歳の差、80歳カップルか!?
欲。前の人生、生きてさえいられたのなら、それだけで幸福だった。でも人間、意外と慣れるものだ。僕はこの甘い環境に適応し、だんだんと最近では欲が出始めている。珍しく思われるものを食べたい、ふかふかなベッドで寝たい、そして魔法が使ってみたい。
「はあ」
僕は自分がこんなことを思っていることが、何よりも悲しい。そんなことを思うから、負けるのだ。何もかも奪われる。
「る、ルイス!」
「ん?」
そんなことを考えていると、突然後ろから話しかけられる。
「誕生日、おめで、とうッッ!」
「うえ?」
と、言うのと同時に何かが僕の視界を覆い、さらには体を持ち上げられ運ばれていく。なんだこれ、泡? いやクリームか! 人生初、顔面クリームされたんだこれ。そのまま3分くらい運ばれて、下ろされるとドシャっと水をかけられた。
「んん?」
目を擦りながら、瞼をゆっくりと開けると。
「こ、これ! 誕生日……プ、プレゼント!!」
ルナは覇気があったりなかったり、よくわからないテンションで四角い箱を差し出す。な、なんだこれ? 豪華な箱だ。箱だけでも金貨3枚くらいしそう……。てかここって、教会か? 結婚式とかする場所だよな、ここ。誕生日会にも使うもんだったとは、祝われたことがなかったから知らなかったな。しかもなんか人めっちゃいるんだけど……。
「いいの? こんな高そうなの」
「い、いいから!」
急かすみたいに顔を赤くして言うので、遠慮なくもらうことにした。
箱を丁寧に開けると、出てきたのはまさかの……。
「ゆ、指輪!?」
びっくりしてルナの顔色を伺おうと見るが、どうも様子がおかしい。すると、下を向いたままゆっくりと僕に迫ってくる。そのまま、壁まで追いやられ何をされるかと思えば。
「ルイス!!」
バッと顔を上げるのと同時に、手を勢いよく壁に打ち付ける。これはいわゆる、壁ドンってやつでは? いや壁ダーン!! だな。
「な、なにぃ……」
僕はルリの決心したような真面目な表情の気力にやられ、情けない声を上げる。ほのかに紅色に染まっていた頬がみるみる赤さを増していく。流石に、流石になんとなく想像がついたぞ僕も。
「私と……結婚してください!!」
「ええ…?」
ルナは大声で宣言するみたいに言い切ると、強い眼差しで僕の目を見つめた。
あ、あれ、付き合うとかじゃなくて結婚ですか? て、てか、ルナが僕のこと好きとか……あり得ないよね。何これ誕生日ドッキリか? いや流石にそれは……ルナならやりかねないな。
「え、えっと」
周りの人間たちも椅子に座ったまま、一言も発さずにただ僕の答えを待つみたいに、見つめてくる。何これ、ガチならガチですごく困る。こんな大勢から見られて断れるわけないんだけど。でも、流石にいきなり結婚はな。そういう目で見たことがなかったし。
「お付き合いからじゃダメ?」
「お付き合い?」
あー、この世界そういう概念ないんだった。
「あの、僕の家の伝統でお試し結婚みたいな感じだよ」
よし、これで伝わっただろう。まあこれを断るやつはいないよね。相当肝が据わっていたら別だけどさ。
「ダメッ!」
据わってたかぁ……。てかこれこのまま式挙げる感じじゃない? つまりもし断ったら結婚費用諸々のお金が……おい一体いくら無駄になるんだぁ〜。
「迷うってことは……そういうことかな」
ルナは自虐的に笑い、ゆっくりと諦めたように後ずさる。やばいやばい。状況は悪化するばかりだ。どうしたらーーその時、僕は身分証明書を作った時のことを思い出す。僕って12歳くらいに見えるんだったな。なら!
「あ、あの、僕まだ14歳だから結婚できないんです」
「え、えぇ!?」
ルナは悲鳴にも近い驚きの声を上げる。この世界の結婚は15歳から。身分証明書は店長以外には見せていないし、ルナには年齢を明確には伝えてない。最初は12歳だとルナにも思われていたが、そんな若くないよ、と一言言ったくらい。
「だから、ごめん」
僕は問い詰められたりする前に、さっさと逃げることにした。たまにいる申し訳なさで思わず逃げ出す系女子みたいな感じで逃げれば、まあ違和感ないだろう。
ちなみに指輪はしっかり受け取った。(金になるし)




