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勇者は聖女の夢を見る  作者: 茲
1章 王宮スローライフ
15/16

14,側近

書き溜めてたやつをたまに投下します。

かなり気まぐれです。

だって今年の来年度(ややこしい 受験生だし、単位あかんししょうがないよね!(聞いてない)

「カシ、急に呼び出してすまない。…ただ、今日こうなることは知っていただろう」

「はい」

今日は、エイプ、21日。ファリヴィアさんとの研修期間が丁度1ヶ月経ってしまったのだ。遂に、僕も正式に女王様…アルラ様の側近となる。ファリヴィアさんに叩き込まれた耳、肩、腰、かかとが真っ直ぐになった姿勢のまま、僕の体はカチコチに固まってしまっていた。

「そう緊張するな。確かに少し儀式的なものをするとはいえ、カシなら出来る。私も、カシの成長していく様子は観ていて気持ちのいいものだったぞ」

「アルラ様…!」

なんか見物されてた。ちょっと怖い。

 僕は久しぶりにお目にかかったアルラ様の眩さに目を細める。

 青をベースとしたゴージャスなドレスの胸元にはニナク国の国彰が付き、ベージュのレースが波打ち、地面すれすれまで降りている。目には濃い目のアイシャドウが引かれ、口元の口紅は控えめに、アルラ様の美しさが際立つメイクが施されている。紫がかったショートヘアはふわりとカールさせられ、紫の氷柱のような形をしたイヤリングが耳元を飾っていた。

「…さて」

アルラ様が側の机に置かれた板に片手を置く。

「これより汝をわが王国の王の側近と認める。王を支え、この国を支えていく覚悟はあるか」

アルラ様の凛とした声が謁見の間に響く。僕は即座に膝と腰を折り、アルラ様に膝まづく。

「もちろんでございます」

「ならば、この精霊石を汝に渡す。時として汝の助けになるであろう」

アルラ様は机に置かれた板を手に取り、厳かに僕に渡す。その板は黒く、この国名産の漆が塗られており、真ん中には、見るも美しい青色の宝石が埋められていた。思わずほうと息を吐きそうになるが、ぐっとこらえ、

「ありがたき幸せ」

と答える。数日前から散々叩き込まれた台詞が次々と僕の口から出ていった。

「これから、貴女様の全てを支え、この国を素晴らしき国にすることを私は誓います」

「うむ」

アルラ様は満足そうに頷くと、付け加えるように口を開く。

「…私に忠誠を誓うカシ・タチバナに、精霊を与える。精霊石に魔力を注いでみよ」

…うぇっ?確か話では、精霊が与えられるのはもうちょっと後だった気が…。まあいいや。

「…わ、分かりました」

僕はここ一ヶ月で扱いが上手くなった魔力を練り上げ、精霊石に注いでゆく。…それでもやっぱり遅いものは遅く、五分くらい待って貰ったのはナイショ。やがて青色の宝石がゆっくりと輝きだし、そこから青色の光が立ち上ってゆく。光はやがて形を模し…。

『どうも。ボクはクァルダ、水の精霊さ。よろしくね、ご主人様サマ』

猫ッ?!えっ、待って。精霊って、なんかあれ…綺麗な女性とか、イケメンの半裸男性とかじゃないの?

『それはかなりの偏見だね。一口に精霊と言っても、ボクみたいに四足動物の形を好む精霊も沢山いるし、そもそもそれらの姿は全部人の前のみの姿だ。精霊に対する偏見を持った人を主に持つなんて、ボクはつくづく不幸みたいだね』

ごっ…ごめんなさい?えっ、僕、貶されてる?この精霊さんの主になっちゃっていいのだろうか…?

「すまん、カシ。その精霊の前の主は精霊の扱いが非常に雑でな、人の為に尽くすという契約を放棄するために、王都の高名な魔術師の力をもぎ取ろうとしているほど人を軽蔑しているらしい。カシも王都に行きたいとたまにこぼしていただろう?」

…つまり、厄介払いの先が僕ってこと?

「いや、そういう訳では…と言うのも嘘になるが、本来精霊を与えるに足りると判断するための時間がカシにはあったからな。前倒しだ」

なるほど。そういうことなんね。それでもちょっともやもやするなー…。僕はじと目でアルラ様を見つめる。

「こ、こほん。いや、すまない。ただ、こっちの事情もあるのだ。…それと、クァルダ様、出来ればそろそろ受体して頂きたいのですが」

受体…って、確か精霊が人と契約する際に、相手の体を依り代とすることだっけ。契約は、僕が魔力を契約が刻まれた精霊石に注いだからもうされているから…。

「あれ?僕まだ受体されてないってこと?」

『…そうだよ、おバカさん』

バカって言われた。っていうか実際、今も僕の頭上で青色の光がふよふよと漂っている状態だから、その姿を顕して貰った、って訳じゃないっぽい。

「そう言わないであげて下さいよ。その人間が可哀想じゃないですか」

ん?この声は…。

 振り返ると、ウサギさんがいた。超可愛い。あともふもふ。近くにファリヴィアさんがいるため、ファリヴィアさんの精霊なのだろう。それにしてももふもふやなぁ…。クァルダ…さん?もかなりのもふもふだけど、この精霊のように見ただけでもふいという極限の状態までは至っていない。

『…ボクはもう人間に力を貸さない。あんなに道具のように使われるのはもうこりごりだ。なのに、この精霊石に刻まれた忌々しい魔術を解くすべがない。こんな状態でこの人間に受体しろと?』

あらら。…深くは追求しないけど、相当な目に遭ったっぽいな。

「クァルダ様、お気持ちはお察しするけど、受体しないとずっとその状態のまま色世(しきせ)にも戻れませんよ」

もふもふの精霊が諭すように言う。…様ってつけるってことは、このもふもふの精霊よりもちょっと格上なのかな?

 クァルダさん(様)は表情豊かに顔をしかめた。

『…分かってるさ。このボンクラ人間とボクは間接的にだけど契約を結んだ。クソ、しょうがない』

え、待って、クソって言った?この精霊、クソって言った?猫なのにめっちゃ口悪くない?あと僕ボンクラじゃないもん。

 と、次の瞬間、ふわふわと漂っていた青い光が強く光り、僕のお腹辺りに物凄い衝撃が訪れた。

「?!」

『──もうちょっと待っててよ。ボクの()なら、適合するのにそう時間はかからないだろう』

僕の頭の中でクァルダさんの声が聞こえ、唐突な吐き気に襲われる。

「うっ…」

思わず口を押さえ、よろめくと、アルラ様が僕に駆け寄り、支えてくれる。…ほんと、アルラ様って優しいんだよなぁ。

「すまん、彼は気が立っているから、受体するのが雑なのだろう」

「いや、アルラ様…うっぷ、謝らなくても、…ぅぷっ」

体の中で色々なものがぐちゃぐちゃになっていく感覚に、最近耐性が付き始めた気絶耐性も仕事を放棄し、僕の意識はゆっくりと闇に沈んでいった。

「おい、カシ?…カシ?」

ああ、そういえば。

「クァルダさんって、やっぱ男だったんですね…」

「まあ例えだが…ってカシ?…カシーッ?!」

…おやすみなさぁい………。

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