自称 弟子?
王城にて、暫く滞在する事となりました。
各地に散った我が帝国からの戦力が一旦ここに戻り、
合流後、海軍と共に帝国へと、帰還する手筈なのだそうです。
捕虜の連行もしているせいで、その移動には少し、時間が掛かるようです。
そして、到着の際には、敵側上位者の簡易裁判や処遇も、
うちの王様も含めて、色々と話し合いが行なわれる、との事ですね。
そうです、うちの王様が、尋問の際の、嘘発見器なんですよね。
不敬だとは思いますが…相当に便利ですよね?
なんせ、隠し事も嘘も、すぐにバレちゃいますからね…
こんな頼もしい事って無いですよね?
そんな王様ですが、ミュー様だけを残して、
九郎様と皆さんのお迎えに行かれました。
私は、例によって待機です…連行中の、気の立った敵兵も、まだ多くいるからな…と。
で?…
残った私は今、
エストラーダ様から、猛烈な質問攻めに遭ってます…
とにかく、ありとあらゆる細かな事を聞かれますね。王様の事。
なんでも、本人に聞いたって、絶対に教えてくれないから、だそうで…
なる程…それはそうですね。
アーラントの件や、キャラバンなんかについても、色々と話しました…
ええ、エストラーダ王の、その権力を使って、ほぼ強制的に…ですが。
まさか、最近王様が食べて、美味しいと仰った物とか?
そんなのどうでも良いでしょ?
…って、事が気になるのだそうです。
アレですね…完全な、ただの王様のファンですよね?
そう言うと、一切否定もされず、
ハイッ、っと、
寧ろ、元気で素敵なお返事が返ってきました。
救国の英雄…ですから、それもまあ…頷けるのですけど、
そのエストラーダ様も?
この国を大きく立て直した、稀代の名君だと評判ですのに…
「いやいや、私なんて、所詮は師匠の猿真似ですよ?」
…と、ご謙遜ですね。
そもそも、うちの王様を師匠と呼ばせたのは、
エストラーダ様の育ての親であり、教育係だった執事のセルビス様のご意向だったそうです。
早々に帝国に同盟を持ちかけるよう、エストラーダ様に指示したのも、
実はその、セルビス様だったのだとか。
とにかく頭のキレる御方で、幼少より厳しい教育係だったセルビス様のおかげで、
今のトールトメラが在るのだと、そう仰ってます。
そのセルビス様ですが、
数年前に、老衰で天寿を全うされたそうです。
その際にもうちの王様が、セルビス様の御葬儀を、すべてお一人で執り仕切り、
万事滞り無く、執り行われたそうです…
それはとても立派で、極めて厳かで、
それでいて、とても壮大な、何処の王様の葬儀にも決して負けない程に、
それは素晴らしいお葬式、国葬だったそうです。
「私は勿論、そちらの三大天や、六大将軍も、そして我が国の、全国民が泣いたのだよ…」…と。
王様の演出が、とても凄かったそうです。
まさしくプロの仕事だったと…
それもあって、うちの王様に対しては、
それはそれは感謝され、
で、更に、頭の上がらない存在…と、なったようですね。
更に?
今、発覚したのですが、シャダ商会の船に乗って、ちょくちょく帝国へも、お忍びでお越しなのだそうで、
常に街の運営や政治について、うちの大臣らと頻繁にお話になられているのだとか。
帝国での、屋台巡りが趣味だそうです…
そんな際でも?
実はもっぱら、うちの王様のお話しが大半なんですよと、エストラーダ様は笑ってらっしゃいます。
「とにかく、セルビスは私のたった一人の味方で有り、恩人で指導者なのだ…
そのセルビスが、あの方…シヴァ王様に従い、そして学びなさいと、言ったのだ。
セルビスは、特に有能な人を見極める優れた目が有ったのだ。
ちなみにな、師匠の提案で、
セルビスの命日は、国民の休日になったのだよ…
私は、あれ程セルビスに世話になっておきながら、
そこまで思い至らなかったのが、心底悔やまれたよ…」
エストラーダ様の表情が一瞬曇ったのですが、再び笑顔となって…
「だからな、師匠は素晴らしいのだよ。この日が来るたびに、私も、国民も、セルビスを思い出すのだ…本当に素晴らしいとは思わんかね?
…きっとセルビスも、誰よりもそれを、喜んでいるだろうさ…」
そういえば、うちの王様が良く仰ってます。
人は二度死ぬんだと…
寿命で死んだ時に一回と、誰からも忘れ去られた時に二回目、その二回目の死こそが、正真正銘の死…なのだと。
まあ…俺は割としょっちゅう死んでるんだがな…って、
そこまでがワンセットですね。
そうです。セルビス様は、まだまだ人々の心に、ちゃんと生きていらっしゃる、って事なのですね。
その休日は、「偉人セルビスの日」と、言うそうです。
そして?
やはりうちの王様には、弟子は取ってないと、きっぱりと断わられたそうですが…
そこは押しかけ女房ならぬ、
押しかけ弟子と、無理矢理になったそうです。
なんでもそこ、実はイサク師の入れ知恵なのだそうで…
しつこく何回もいってれば、
うちの王様は、いつか面倒くさくなってな…
そのうちすんなりと諦めるからと、受け入れちゃうからと。
しかも一旦、その関係性が出来たなら、
王様はそう簡単には、ほっぽり出したりはしないからと…
寧ろ性格上、絶対にアンタを放ってはおけなくなるはずだから…と。
御本人のイサク師は勿論、
そしてアーデ様、カイ様、アズラエール様、
実はそいつらみんな、そうゆうのなのだぞと…
だから、笑ってつきまとってやれば良いんだよと。
愛想よくしてれば、特に嫌われたりもせんからと。
あとな…ノリのいい奴が大好きなんだよ、王様は。
不敬とか…気にするだけ損だぞ?っと。
…なる程。
一見とんでもないアドバイスですが、
幾つか問題発言も有りましたが…
いやいや、あながち間違いでも無い…以外と正解なヤツですよね。
私が言うのもなんですが、
寧ろ的確に、王様の急所を突いてる気がしますね…
悪意に満ちているのに、悪意が全く無いなんて…
なんて恐ろしい攻撃ですか、イサク師?
は!?…
イサク師は…策士…だった…
ま、まあ…知らんけど…
…って、い、いけない、
いつの間にか、王様が私に乗り移った様ですね…




