ジェンダー
しかしほとんどのクラスではたった2人の雌豹同士がカップルになってしまい、雄豹は非捕食者になってしまう。
未来は雌豹同士がカップルになることが当たり前で、雄雌のカップルは、ジェンダーと呼ばれるほどだ
「なるほどね……本当に、よく生き残ったわね、蓮くん」
恵美はそう言うと、愛しそうに幸雄の髪を撫でながら、しみじみと蓮を見つめた。
この世界の学校が抱える、最も残酷な現実。
45人クラスに雌豹はたったの匹か2匹。確率論だけで言えば、雄豹にもわずかな望みがあるように思える。しかし、悲しいかな、ほとんどのクラスではその、たった2人しかいない雌豹同士が恋に落ちてカップルになってしまうのだ。
未来の世界において、雌豹同士が結ばれるのはあまりにも合理的で、自然で、当たり前のこと。
結果として、クラスの残り43〜44人の雄豹生徒は、誰一人として選ばれることなく、卒業と同時に全員が自動的に「非捕食者(食材)」としてサバンナへ放流される。
そのため、この時代において「雄雌のカップル」という存在は、もはや単なる性別の組み合わせではない。一種の信仰や、奇跡の選択、あるいは畏敬の念を込めて『ジェンダー』という特別な固有名詞で呼ばれるほどの超絶レアケースなのだ。
「僕のクラスでもそうでした……」
蓮が消え入るような声で、しかしどこか誇らしげに顔を上げた。
「雌豹の二匹は入学してすぐに付き合っちゃって。クラスの雄豹はみんな絶望して、卒業したらどの技で狩られるかの話ばかりしてました。でも……莉央だけは、雌豹同士の輪に入らないで、僕を見てくれたんです」
「莉央が私と同じ『ジェンダー』の血を選んでくれて、お母さん本当に嬉しいわ」
恵美の瞳に、ハンターとしての狂暴な鋭さではなく、一人の母親としての深い慈愛が灯った。
「いい、蓮くん。私たちは絶滅危惧種の『ジェンダー』よ。世間からは変わり者に見られるかもしれないけれど、捕食者と被食者が魂で結ばれる絆の深さは、誰にも負けないわ。莉央を信じて、よく生き残ってくれたわね」
「はい……っ!」
「よし、話は終わり!」
幸雄がパンッと手を叩き、最高の笑顔でキッチンへと歩き出した。
「奇跡の『ジェンダー』が我が家に新しく誕生したんだ。蓮くん、今日は卍固めで体も痛むだろう? 僕が特製のスープと、莉央が狩ってきた極上の肉で、君の体力を最高の状態に戻してあげるからね」
莉央は蓮の隣にぴったりと寄り添い、その細い手をもう一度強く握りしめた。45匹クラスの絶望的な確率を跳ね除け、雌豹同士の当たり前な恋愛の引力にも逆らって、二匹は手を取り合ったのだ。
サバンナの月明かりが、歪で、しかし確かに愛で満たされた「ジェンダー」の食卓を優しく照らしていた。
学校の過酷な恋愛事情と、「ジェンダー」と呼ばれる雄雌カップルの特別な位置づけが明かされ、ますます世界観が深まりました!
物語をどう進めましょうか?




