前夜祭が始ま…リますよ
ついに、来てしまいました。
とうとうこの日が、来てしまった…
やれることは全てやりましたが、それでも不安は消えません。
結局、さほど眠る事も無いまま、気付けば朝が来てしまった…
それでももう、引き返すことなど出来ませんからね。
女は度胸で、なんとかぶつかって行こうとか思います。
全力で、当たって砕けてやろうかと…
本日は、私とヘンリエッタ様の通常業務は、
全てキャンセルされていますので、
お呼びが掛かるまでは事務所で待機の様ですね。
張り切ったドレスで、まさかの事務所待機です…
浮いてますよ。ええ、そりゃそうでしょうね。
仕事もせずに、そりゃ一体全体何事だっ?
…て、話しですね。
私だってここに来たくて来たわけでは…
え?ま、まあ…ドレスだって、着たくて着た無いですけどね。
そんな事はより、皆様はお仕事を頑張って下さい…
私はただの…そう、ただの置物だと、そうお考えください。
ああ…ヘンリエッタ様、早く来ないかな。
ん?
オニキスちゃん…どうしたの?
王様?
ここにはお見えでは無いけど、
…今日は一度も、お見かけしていないわね。
オニキスちゃんが探しているのではなく、本体の…
あれって…ミュー様自体が王様をお探しになってるって事よね?
なんだろう、気になるけど。
なにか押し付けられそうになって、突如失踪したってトコでしょうけど…
あ、ヘンリエッタ様が着いたようです。
良かったです。この空気は流石に辛かったですからね。
おはようございます、ヘンリエッタ様。
「あらエトランおはよう、ドレスとっても素敵じゃない…」
あ、ありがとうございます、
ヘンリエッタ様のお衣装も、とってもお似合いで素敵ですよ。
「あら、ありがとう。お世辞でも嬉しいわ」
お、おおお世辞だなんて、と、とんでもないですよ、本心です。
心からの本心です。
ウソや偽りのない、正直な私の気持ちですから…
「うふふ、もう、冗談よ」
良かった…
取り敢えず、この後って、私達はどうしたら良いのでしょうか?
ただ待ってるだけって、逆に怖くないですか?
「そうよね、いっそ先に、こっちから乗り込んじゃおうかしら…」
え?…よろしいのですか?
「ええ、私って、こう見えてちょっと偉いんですもの…」
…い、いや、ちょっとどころでは無いと思いますが?
…ッと言うわけで、
ヘンリエッタ様の馬車で、一路会場へと先回りする事になりました。
開始は日暮れと同期に開始するそうですが、先に下見をしようと…
当然ですが、会場の皆様は皆、とてもお忙しそうに、その準備に追われています…
いつもであれば、ヘンリエッタ様が来られようものなら、当然、そこそこの騒ぎになるのですが、
流石に今日は忙し過ぎるようで、
一部の責任者だけが、速やかに大臣にご挨拶して、
それで皆様、すぐ様お仕事にお戻りになられました。
闘技場の中には入った事は有りましたが、
この舞台から見ると、景色は全く違いますね。
しかもこの舞台、実は今日だけクルクルと回って、
私達が歌う様子を全ての方が見えるようになってるらしく…
なぜ?
どうしてそんな余計な事を…
そっとしといてくれたら良いのに…
え?
これはイサク師の仕掛けですか…
なにか…
これはとても凄い仕掛けで、かなり画期的な発明なんだそうですが…
「こんなの、去年までなかったのに…」
ヘンリエッタ様もお嘆きですよ。
全く、余計な発明ですよ、こんなもの…
こんなもの、まるで晒し者製造機じゃ無いですか?
あとで文句言ってやりましょう。抗議ですよ抗議。
楽団の皆様も、楽器の搬入が進んでいますね。
あ…闘技場のなかにも沢山の屋台が入るのですね。
へえ、一段とお祭りって感じがして来ましたね。
まもなくリハーサルが始まるってタイミングで、ヘンリエッタ様と私は、運営の方に案内されて、控室に向かう事になりました。
遠くで小声でヒソヒソお話になってたんですが、
「邪悪なんだよな〜」
…ってスタッフの声は聞こえてました。
まあ…ど真ん中に突っ立てりゃ、そりゃ邪悪ですかね。
ただ…私はともかく、この国の大臣に向かって、邪魔は無いと思いますが?
取り敢えず、速やかに移動はしますよ。
これ以上、余計な悪口は言われたく無いですしね。
競技場の舞台を見下ろす場所に、ヘンリエッタ様と私の控室が有りました。流石は大臣席ですね。
会場の隅から隅まで丸見えですよ。
つまり…
私達が歌う姿も、そりゃ丸見えですよね?
おわあ…き、緊張して来ましたね。
ん?…
あそこにポツンと…
黒いカバンかな?…なにか落ちてますね?
なんだろう。
アレって…椅子の後ろだから、下からじゃ見えてないんだ。
気になりますね。
誰かの忘れ物や大切なものだったら困りますよね?
ヘンリエッタ様にお断りして、謎のカバンを確認しに向かう事にしました。
どうせ暇でしたし、今更練習すると余計に迷路に迷い込んでしまいそうですから、
ここは気分転換。
下から見る舞台も、結構気になりますからね。
一応?
この国の大臣と同席するのですよ、
だったら、その見え方も大事だと思いますからね。
ええ、ヘンリエッタ様の脚だけは、
決して引っ張ってはいけませんからね。
再び階段をゆっくりと降りて、
さっき見たカバンの位置までゆっくりと移動していますが、
上から見てたよりも…思ってたよりも随分と遠いですね。
まあ…大きな会場ですからね。
丁度?リースベース大臣のお席の下くらいだったわね。
ああ、そうだ。そのあたりだったわ。
さて、一体誰の忘れ物なのかしら。
すぐに持ち主が見つかると良いけど…
え?
随分と重いわね、これ。
なんだろう、いっぱいなにか入ってるみたいだけど…
えーーっと、持ち主を特定する為には、一応中身を確認しようかしらね。
こんな格好した泥棒もいないって、皆流石に判ってくれるでしょ?
よっこらしょっと、
ふーーー重い。椅子のうえに持ち上げたカバンの中には、
なにやら呪文や魔法陣の書かれた紙切れと、
大量の魔石がパンパンに詰められております。
うわああ、これって間違い無く危ないヤツだわ…
カバンはまさかの爆弾でした。
絶賛、大ピンチです。




