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不老の魔女と名無しの旅人  作者: きりくま
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旅の目的


 一夜明け、王の前に4人はいた。

 昨夜よりは落ち着いた表情の王だったが、依然その顔は険しい。

 しかし、そんな彼と同様にティルティーラとボンボルドンドも険しい表情を浮かべている。

 何かあったのか?と、王は不審に思う・・・が、まぁいい。

 あの2人が思い直してくれている事を信じ、尋ねる。


 「さて・・・昨日は色々あったが、単刀直入に聞こう。ティル、お前の考えは変わったか?」


 一歩前に出て、彼女は答える


 「いえ、変わっておりません。むしろ逆ですの。私は例えお父様が反対されても・・・フロウさんについて行きますですの」

 

 ・・・だろうな。

 僅かな可能性に賭けてはみたが、想定通りの答え。

 娘の性格は誰よりも理解している。

 一度言い出したら聞く耳など持つはずも無い。

 普段なら可愛い娘の頼みなら泣く泣く許可する所だが・・・事今回に関しては事情が違う。

 これは単なる我儘では済まされない。

 各国の・・・いや、世界の理だ。

 ドワーフが率先してそれを破る事だけは決して許されない。

 だが・・・何だ?

 ティルティーラの目つきが昨日とは明らかに違う。

 これは今まで見た事が無いぞ?

 たった一日で娘を言いくるめたのか?

 何故そこまで固執する?

 彼女は大罪人だぞ?

 確かに救われた恩はある。

 しかし・・・それだけで世界を敵に回す気か?

 ただの友の為に・・・?

 呆然とする王の前に立ち―――ティルティーラとボンボルドンドは昨夜の言葉を思い出す。




 『これは簡単に言えば、私の時間を止める魔構式。だから私はあの頃のままだ。年も取らなければ、魔力も増えない。つまり、この魔構式を解除するという事は私の時間を返してもらう事さ』

 『時間を・・・?』


 簡単に言うが・・・そんな事がありえるのか?

 時間を止める?

 個人の?

 そんな魔法が存在するのか?


 『まぁ、私に対して・・・と言うか、魔女に対してはこれ程までに有効な対処法は無い。時間と共に魔力が増え続ける魔女でも、それを止められてしまってはどうしようもないからね』

 

 それはそうだろうが・・・

 

 『フロウさん、質問があります』

 『あぁ、いいよ』

 『時間が戻ったら・・・どうするつもりですか?』


 ボンボルドンドの質問に、フロウは軽く鼻を鳴らす。


 『どうもこうも・・・別にどうもしないよ?あぁ・・・安心してくれ。別に私にこんな魔法をかけた連中をどうこうしようなんて考えてもいない。そもそも、生きてるのは『太陽』とエルフのオババ位だろう?だったらどうでもいいや。もしも私が復讐をするのなら、全員にしなければ気がすまないからね。死に逃げされて生きている者にだけ裁きをなんて・・・不公平だろう?』

 『だったら何故?』

 

 彼女は困った様に頭を掻く。


 『何故も何も・・・私は自分が奪われた物を取り返そうとしているだけさ。他に理由がいるのかい?』

 『・・・本当ですか?』

 『この場で君達に嘘をついて私に何の得が・・・まぁ、それなりにはあるね。けど、こればかりは信じてもらう他ないね』


 嘘を言っているようには見えないが・・・


 『もう一ついいですか?』

 『胸のサイズか『違います。・・・何故、ナナシさんと共に旅を?特別な理由があるのでしょうか?』

 『あるよ』

 

 彼女はハッキリと断言する。


 『皆も知っての通りナナシ君は『処刑人形』だ。だがそんな事は些細な問題だ。私は彼の記憶を探す度に同行すると約束した。だから旅をする』

 『たったそれだ『というのは建前だ。まぁ、6割はその通りなんだがね。もう3割は彼を私の元に送り出した者・・・『太陽』の魔女に聞きたい事があるからだ』

 『『太陽』の魔女に?』

 『そうだ。先に言っておくが、先の言葉に偽りはない。私は復讐の為に会いに行く訳では無いよ?ただ・・・それとは関係なく、私の命を狙ったのなら話は別だ。それなりの対応はさせてもらうつもりさ』


 冷たい彼女の視線に背筋が凍る。


 『6割と3割・・・残りの1割は?』

 『保険だよ』

 『保険?』


 どういう意味だ?と、ここで『黒砂』が口を開く。


 『ティルちゃんとオーク君?星ちゃんがその魔構式を解除したら・・・どうなると思う?』

 

 2人は首をかしげた。

 どうなるって・・・時間が戻るのではないのか?

 『黒砂』は小さく頷く。


 『そやね。けどな・・・それは2人が思ってるんとちゃうねん。恐らくやけど・・・止まった時間から解除した瞬間までの時間が一気に流れる。そうなると・・・どうなる?』

 『どうって・・・?』

 『・・・魔女は年月で魔力が上がる。けどな?それは時間をかけて上がるんやで?それが一気に来たら・・・身体が魔力に耐えられると思うか?』

 

 ここでようやく理解した。

 いや・・・だが・・・


 『で、ですけど・・・それがナナシ様と一緒に旅する理由と何の関係が・・・』

 『せやから・・・保険やろ?もしも自分が生き残った時・・・殺してくれる相手が傍におってほしいって事や』


 2人の視線はフロウに向けられる。


 『貴方・・・最初から死ぬ気ですの!?』

 『フロウさん・・・それは本当なんですか!?』


 2人の質問に―――フロウは薄い笑みを浮かべる。


 『そうだよ。ナナシ君には面倒をかけるが・・・理解してくれるだろう。私は生きてはいけない存在だ。本当はあそこで永遠に生き続けるつもりだったが、何故急に殺しに来たのかを知らなければ死ねない。時間を戻して魔力で身体が砕けても・・・私が殺めた人達への贖罪になりはしない事など分かってる。だが・・・自分の死に場所位は自分で決めるさ』

 『じゃあ・・・貴方の旅は・・・』

 『私の旅は―――真実と死を追い求める旅だよ?この旅の結末を見届けてくれるね?』


 静寂が流れる部屋の中。

 グラスの氷が―――僅かに動き、寂しげな音が鳴る。

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