上陸作戦開始前です
颯爽と、カイ将軍様がこちらの艦に到着しました。
「アズラよ、殿は?」
「勿論、逃げましたね…」
将軍様と目が合った。
あ、会議の節はお世話になりまし…
わ、私は…「知っておる、エトランだな…」…です…
「わが名はカイ…真名はタニンだ…以後、くれぐれも王様には、よきに計らってくれたまえよ?…」
は、はい…
「チッ…逃げられたか…まあ今は良い、ところでアズラ…」
ズーラー様とカイ様が、そのままそこで、作戦の打ち合わせを開始しています…
その間も?
カイ将軍は王様を探していらっしゃっるのか、常にキョロキョロされていますね…その時…
コトン…と、
どこかの物陰で、小さな音がした瞬間でした…
あ!王様だ!…って、私も思った瞬間…
カイ将軍が、とんでもない…
凄まじい速度で、王様に向かって飛んで行きました…
王様の関係者…特に例の子供達は皆さん、
王様に向かって飛びつくってのが、何故か恒例行事なのですが?
王様も当然の様に、それを受け止めるのですが…
そう、いつもの…恒例のヤツだと、一瞬思ったのですが?
王様は少し腰を落とし、斜めに構えまして…?え?
カイ将軍に向かって、ま、まさか?!
まさかの?
全力の右のストレートを叩き込みましたっ?!
驚愕の光景でした…
衝撃が大き過ぎて…一連の動きが、まるでスローモーションの様に見えます…
カイ様のお顔が…いえ、首から上が、
ちょっとおかしな方向を向いていますよ?
なのに?
カイ様は満面の笑みですけど?
「ああ…気にするな。うちの一族は、馬鹿げた耐久力と治癒能力が有るのだよ…中でも、我の母はそこが異常に特化している…」
え?いや、いやいや?そういった説明でなくて…ですね?
お母様、王様の渾身の右で、
うずくまって、ピクピクしてますけど?
「あの程度、一切問題無い…なんなら首を落としても、それぐらいでは母は死なんぞ?…」
「我が王が避けているのはな、母が王の子種を常に欲しがるからだ…」
え?そ、そうなんですか…なる程…そりゃ避けられますね…
「アレで随分とまともにはなったが、ここだけは未だに変わらんのよ…本能なのだそうだが…全く…頭が痛い問題なのだよ…」
『クソがしくった…っち、見つかっちまったぜ…』
王様が横に戻ってこられました…
王様には、今度はアズラエール様が謝罪してますね…
「とのおおおおおおおおお〜」
え?…再び復活したカイ様が、こっちにぶっ飛んで来て、
王様はその場で華麗に反転して、
将軍の顔に、今度は強烈な裏拳を…叩き込みましたね…
すごい音と衝撃ですけど?
カイ様がゴロゴロと、甲板を転がってますが?
普通の人なら…きっと首が折れて、即死なのでしょうね?ってくらい…
この間近な距離で見たら、流石にそう思いますね…アレは…
そもそも?
王様の容赦の無さも、普段よりもえげつないですよね?本気ですよね?
気がつくと王様の手には、あの伝説の武器…ドラゴンこわし…が、強く握られています…
そして?その武器をみた途端に、カイ将軍は急激に落ち着いた様…です…?
ふ、震えています?
「あの武器こそ、我らには恐怖の象徴なのだ…我が竜族は勿論だが、やんちゃした獣人の多くも、暴れ回った神族の多くも…アレを見ると、一気にトラウマが蘇るのだよ…」
ト、トラウマ、ですか?
「ああ、特にな…アレを地面に引きずって歩く時の音がな…その音が聞こえた時が…
王が本気で怒っておるという、なによりの証拠なのだ…」
ああ、そういえば?
私も何度か、その姿は見かけましたね…
「あの音だけで、一度でも酷い目にあった…いや、王からご指導を受けた者はな…その大抵のやつはもう、全く動けないのだ…」
「ほら見ろ?引きずってるだろ?
あの音だ…カラカラ…カラカラ…
そして母が、その音で完全にフリーズしただろ?…」
あ、はい、止まりましたね?
「ちなみにな…その…王様からの…ご、ご指導のあとでな、我が母、当時の竜王…
セーメーンだった母はな、地位とタニンの名を捨てたのだ。
生まれ変わったのだ。
そこで王様から、タニン改…
改から、カイっと、名を与えられたのだ…」
へ、へえ…そうだったんですね?
あの…アズラエール様も、少し…震えられていますか?
「ああ…怖い…我は一度たりともご指導は頂いてはいないのだが…何度も、何度も間近で見たのだ…
故にあの音が…アレが世界中のなによりも、本当に恐ろしいのだよ…」
まさか?
屈強な竜族に、そのような強烈なトラウマを植え付けるとは…
王様って…やはり相当にお強いのですよね…
…ってか、
ご指導?
なんでしょうかね…それは?




