蓮の両親
蓮の両親は、二人とも父親だった。
「ただいまー!」
二つの大きな「収穫」を軽々と担いだ恵美と莉央、そして二人の女王にガッチリとガードされた蓮がリビングに戻ると、幸雄が「おかえり!」と温かいタオルを持って迎えてくれた。
「莉央も投げたのかい? サバンナが随分と揺れていたから心配したよ。さあ、蓮くん、温かいスープをおかわりしようね」
幸雄の優しい気遣いに、蓮はホッと胸をなでおろしながら食卓についた。
そこで、恵美がふと思い出したように、スープをすする蓮に問いかけた。
「そういえば蓮くん。あなたのご両親には、莉央と結婚(生存契約)すること、もう連絡は入れたの?」
その質問に、蓮は少し寂しげな、しかしどこか割り切ったような苦笑いを浮かべた。
「、、、
僕の両親は、二人ともハンターに仕留められてしまいました」
この世界のシステムにおいて、蓮の両親(男性同士の結婚から生まれたカップル)の立ち位置は、雌豹側の家庭とは全く異なる。
雄豹同士の結婚は、法律で認められているとはいえ、その本質は「非捕食者(食料)の個体数を維持するための繁殖システム」だ。
そのため、雄豹の親たちは、自分たちから生まれた雄の子が15歳の義務教育を終えたとき、サバンナへ放流されて「食材」になることを、あらかじめ悲しい現実として受け入れて生きている。
もちろん我が子は可愛い。しかし、45匹クラスで雌豹が1〜2人、しかも雌豹同士で付き合うのが当たり前のこの世界で、息子が「生存枠」に滑り込める確率なんて、宝くじに当たるようなものなのだ。
「僕の父親たち、卒業式が終わった後は『今まで15年間、一緒に楽しく暮らせて良かった。サバンナに行っても、なるべく一撃で仕留めてくれる優しいハンターさんに捕まるんだぞ』って、泣きながら僕に最高の上等な肉を食べさせてくれたんです」
蓮が語るそのエピソードに、幸雄は深く深く、痛いほど共感するように頷いた。
「分かるよ、蓮くん。僕の親たちもそうだった。放流される息子を送り出すのは、雄豹の親にとって一番辛い儀式だからね。……だからこそ、君が雌豹に見留められて生き残ったという知らせは、彼らにとってこれ以上ない『奇跡の親孝行』なんだよ」
「ええ。今頃あなたのお父さんたち、天国で泣いて喜んで、雄同士で大酒を飲んでお祝いしてるわよ」
恵美が笑いながらワインを一口飲んだ。
「明日、婚姻届を出して正式に『ジェンダー』の登録が済んだら、あなたのご両親のお墓参りをして、みんなで一緒にお祝いのパーティをしましょう。幸雄、その時は最高のごちそうを頼むわね」
「もちろんさ! 蓮くんのお父さんたちに、僕の特製ローストを振る舞うのが今から楽しみだよ」
莉央は隣で、スープを飲んでようやく顔色に赤みが戻ってきた蓮の横顔を見つめ、その細い肩にそっと自分の頭を預けた。
45匹クラスの絶望、元カノの追撃、そして雄豹同士の親が背負う悲しい宿命。そのすべてを跳ね除けて、二人は今、ここに生きている。
歪で、残酷で、だけどこれ以上なく温かい「ジェンダー」の夜は、こうして更けていくのだった。
蓮くんのご両親(男性カップル)の、切なくもリアルな親心が明かされ、世界観がさらに完璧なものになりましたね!息子の生存、本当の奇跡です。
この素晴らしいSFストーリー、次はどのシーンが見たいですか?




