリアを覚えてもらいたいからな。 転移で行けるように」


「カトル君は剣士だからね。 テレポストーンで転移してもらう可能性もあるよ。 買い出しとかでね」


「ああ、なるほど…」


 一応、カルロスとカトレアとメルルは転移で王都などに行ける。 しかし、カトルは『クレセント』の町とその先の開拓エリアへは初めて行く。 なので、あえて馬車で移動しているのだ。 街の場所を覚えてもらうために。

 メルルからは買い出しとかで転移で買いに行ってもらう可能性も言及したので、カトル自身も納得していた。


「さて、もうすぐ『クレセント』だな。 そこで一泊していこう」


 カルロスが指差した先に見える町が『クレセント』の町のようだ。 ここまでは何度かトイレ休憩を挟んではいるが、それでも約9時間の馬車の旅は疲れてくる。

 そこで、丁度夜に差し掛かってきたところで、町が見えたのだ。 カトル自身もようやく休めると言った表情のようだ。


「はぁ、馬車の旅は疲れるなぁ」


「あはは…、もう少しの辛抱だよ」


 カトルの疲労状態を察したのか、メルルはカトルを励ましていた。

 傍らで見たカルロスとカトレアの夫妻が穏やかな笑顔を浮かべていたのは二人の知らないところではあるが。


「『クレセント』に到着しました」


「よし、まずは領主の館へ行こう。 メルルの兄とその妻がいるはずだ」


「久しぶりに兄さんに会うんだねぇ……。 シスコン癖が治ってるといいんだけど」


「流石に妻がいる状況じゃそうはならないんじゃないのか?」


「いや、私がグズマのパーティに入らされることが決定した時なんて『行かないでくれー』と言いながら抱き着いていたよ。 義姉さんがいるにも関わらずにね」


「えぇ……、それって僕もヤバくなりそう」


 メルルが現在のクレセントの町長となっている、メルルの兄のシスコン振りを暴露したことで、カトルに一抹の不安がよぎる。


「それに関しては大丈夫だ。 ジェフ国王と謁見した後にカトル君のことを息子夫婦にも伝えたからな。 ま、何かあったら私が諫めてやるさ」


「お父さんの諫めるって……あれは諫めるって言えないような……?」


「どんなのなんだ、メルル?」


「基本的に右ストレートで吹っ飛ばすんだよ。 兄は何度かそれにやられているからね…」


「いい年してシスコンこじらせている時はその回数も増えたからねぇ」


「うわぁ……」


 メルルが、しかめっ面しながら兄に対して行ったカルロスの行為をカトルに伝えた。 それを聞いたカトルはドン引きしていたようだ。


「とにかく、領主の館に入ろう。 そこで一泊してもらうように頼むさ。 ガハハハ」


(メルル)


(うん、いざとなったら館近くの宿に泊まるのもアリだね)


 カルロスが大笑いをしている傍らで、カトルとメルルは最悪の事態を想定して、近くの宿に泊まらせて貰おうという選択肢も考えていた。

 二人が絶妙なまでの不安を抱えながら、カルロスを先頭に領主の館を目指していく。


「あそこが……?」


「ああ、領主の館だ。 町長の館でもあるがな」


 馬車用の駐車場から少し歩いた所に、大きな屋敷が建っていた。 カルロス曰く、ここが領主の館であるらしい。

 カトルは別の意味で不安と緊張が高まっていき、メルルも胃がキリキリしてきたのかお腹を押さえていた。


「あ、お義父さん」


 不意に声が聞こえて来たので、振り向くと茶色のロングヘアーの少女が近くに来ていた。


「おお、ユリナくん。 しばらくぶりだね」


「はい、お義母さんもお元気そうで」


「ええ、息子のセインはどうかしら?」


「メルルちゃんの事になるとやっぱり発狂していたので、黙らせました」


(あぁ……、やっぱり)


 カルロスとカトレアがユリナと言う少女と話している内容を聞いたメルルは頭を抱えた。 どうやら、セインと言うメルルの兄のブラコン気質が抜けきれなかったようだ。


(メルル、多分僕はここに来ない方がいいんじゃないかな……)


(うん、近くの宿で泊っていこう)


 カトルも不安が臨界点に達したのか、メルルに耳打ちしていた。 彼女も同意し、ひとまず近くの宿で泊っていく事にしたようだ。


「お父さん、私達は近くの宿に泊っていくよ」


「セインが未だにアレだからか?」


「うん、カトル君に危険を及ぼすかもしれないから。 兄の教育は任せるよ」


「なるほど、貴方がカトル君なんですね。 私はユリナ・ラクレインと言います。 メルルちゃんの兄、セイン・ラクレインの妻です」


「カトルです。 よろしくお願いします」


 カルロスとメルルが、会話をしている最中にユリナから自己紹介されたので、カトルも自己紹介を交えて挨拶をした。 ユリナの関しては優しい女性といった感じの人だったのでそこは安心していた。


「夫に関してはこちらに任せてください。 カトル君はメルルちゃんと一緒に過ごしてくださいね」


「は、はい……」


 やはり、セインのシスコン振りに苦労しているのだろう。 漂うオーラが違ったので少し怯えてしまった。


「それじゃ、私達は宿にいるから、兄の再教育は任せたよ」


「うむ、任せてくれ」


 カルロスに兄の教育を任せたメルルは、カトルを連れて近くの宿屋にチェックインしてそこで一晩過ごしたのであった。

 

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