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ジャーデイン将軍の日記 前編

 他国への侵攻作成はあの時点で複数有った。


 特に海に囲まれ、海で生きてきた我らノーザンの民にとっても、


 どうせ獲るなら、やはり海の近くで有れば尚良いと…理想的だと。


 その幾つかの候補から選ばれたトールトメラ、


 事前に数回、偵察と内偵は行なってはいた。


 とにかく母国からは余りにも遠く、援護も救援も期待は出来なかった。


 故に時間を掛け、相当に綿密に、侵攻計画を練った。


 戦力の根幹である軍艦は、幾つかにルートを分散して、それぞれ隠れるように夜間に移動を行い、極力隠密を心掛けた。


 途中で幾つかの港を落とし、物資の補給も行い、準備には余念は無かった…


 お陰で全て、予定どうり、上手く事が運んだ。


 深夜、襲撃を開始し、トールトメラ最大の軍港も、ほぼこちらに被害もなく容易に制圧出来た。


 そこにいた兵は、戦わずに撤退していき、

 寧ろ…呆気無いとさえ思えたが、

 普段戦闘の経験が無かった故だと、そう判断した。

 平和ボケした国では、割と良く有ることだ。さして気にも止めなかった。



 だが結局…この判断が違っていた訳だった…


 この港は、周りを高い壁で囲った城塞のような作りだったが…


 海から侵攻した段階で、実はこの城塞の門は、外から固く閉ざされていたのだ。


 一部に、敢えて解放されてる門が有り、今思えばすぐに罠だと思うのだが…


 あの時は、正直そこまで気も回っては居なかった。


 港に半分の兵士を残し、空いている門から、トールトメラの奥地へと侵入し、そこにコチラの本陣を据えた。


 出来れば、港を奪還しに来るであろうトールトメラ軍の背を打つしか、最早、有益な策も無かった。


 当初の調べでは、コチラの軍の規模でも、国の制圧は充分だった筈だった。


 海上にはコチラの海軍の軍艦がおり、

 港には既に多くの拠点を置いて、城壁内に侵入してくる部隊の、その迎撃の準備も出来ていた。


 どう考えたってコチラの勝ち戦だった…



 そんな頃だった。


 空に…恐らく偵察の為の…まさかワイバーンが数等、飛来した。


 そこで、完全に潮目が変わった。


 我等の軍艦では無く、なぜか敵側の軍艦複数がが、この港を囲んでいた。


 気付けば、それらの一斉の艦砲射撃に晒された。


 コチラの軍艦は一体どこへ行ったと言うのか?

 最早、そんな疑問さえ、なんの意味も成さない…

 港にいた多くの部隊は既に、ほぼ全滅に近い状況だった。

 つまり、海上の軍艦は全て、向こうに制圧されたのだと、援軍は無いと、そう理解した。


 ほぼ絶望しかない状況だったが…更に追い討ちが来た。

 さっきのワイバーンだった。

 その数も多く、コチラの残存兵の最終処理を行うようだと…


 上空から降り注ぐ弾幕で、そう理解した。


 時折、地上近くまで急降下し、兵を攻撃している。なすすべもない状況だった。


 ここまでやるのかと…正直、その徹底的な攻撃に、私も部下も、生き残った全ての兵が驚いていた。


 だが…更に追い討ちが来た。ワイバーンでさえ大概だったが…


 まさか、数頭のグリフォンが飛来した。


 偶然、グリフォンがここへ飛来した…などでは無い。


 アレもあちらの手のものだと、その装備ですぐ様理解出来た…


 ワイバーンが上から、グリフォンが下から…残存兵の捜索を始めたが、最早隠れる理由が無い…どこに隠れようが、すぐ様見つかって終わりだと…


 流石にそう判断せざるを得なかった。


 あわよくば…ここから出た本体が、ここへ援軍に来たとしても、決して結末は変わりようも無いだろう…


 一頭でさえ処理に困るクラスの魔獣が、数等も居るのだ。


 万が一…運良く全てを倒せたとしても、コチラが無事なわけなど、絶対に無いだろう。


 その後の作戦遂行など絶対に、なにも出来やしない…不可能だ。


 それくらい、赤子でも、いや…猿でも判るだろう。


 残った全員、顔を見合わせ、それぞれ降伏を了承しあい、

 生存の十数名…全員、敵に無条件降伏した。


 いつから居たのか一切気付かない獣人の兵が、なぜか既に数名、そこに居て、我等をあっという間に拘束した。


 その兵はすぐに判る程…雰囲気や佇まいで、かなりの手練れだと、歴戦のツワモノだと…そう思えた。


 その後だった。


 更に男が…なにも無い場所に突如現れた。

 異質だった…軍人でさえ無い様にしか見えない…ただの、普通の民間人?そう見えた。


 そして…男はグリフォン達に、新たな命令を出した…


 多分ここから、直接コチラの本陣に向かうようだ。

 なんとか止めたいと思っても…拘束された我等に、最早出来る事などなにも無い…


 そこから、トールトメラの王城へ連行された。



 気にはなっていたが…本陣がどうなったかなど…敢えて聞く必要も無いのだろう。

 あれを相手にするには、余りにも寡兵だからだ…最低でも、数万の軍勢が必要であろう。


 王城に連行さるときにようやく気が付いたが、

 あの軍港の造りが…そもそもこういった戦闘の為の、

 敢えて…の、あの形状だったのだと。


 唯一空いていた門も、その先に有る大きな空き地も…

 全てそこまで見込んで造られた、向こうさんの狩場だったのだと…


 案の定…上級の官を残し、本陣は壊滅だと…トールトメラの兵が教えてくれた。


 全てそこまで計算されていた。


 調子に乗って、まんまと誘い込まれ、敗戦したわけだ。


 惨めだった…


 連戦連勝だった…故にいつしか、心の端に驕りが有ったのかと…


 多くの部下を…まんまと失ってしまうとは…


 もっと早く気付くべきだった…



 もう…後悔以外に、私に出来うる事はなにも無かった。

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