簡易裁判です。
敵側の司令官クラスの兵士が、王城の一箇所…広場に集められました。
その敵さんですが、圧倒的な戦力をもって、一気にここを制圧しようと考えていたものの…
当初は中々順調だったはずなのに、急に風向きが百八十度変わってしまった…と。
つまり、帝国からの援軍の到着で、まさしくあっという間に、全てをひっくり返されたと。
そのせいで?
最早指揮官達は、完全に心を折られ、早い段階で、戦闘の継続をさっさと諦めたたようです。
海上から支援するはずだった味方の軍艦は、なぜかあっという間に戦闘不能…消息不明だったし…
こちらからの、海上からの艦砲砲撃に、追い討ちの飛竜隊の空爆…からの突撃…
トドメがグリフォン達…悪夢ですね。
踏んだり蹴ったりな挙げ句に、
最後はほぼ死刑宣告にも等しい、魔獣グリフォンの投入…
表立っていちいち、世界中に、帝国の戦力の秘密を、うちもわざわざ発表なんてしていませんからね。
ええ、手を出したら最後なのですよ、うちの帝国って。ご存知無かったですよね。仕方ないですが…お気の毒です。
少し?かなり遠いとこからお越しだったなら…
そりゃ、この異様な戦力にも、大層驚かれた事と思います。
でも、割と早くに全員投降したのは、
そこは指揮官として、中々賢明な判断でしたよ。
普通に全滅…いえ、完全消滅もあり得ますからね…うちの戦力の場合は。
お越しの皆さん、遥か北方に位置するノーザンという国の軍隊なのだそうです。
勿論、私は知りません。無知で申し訳御座いませんが…
近年、そのノーザン地域の寒冷化が急速に進んでいて、
特に食料問題が昨今、大変大きな悩みなのだそうです。
今後、自国に住めない程の寒冷化が進むその前に、新たなる自国の移動先の確保、
まあ…既にある程度、豊かな国の、占領を目論んでいたと。
で、幾つかの候補の中から、外からは特に軍隊やらが見えなかった、こちら…トールトメラに白羽の矢が立ったと。
ここを拠点に、順次付近も制圧していけば、元々のノーザンよりも、もっと豊かな国が出来上がるだろと…
ノーザンの国民全て、みんなの幸せだと…
幸せの…そこに、
こちらの側の命が、一切含まれて居ないっていうのは、全く頂けませんけどね…
それを聞いたエストラーダ様も、随分激昂されてますが…
それをうちの王様が、スッと片手を挙げ、制しました。
王様はゆっくりと立ち上がり、
向かい合う指揮官らの代表…
恐らく一番上の位…ぽい方の元へと、その歩みを進めます。
『ここで、お前らに与える選択肢は、二つだ…』っと。
床に座した指揮官の前に、
まさか王様も、ドカっと、乱暴に腰を落としました。
『なに簡単だ。服従してこちらの人間になるか、強制労働の後で、サクッと死ぬか…どっちかだ…選べ?』
悪意に満ちた人なら、王様は一目見ればお分かりなる…そういう人なら、多分、質問などしない、
さっさと処刑される。
王様は、そこになんの遠慮も情けも、迷いだって一切無い。なのに…?
つまり…この指揮官の人間性は、そこまで悪くないと…?
「わ、私は…仮にも軍人であり、ノーザン国の剣であり盾である…そ、その国を裏切るなど…出来やしないし、あり得ない…」
『あ?…言っとくが、国はもう関係無いぞ?
悪いが、ノーザンだっけか?
数日中には、この世からきれいサッパりに滅亡するだろうからな…』
なにを言ってるのか…ノーザンの指揮官には、多分、その意味は理解出来ないでしょうが…
私もエストラーダ様も、その意味が充分に理解出来ます…
他からの聞き取りも凡そ終わっており、かなりの情報が既に、王様には伝えられており…
ノーザン本国には戦争責任の賠償など、出来る余裕などは殆ど無く、
制裁はその消滅をもって、だと…
恐らくそう、既に決めてらっしゃいますね。
滅びると言ったのは、王様的には、既に決定事項…
それはノーザン国が滅びる事は、もう決して避けられない事実なのだと。
実は夕方の、その少し前に、王様は単身現地に飛んでます。ええ、危険もなにも有ったもんじゃ無いですが…いつもの通常運転ですね。
直接、向こうの王城で、ノーザン王にお会いになって、直接警告したそうです。
明日の昼には、ここは消滅すると、
実際に、王の目の前で巨大な石を落下させ、その城を半壊させたそうです。
出来る出来無いでは無い…実際に出来ると。
更に、ミュー様と九郎様も登場し…ハッタリでもなんでも無く、
超常の…異国の王が、賠償を求める為に、わざわざ単身でノコノコと…
では無く、
最早絶対に、人間如きでは抗うすべも無い、
神獣と一緒にやってきたのだと…最後通告、警告のために。
明日の昼迄の間に、国民全てを逃がせと。
それが貴様に…王に残された、唯一で最後の仕事だと…
当然ですが…ノーザン王の命令で、多くの兵士がうちの王様に襲いかかったそうですが…
一切触れることさえ出来無い上に、その場に居た数千人の兵士が、
尽くその場から消え去ってしまったそうです。
王様によって、【深淵】へと、引きずり込まれたのだと、九郎様が教えて下さいました。
【深淵】に入ったら最後…肉体も魂も、全て消滅すると…
それは神族だろうが、獣人だろうが、
勿論、人間だって同じなのだと。
唯一の例外が、王様と同じ【深淵】属性のミュー様と九郎様、ジョン様だけなのだと。
時々…繭に入ってそこに収納されてる私にも、【深淵】って、やはり恐ろしい場所だったのだと…改めて認識させられるのですが…
そして…指揮官の返事の前に、王様が何かを取り出して、指揮官の前に並べました。
王冠…立派で豪華な
杖…
あと、剣や槍?武器ですね。
『メーストラー七世および、今回の作戦を立案した複数人の関係者は、既に処刑した…城に居た唯一まともそうに見えたヤツに…多分、王子かな?
あとはそいつに任せようとしたんだがな…まさか全部放棄して、一人で城から逃走しやがってな…泣けるよな?』
『王族のクセに、国民全てを見捨てるなど言語道断…まあ…育ちの良いボンボンが、たった一人で生きていけるなんて…本気で思ってんのかね?…アホ丸出しだろ?』
逆に?国民全てにこの事実を伝えたった、…のだと。
『なので、議会の役人や政治家が、なんとかしろとは言ってやったが…
軍隊は壊滅してるし、寒冷化も含め、最早打つ手は一切無いだろう。
どこぞの他国に吸収されて、それで終了だ。
近隣とも、絶賛バチバチに係争中なんだろ?
手を差し伸べるより、弱ったお前らの国を手に入れる方が、近隣の連中も簡単だわな?
つまり…お前らには、助けも奇跡も、もう決して起きやしない。すっかり詰んでるんだよ。
帰ろうたって…仮に帰る頃にゃ、もうお前らの国なんて残ってねえんだよ。
帰ったって、せいぜい逆賊扱いが関の山だろうな…即座に死刑だろ。
つまり…お前ら、とっくに、完全に、詰んでるってお話だ…その上で…』
王様曰く、
宣戦布告も無く勝手に攻めて来た段階で、
結果に関わらず、そこに正統な捕虜の扱いなど、最初っから存在しないと…
帰れない兵士らに、王様が最後通告をなされた訳です…
指揮官は俯き、眉間に深いシワを作りながら、しばらく考え込んで居ましたが…
無碍な扱いをしないのであれば、降ると。
『悪いがお前ら、そんな偉そうな立場じゃねんだよな?…だって捕虜じゃないぞ、戦争犯罪者だぞ?』
「そ、そこをなんとか…我等とて、全て命令だったのだ…」
『で…?テメエら、こっちの人間、何人殺した?』
「い、いや…それは…」
『良いか、こりゃ戦争じゃねえぞ?ただの押し込み強盗なんだ、テメエらはよ…
よーするに、今のお前らは、戦争奴隷以下なんだよ…罪人なんだよ、
ご意見述べれる様な、立派な立場じゃねえっての』
指揮官は、深く頭を下げました…床にこすりつけて、うちの王様に懇願しますね…
「どうか、どうか私の首一つで、残った兵らを奴隷になど、ど、どうか勘弁して頂きたい…どうか…」
『おい、アンタ名前は?』
「わ、私はジャーデイン将軍であります…」
『そうか…じゃあ、ジャーデインよ?お前がお前の責任で、残った兵らを上手く纏めろ。
取り敢えず…今後の働き次第だ。ちゃんとやりゃ、奴隷にはせんと約束してやる。
だが…失敗の猶予など、一切無えぞ?
一蓮托生だ、バカが一人でも出りゃ、そこで全員、奴隷堕ちだ。良いな?』
「……了解しました…」
『あ………悪いエスト?ごめん、勢いで勝手に決めちまった…』
「いえいえ師匠。私が裁こうとも、
当然、結果は同じですから…そこはなんの問題も有りませんよ…寧ろ、色々とお手数をお掛けしました…何か御礼を…」
『いや…要らんよ。それは良いんだよ。俺とお前の仲だからな…そうそう、昨日美味い焼きそばを食えたしな、今回はそれでチャラで良いよ…』
えーっと?
焼きそば…で、敵軍を殲滅ですか?
へえ〜、世の中には、凄い話もあるもんですね。
そうか…焼きそばって、相当に偉大だったのね…




