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(第六篇)蘇州暮色
夕刻すぎ、蘇州のマクドナルドの二階に客はまばらだった。窓際の席から見下ろすだだっ広い街路に人や車の流れは、繁くというほどではないにしてもまだそれなりにあった。けれどおおかたの商店はすでに店仕舞いをしていて、節電のためなのか窓明かりは少なく、舗道沿いのあたりは薄暗かった。街灯の照度も低めの設定のようで、歩道の人影も薄く見えた。
ここマクドナルドのほぼ真向かいには小規模のデパートのビルが建っていた。閉店してほどないはずだが、すでに窓明かりは一階に一つ、六階に三つといったふうだった。そのビルの屋上から窓二つ分を覆うくらいの横幅の幕が、三階分にも達するほどに垂れ下がっていた。その幕には、欧米人らしき女の顔が全面にプリントされていた。おそらく化粧品の類の広告なのだろうが、宵闇にまぶされたそれが、何のためのものとは判別できなかった。画面の端のどこかにも、口紅か何かのメーキャップの小物、あるいは文字が配置されていないか、と目を凝らしたが、夜目には見て取れなかった。女は面長で、化粧映えのする大きな眼をしている。そして髪は、若い女達がベリーショートと呼びならわす短髪で、色はブロンド──それくらいの色と形は夜陰の内にも見分けられた。




