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《Liberty of Life》  作者: 魚島大
4章 He only requires that you try/ただ、挑戦することだけを望んでいる。
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47話 Ruins/遺跡群

 悪魔騎士、名前付き(ネームド)だった場合、状況と向こうの強さにもよるが、並みの男爵級を凌ぐこともあるという。掲示板の考察スレでは、悪魔騎士が更に長い年月を重ね、貴族級に進化することもあるという世界観設定から、その進化の過程で、エネルギーを使い、悪魔騎士のときより一時的に弱体化しているのではないか、という説が唱えられている。基本的には男爵級のほうが強いらしい。例外はもちろんどこにでもあるのだ。


「さてと、馬車は我々の私物で向かうが、いいな?」


「ラートに任せる」とハヤト。


「楽なほうで行こう」とドジョー。もちろんぼくも楽なほうがいい。すぐに頷いた。


「向うのはパランチャ遺跡だな。もとより悪魔系モンスターの出現が多かった。気をつけていこう、討伐対象以外のやつも出てくるかもしれない」


 ハヤトの言葉に真剣な顔をして(ぼくも含めて)皆が首を縦に振る。いつもはちゃらんぽらんでも、〆るところは〆る。だから人もついてきているのだろう。


 パランチャ遺跡は、馬車で10分ほどのところにある。ゴブリンやオークなどといった妖魔系モンスターを始めとして、悪魔系モンスターなどが主に出現するようだ。古代文明の遺跡ということもあり、魔法生物や、アンデットなどもポップすることがあるそう。ゾンビとか、スケルトンとか、ゴーレムとか、そういうものだと思う。


「どんな感じの遺跡なんだい、ハヤト」


「うーん、どんな感じと言われると難しいけど……。石造りの建物だから、ギリシャの遺跡がもっと崩れているようなイメージが一番近いかな」


「パルテノン神殿とか、そういう感じのやつ?」


「そうだなぁ。彫刻なんかも残ってるぞ。首がもげてたり、腕が飛んでいたりと状態はよくないね」


「だから、お宝鑑定番組とかだと、逆に安い値がつけられそうな気がする」


 君は歴史的価値というものをわからないのかな。もしそんな番組が魔法テレビにあったら、さすがに面白すぎてクリアミラじゃないけど笑いが止まらなくなりそうだ。ありえない想像が頭を過ぎる。


「……ある意味、ハヤトのいうことも間違ってはいない。遺跡というのは一定確率でお宝が見つかるのさ」


 まじですか。


「マジだぜ。俺の持ってるこの斧も、以前遺跡で見つけたものだ」


 ドジョーが自分の背中から取り外してぼくに見せてきた巨大な両手斧は、武器の知識がほとんどないぼくでも、業物というのがよくわかった。半月状の斧頭は、夕日に照らされて妖しくも美しく光り輝いている。


「もともと攻撃力も高いが、ダメージに+補正が入ってくれるのが嬉しい代物だ」


 ほうほう。


 そんな風に武器談義をしている間に、パランチャ遺跡に到着した。目の前の巨大な柱は、位置関係からして、本来ならば壮麗とした門だったはずだが、石造りのそれはボロボロに崩れ、柱の一部がかろうじて門であったという事実を示すだけ。無残な時の流れを感じさせた。


 パランチャ遺跡はかなり広い。門から通路が十字状に延び、神殿や、住居、貴族街に繋がっているようだ。なぜ通路とわかるかというと、通路であろう部分に綺麗に切り出された石が敷かれ、神殿へ続く道には、左右に石像が置かれ、特別な道であったということを示しているからだ。


「あの、ラートさん。この道、余りにも露骨じゃありませんか?」


「……何も言うな、スヴェン君。どう考えてもこの先に悪魔騎士がいるだろうが、気にしてはいけない」


 まだぼく達は門から先に行っていないというのに、そんなことを話す。その悪魔騎士の話がトリガーになったのだろうか、紫色の結界が遺跡を覆っていった。


「む、起動型のクエストか」とラート氏。


 そして強い光。反射的に目を瞑る。


 目を開けると、ぼく達は敵に囲まれていた。柱の上には、黒い全身鎧を着込み、大剣を肩に担いだ騎士がいる。周りの妖魔モンスターなどと比べて、明らかに上等な装備だ。一目でこれがボスだとわかる。


「囲まれたぞ!」


 背中に担いだ斧を構えるドジョー。腰から2本の剣を抜くハヤト。胸の前で拳を固めるラート氏。右手に魔法陣を出すぼく。


『光の眷属か……』


 ジャキン、と剣でぼく達を示し、悪魔騎士は黒い光に包まれて消える。多分あれはこちらへの攻撃指示だ。その証拠に、囲んでいた部下と思われるモンスターたちがじりじりと寄ってきているのだから。


「来いよ、相手してやるぜ」


 右手の両刃剣を地面に突き刺し、指でクイクイっと挑発するハヤト。随分とさまになっているが、わざわざそんなことをする必要は実質的にあったのだろうか。グギャ、と叫び声をあげて瓦礫を超えてきたモンスターたちだったが、火炎を纏った剣で薙ぎ払われた。もうあいつ1人でいいんじゃないのかな。


「ま、そんなこと言ってられないか」


「ぬうん!」


 ドジョーは一振りで敵を3~4人ずつ吹き飛ばしていく。斧強いなぁ。相手の攻撃も当たるのだが、ドジョーの防御力が高いのか、ダメージは入っていない。あ、次の一撃で吹き飛ばされた。


 瓦礫を超えようとしていたゴブリンに、【スフィア・ブラスター】を放つ。ゴブリンが不安定な姿勢だったこともあり、ひっくり返って後続を巻き込んで倒れた。


 チャンス!


 収束魔法(ブーストアクション)を使用。マナ・ビームからレイ・キャノンへ。ダメージUPに加えて貫通効果が現れるから、倒れて団子になった連中にはちょうどいいだろう。


 背中の翼は「使おう」と思ったら出てくれる親切仕様。少しだけ宙に浮いて、【レイ・キャノン】を発射する。HITの表示。ダメージの数値は十分すぎるものだった。一気に5体ぐらいがポリゴンとなって消えていく。


「さすが半妖精、魔法に関してはピカイチだ」


 ラート氏はそう言って賞賛してくるが、彼はゴブリンに似たモンスター──赤色の体を持ち、爪が非常に長い人型の怪物──の攻撃にたいし、体をかがめて回避しながら後ろに回りこむ。そんな芸当をしながら褒められても、あまり褒められた気がしない。


 モンスターの後ろに回りこんだラート氏はそのまま腰に手を回し、後ろに反り投げた。えーっと、確かあれは……格闘ゲームで見たぞ。


「ジャーマン・スープレックス?」


「よくわかったな。ちなみに投げっぱなし式だ」


 投げられたモンスター──下級悪魔のブラッドサッカーというらしい──はその「投げのダメージ」に重ねて「地形ダメージ」を受けた。即死である。地形ダメージというのは、防御力を無視してダメージを与えてくる。ラート氏、結構えげつない。


「格闘術というのは立ち技も組み技も含むからな。自身の肉体を使って戦うなら全て格闘術に入る」


 格闘術は、危険性ももちろん大きいのだが、投げ技や、一部の打撃技で壁や地面に叩きつけると、ダメージボーナスが入る。しかも防御力を無視する効果はその時点で入るから、ダメージは大きくなるという。なるほどねぇ。


「のんきに会話をしている暇があったら、敵を倒せ! けっこう多いぞ!」


 おっと。怒られてしまった。視線を前方に向けると、わらわらと敵がポップしている。魔法陣か何かがあるんじゃないんだろうな。


 ──光の翼。


 右足を踏み切って、斜めに飛ぶ。空中で後方に回転して、姿勢を整え、モンスターが湧き出している部分を注視するが、湧き出ている敵のせいでよく見えない。敵を掃除しようにも、ゴブリンアーチャーや、ブラッドサッカーの遠距離タイプの攻撃を魔法障壁でガードしているため、攻撃魔法が使えない。


「ハヤト、いちど敵を薙ぎ払えるか!?」


 ゴブリンやオークを切り倒して進んでいた朋友に叫ぶ。


「ザコばかりとはいえ、無茶な注文をするなぁ、おい!」


 ドジョーは一撃で数体を薙ぎ払える攻撃力と重い鎧による高い防御力をもっているが、その代わりに速度が遅い。ラート氏は格闘術という特性上、多数と戦うには効率が悪い。もちろん、両者とも強いから心配など無用だが、この敵の数を一度減らすためには、彼ら2人ではなく、ハヤトが必要だ。こちら側に近づいている数はそれほどではないが、後ろに控えている数はそれなり以上だ。


「スヴェン、その溜め込んだ矢で一度こっちを掃除しろ!」


 無茶を言う。いや、先に言ったのはこっちか。


 笑いが漏れた。


 体ごと向き直り、障壁をぶっ叩く。

 

 鈍い音とともに矢が1本肩の後ろに当たった。

 

 「いつっ……」

 

 光の翼は、鳥やハーピーのような生物的なものじゃない、根本を攻撃したってもげはしない。だけど、HPを見ると、半分は減っていた。やれやれ、防御力が低いのも考え物だ。

 

 だが、ぼくが打ち出した反射魔法で、ハヤト周辺の雑魚モンスターはダメージを受け、ノックバックした。

 

 一瞬の隙が生まれる。

 

 その隙に、ハヤトが高速で詠唱する。頭上に表示されている彼のMPが1割ほど減る。

 

 右手の剣が赤熱する。魔法文字を刻んであるのか!

 

 「そら、持ってけ! 大盤振る舞いだ!」

 

  ハヤトが剣を両手で持ち、火炎を纏わせながら思い切り振り下ろした。

 

  振り下ろした剣先を始点に、扇状に爆炎が広がり、モンスター達を飲み込んでいく。

 

  敵を嘗め尽くす爆炎の先に、黒く染まった、クモのような模様の、明らかにぼくの両手の魔法陣とは違う、異質な魔法陣が見えた。

 

「皆、魔法陣だ! 魔法陣が門の先の十字路に配置されてる!」


 門の柱の上に着地。そこに昇っていたゴブリンアーチャーは魔弾(シューター)を放って始末しておいた。


「厄介なモンがありやがる」「これ込みの2段階クエストだな」「ふぃー、きっついねぇ」


 三者三様の言葉だ、そう言いながら誰も闘志はなくしてない。これくらいは乗り越えてきた、と瞳が語っている。


「君が一番早いな、スヴェン君」


「援護はおじさんたちに任せな。経験値稼ぎと思って行ってきたらどうだい。ガッハッハ!」


「っていうわけだ、出番だぜ、半妖精(ハーフフェアリー)!」


 そんなことを言われて、奮い立たない男がいるだろうか。いないわけがない。


 炊きつけられたにしたって、もう少し上手いやり方があるだろう、と内心苦笑しながら、それでも楽しかったから、笑って、柱を蹴って飛び出した。


ここまでお読みいただきありがとうございました。人間、やればできるモノですね(笑)

早めの更新ができました。(このペースを維持しろ? 死んでしまいます)

なんと、敵が人語をしゃべったのが、LoLだと恐らく初のことですね。はい。

それでは次回48話でお目にかかりましょう。

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