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神の命にて 後編

 私達は早速、手分けしてリストの人物の捜索を開始した。


 リストには、割と細かな情報も添えられていて、七名の職人のうち、四人は直ぐに居場所も特定でき、情報も収集出来た。


 残りの三名、ここアーラントを襲った蝗害で、どこかに避難した…と云うところまでは追えたのだが、

 そこから足取りがぱったりと消えていた。


 考えられる事は二つ。既に死んだか、或いは身を隠したか…


 何故身を隠した?…それは恐らく、后側の…クーデターに関与した側だからで、


 国から身を隠したのか、クーデター側から隠したのか…どのみち追われているのなら、

 相当用心して身を隠している事だろう、

 

 国の中心部から離れれば離れる程、周りは広大な山地だ

 当然、捜索は困難になる。


 小さいものでも構わず、とにかく情報を集めた。

 結果は芳しくは無かったが、聞き込みの最中に女が接触して来た。

 

 「おやお兄さん、アンタ随分とお困りの様だね…」

 容姿はどう見ても近所に住む中年の女…

 だが、直ぐに理解する、これは、うちの白組の人間だと…


 案の定、女は白組だった。やはり王からの指示を受け、我等のバックアップに入るという。


 お互い、余計な事は聞かない、深く詮索しないのが、我等の暗黙の了解だからだ。


 女は蝗害よりも随分早くから既にここに居るそうで、我等の知らぬ情報も多く持ち合わせていた。

 そこで分かったのが、行方不明三名のうち、二名は恐らく死亡、

 残りの一名は相当腕の良い鍛冶師だそうで…

 こちらの予想どうり、どこかに潜伏中の様だった。


 「街を出る人間の動きは、流石に最後まで全ては追えないけれど、重要な人物がここを出る際には必ず、うちのもんがチェックしていたからね、わたしゃ恐らくまだ、そいつは街の中だと思うね…」


 ふむ…となると、誰かに匿われている可能性が高いな?

 「そうだね、うちが調べた限りじゃその男、軍の上の方のお抱えだったみたいだからね…多分そっち系かねえ…」

 

 女には幾つか心当たりが有ったようで、案内役の少年を付けてくれた。この少年も、白組なのか…

 どこからどう見ても道案内に雇われた、ただの近所の子だ。


 最初の二カ所の捜索は、残念ながら空振りだった。

 そして三か所目は、大きな屋敷の裏側…恐らくその屋敷を建て替える以前の古い屋敷で、

 そもそも蝗害以前に、既に半壊しているのだが、ふと少年がある場所を指さす。


 その半壊した屋敷のすぐ横…倉庫の様だ。


 屋敷に続く石畳には、流石に足跡は残りにくいが、そこから外れる倉庫までの部分には、僅かだが、その痕跡が見えた。


 なる程…薄っすらとだが、確かに中で人の気配が有るな。礼を言うと少年は笑顔で去って行く。


 見たところ、入口は正面の一箇所だが、屋根の辺りから侵入出来そうだ。

 すぐに屋根へと移動し、壁の亀裂から侵入した。

 生活臭を嗅ぎ取って確信した。ここには確実に、潜伏者が居ると…


 目標の人物かどうかはまだ判らないのだが、なにせ白組の調べだからな…


 中に居たのは二人…高齢の男女…夫婦だろう。そしてそれが目標の人物かどうか確認する為に、

 相手の急を付き、瞬時に背後を取る。


 死にたくなければ動くなよ…こちらの質問にだけ頷け…

 お前は…武器屋のアシダンか?


 観念したのか、男は抵抗を止めて、静かに頷く。


 お前は誰から隠れて居るんだ、反乱したた軍部か?

 男が頷く。


 なら…


 私はそう言って、ひとまず男を解放した。

 当然、男は困惑していた。

 「あ、アンタ…ワシを殺しに来たんじゃ?」


 いや、違うんだ。寧ろ、場合によってはアンタの味方…に、なるかもな…

 アンタの武器屋としての腕とやる気を問いたい…アンタ今でもまだ、良い剣が打てるのかい?


 「…ここにはもう、まともな鉄が無い…打ちとうにも、打てんのだよ…」

 そうか。ならその場所と材料を提供すりゃどうだ?勿論、アンタら夫婦の身の安全付きだ。

 安心してくれ。ちなみに私は帝国軍だ。


 どうやらこの男は、軍部のクーデターに関する様々な情報を知っていたからか、

 クーデターの前には、既に口封じの為に命を狙われていた様だった。


 再び剣を打て、しかも身の安全まで保証される…しかも、帝国軍にだ。男は即答した。何処へでも行こうと。


 いい返事が聞けたんだ。アンタらの身柄はこっちで保護させて貰うよ。悪いが早急に身支度を頼むよ。

 匿ってくれた奴にも、最後の挨拶は済ませといてくれ。


 それが済むまで、このまま周囲は私達が警備している。


 挨拶が済んだなら、すぐ移動するぞ…

 


 仲間が馬車を調達に行ったが、すぐに戻ってきた。

 どうやら白組が、既に手配してくれていた様だった。

 本当にありがたい話しだ。



 さて、この夫婦の移送が終わったら、最後の王命を完遂せねばな…


 まだ終わっては居ないのだが、この先の進路は、うちの別班が警備している地域だ。


 それ以上に頼もしい援軍など、

 ここにも…いやどこにも存在しないだろう。


 普段ならまずあり得ないのだが…思わずうちの隊員全てから笑みが出た。


 珍しく楽な任務だった上に…温泉だと。


 白組のサポートといい、やはり我等の神には、どれだけ感謝しても、しきれんよな…



 では、出発だ。良いか?温泉から出ても、絶対に気を抜くな?


 これはあくまでも、王命だからな…


 


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