いじわるルナちゃん
この店で雇われてから、1週間が経った。毎日午前6時に起きて開店準備。さらにそこから午後8時まで働く。そのまま料理の特訓を11時までして就寝。それで僕は感じていた……楽すぎる! 僕のもともとの職場なんて1日1人は絶対死ぬし、睡眠時間は3時間な上ぶっ通しで動き続ける。それをしてやっと月収銀貨5枚。それに比べてここは死ぬこともなければ、休憩だって多いのにそれで、月収金貨20枚も支払われる。
「おはようございます」
「おう。今日も早いんだな」
僕はいつも早めにきて開店準備を先に進めている。そのおかげか、最初は不評を買っていた僕だったが、今では段々と話しかけてくるようにまでなった。店長との関係は仕事をする上でとても重要だ。
早く準備が終われば、早く開店する。それがうちの店だ。ただその前に、朝ごはんの時間だ。店長はこの店の名物、ナザルガフをてんこ盛りに盛り付けた皿を僕の前に雑に置く。
「ほら」
僕はこの店長のところで住み込みで働いて、朝昼晩の食べ物も支給されるのだ。そして僕は思ってしまった。やり直すとか、もうどうでも良くね? この生活以上を望む意味がないのだ。僕にとっては今の状況ですら夢物語のようで、これ以上の高望みができない。
「はむはむ」
僕はナザルガフを急いで口に放り込み、咀嚼する。すると店長はうれしそうに笑って、僕の肩をトントンと叩いた。
「そう急がなくたって、誰にも取られやしねーさ」
普通ならこれでシーンが切り替わるだろう。でもね、違う違うんですよ。この店には妖怪食いしん坊が出るんですよ。
店長が調理場に戻るや否や、サササと妖怪が姿を現す。
「うへへ、今日もご飯はもらっちゃうよぉ。新入りくん」
妖怪はパワハラ上司のように僕の首に手を回し、そのまま皿を奪っていく。現れたのは、妖怪食いしん坊。またの名をルナと言う。そう、あいつだ。店長の娘さんだ。
「へい……」
こいつは隙あらば僕に構ってきて、何かを奪ったりまるで小学生みたいな意地悪をしてくるのだ。まあ前の職場では意地悪のレベルが違ったから、こんなことは気にも止まらないのだがな。まあそんなことで朝ごはんはいつも食べられている。
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私は出会ってしまった、運命の相手に。
初めて見た瞬間、まるで心臓を掴まれたような感覚に陥った。心臓のドクドクと早くなって、目が離せなくなる。それからというもの、仲良くしたいのに私はずっと意地悪してしまう。私は多分、静かなタイプじゃないし人と話すことに緊張もしない。だからこそ自分でもわからない。
「おりゃ」
「ふぇッ!」
私が彼の横腹にグッと指を差し込むと、彼は間抜けな声を上げて尻餅をつく。私はからかうように笑って見せて、そのまま口が勝手に動いてしまう。
「えへへっ、間抜けな声〜」
「もう、やめてくださいよ。ルナさん」
彼は落ち着いた様子で、呆れたように立ち上がる。彼に名前を呼ばれるたび、心臓がうるさくなる。なのに口に出すのは悪口ばっかり。
……絶対嫌われてる。
「今日も夜まで料理練習だからねっ!」
「はーい」
彼は私なんかよりずっと大人なんだ。落ち着いていて、優しくてかっこよくて……。私がちょっかいをかけたって、怒ることもせず相手をしてくれる。
私もいつかもし素直になれたなら、この気持ちを彼に伝えたい。




