前夜祭がって、それどころじゃあ無かった
暇な時間と親切心、そしてほんのちょっとの好奇心で、
謎の荷物を見に来ただけ…だったはずなのに?
どうやら、事件の最前線だったようですね…
びっくりしすぎて、どうしたら良いのか分からず…固まってしまいましたが、
ひょこひょこと、オニキスちゃんが現れました。
ああ、居ましたね、私のナイト様がここに。
小さいのに、なんて頼りになるのでしょうか?
不安さえも、その姿を見た途端、
全て消え失せました。
どんどんと、普段の冷静な状態に戻れています。
これはテロですね。
大臣を狙った…なんて卑劣な行為なのでしょうか。
大きな声で、近くの衛兵さんを呼びました。
え?ち、違いますよ?
わ、私なわけ、有るかいっ!!おおっと…
一瞬…私が犯人の様な感じになりかけましたが、
肩の上のオニキスちゃんに救われました。
「こ、これは失礼致しました…」
まあ…良いんです…良いですが?
ただ…一言言わせてくださいよ?
こんなドレス着た悪党なんて普通、居ます?
居ませんよね?
ねえ…そこの衛兵さん?
目を逸らさないで頂けますか?
ちょっと、聞いてますか?
こう見えて私、まあまあ偉い側ですよ?
そう…見えないとは思いますが…
ですが?
良いですか?
こんな格好で、そもそも悪事など働けやしないって事くらい、
衛兵なら察して下さいよね?流石に判るでしょ?
衛兵さんは、持っていた笛を鳴らしました。
それは直ちに緊急避難の合図です。
皆一斉の避難が始まりました…
そりゃもう、大騒ぎです。
会場全体が、てんやわんやしてます。
私?…逃げれませんね。
だって…オニキスちゃんが、爆弾に結界を張って居ますから。
オニキスちゃんを置いて逃げる選択肢など、私には有りません。
ですが、衛兵さん、
あなた達はお逃げください。ここは危険ですから。
多少…先程無礼が有ったことはこの際、
グッとこらえ、目を瞑りましょう。緊急事態ですし…
だから、あなた達はお逃げなさい。
こう見えて…見えないとは思いますが、
一応?私だって…為政者の側の、その端くれですから、
まずは国民の安全こそが、帝国為政者の、第一なのです。
「では…」
そう言って、衛兵さんは急ぎ、走って去っていきました。
あー、行っちゃうんだ。
そりゃそうか…
若干?
ほんの若干、一緒に残ってくれるのではと…
なんなら、残って欲しかったですが…
まあ…命は大事ですからね。
うう…怖いな…
これって…どのくらいの規模の爆発なんだろうか?
オニキスちゃんに限って、大丈夫だとは思うんだけど…
それでも怖い…
冷静になったせいで、
逆に怖さが増しています…
脚が、震えますね…
どうしよう…
こんな時に脳裏に浮かんだのは、
茶目っ気タップリに、おやりになったイタズラで笑う…
まさかの、そんな王様のお顔でした。
よりにもよって、こんな命の危機に…
よりにもよって…そんな王様って?
そんな時でした、
カバンに有った魔法陣の書かれた紙切れに火が着きました。
続いて、呪文の書かれた紙切れも、その文字が光だし、
うわ、これって…
――これは、終わったな…
そう思った瞬間…
オニキスちゃんが急に、爆発から私に結界を張り替えて…
え?…オニキスちゃん?
目の前に光が、洪水のように溢れ出し、
周りがなにも見えなくなってしまい…
オニキスちゃんは…
自分では無く、私を護るために結界を私に…
それはほんの…
極めて短い時間に起こった出来事でしたが…
全ての時間が、本当にゆっくりと流れている気がして…
オニキスちゃんに申し訳無いなって…私なんかの為に…
涙が一つ溢れた…その時でした。
!!!
『悪ㇼい、遅れた…』
王様の…あのいつものお声が聞こえました。
そこに王様が現れた瞬間に、
音も光も消え失せ、
ただ圧倒的な静寂だけが、
この辺りを包んでいました。
『爆発物は俺が回収した。もう大丈夫だ。良く頑張ったな、エトラン…』
王様にもたれ掛かり、腰が抜け、びっくりするくらい、そこでそのまま大泣きしてしまいました。
私が落ち着くまでの間…王様はずっと私を支えて下さった…
そして、何度も何度も、私の背中をポンポンと、
優しく叩いてくれてました。
あとで聞いたお話だと…
白組の方からの極秘の情報で、
どこかに爆弾が…と。
そんな情報を王様がお聞きになられ…
それこそ国中の端から端まで、お探しになられていたのだそうです。
忽然と消えたのはまさにそれが原因でした。
――疑って…うがった考えで…大変申し訳有りませんです…
深く深く、反省しております。
ここは、そもそも厳重な警備があるから、
仕掛ける可能性も低いだろうと、
それで後回しだったようですね。
爆弾が起動した時、実は王様はなんと遥か遠方に、
農業区の砦におられたそうですが、
オニキスちゃんからの緊急の連絡で、
まさしく一瞬で、ここにとんできて下さったそうです…
ハッ!!オ、オニキスちゃんは?
私を庇って…
どこ?…
ウソ?お願い、オニキスちゃん?
居た!!良かったあ…
うええええええん、心配したんだからああああ…
またいっぱい、泣いてしまいました。
だって…
てっきり私を庇って…
あの時、流石に胸が張り裂けそうでしたから…
神獣様なんだから、こんな人間なんかの為にって…
でも、ありがとう。大好きです…私の小さなナイト様。
そして王様。
お助け頂き、誠にありがとうございます…
まさしく、あの時は死を覚悟してましたから…
『ああ、マジですまん…まさかここだとはな…迂闊だったよ』
王様の爆弾処理により、
テロは一切の被害もなく、
敢えて言うなら、
一部のリハーサルが無くなってくらいの被害ですが、
『このまま舐められままじゃ、流石にムカつくよな?』
そう言って、前夜祭を、全く予定通りに行なう事を、王様はお決めになられました。
泣いて泣いて…クチャクチャな私…
流石に今回はここでご勘弁願いたいと…
それはもう、随分と弱気になっていたのですが…
そこに笑顔のヘンリエッタ様が現れ…
そのおつきの方々に拉致され、
近くのお部屋へと、抱えられ、強制的に連行され…
お化粧直しと、ドレスの交換が、あっという間に行われました。
ああ、この程度では…逃げられなかったのね…
まあ…僅かな怪我一つ、してないのもまた、事実ですけどね…
命を狙われるなんて、実はしょっちゅうだそうで…
全く、為政者ってお仕事は、
まさに大変なお仕事なんだと、そう理解しました。
まあ…さっきのよりも怖いことなんて、流石にもう無いよね?
まあ…あれを思えば、もうなんだって平気な気がする…
ただの、気のせいかもしれないけど…
じゃあ、もう諦めて…
いえ、
腹をくくって、前夜祭を頑張っていきましょうかね。
ええ、やったりますよ。




