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不老の魔女と名無しの旅人  作者: きりくま
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別れる道


 「・・・本気なのか?」


 王の質問に、ティルティーラは頷く。


 「はいですの。確かに最初はドワーフ為や恩義を感じての決断だった事は事実ですの。だけど、今は違いますですの。フロウさんの話を聞き・・・痛感しましたですの」

 「何を?」

 「私が無知だった事ですの。この世界の事を何も知らないですの。確かにこれは私が知る必要の無い事だったかもしれないけれど、知るチャンスが目の前に訪れましたですの。それをただ見逃すなど・・・私にはできませんですの」

 「何の話を聞いた?」

 「それは言えません。ただ、私にとっても放置する事の出来ない事ですの」


 低く唸り、ティルティーラを見つめる。

 その目は覚悟を決めており、これ以上説得しても無意味だという事は分かっている。

 それでもたった一人の娘を・・・

 苦悩する王だったが、王妃がその腕を掴む。

 彼女は言葉すら出さなかったが、言いたい事は理解できる。

 

 「・・・アズ、『不老』の魔女は信頼するに値するか?」

 「もちろんや。出来ひんかったら、ウチが命賭けるわけないやろ?」


 その言葉を聞き―――覚悟を決める。


 「・・・分かった。同行を許可する。ただし、俺の条件は変わらない。他の種族の長達が同意しない限り、俺は魔構式の解除はしない。それでいいな?」

 「・・・感謝いたします」

 「出発はいつだ?」

 「はい。今朝方、仲間が目を覚ましましたから・・・明日の朝には発とうかと思います」


 全員が深々と頭を下げる中、王は広間にいる全員に指示を出す。

 

 「皆、話は聞いたな!客人達は明日旅にでる!ドワーフ流の最高のもてなしと宴の準備だ!我が娘も同行する!盛大に送り出すぞ!!」


 返事を返し、ドワーフ達は慌ただしく動き出す。


 「お父様・・・ありがとうございますですの」

 「礼はいい。ただし、ティル・・・これはお前が決めた事だ。途中で投げ出す事は許さんぞ?最後までやり通せ。いいな?」

 「・・・はいですの!」

 「・・・よし、だったら急いで旅の支度だ!お前も手伝ってやってくれないか?」


 王妃は頷き、ティルティーラと共に広間を後にする。


 「ドワーフの王。私も所用がありますので・・・失礼します」


 ボンボルドンドも一礼し、その場を後にする。

 広間に残ったのは王とフロウ、『黒砂』の3人。

 暫しの沈黙が続き―――王が先に口を開く。

 

 「ティルにはどんな話を?」

 「すみません。それは言えません」

 

 そうか。と、王は肩をすくめる。

 

 「正直・・・俺はお前さんを完全に信用していない」

 「知っています」

 「俺が信用したのは娘とアズだ。2人がここまでお前さんの為に動いたんだ・・・2人の信用を裏切る事だけはしてくれるなよ?」

 「重々承知しています」

 「ならいい」


 再び重苦しい空気が流れる。

 堪らず『黒砂』がフロウを連れて動き出す・・・が、王が再び口を開く。


 「お前を信用してはいないと言ったが・・・感謝はしている。責務を負った者としてではなく、ドワーフの王として・・・あの子の父として・・・だ。娘の事を・・・よろしく頼む」

 「・・・この命に代えてもお守りすると約束します」


 2人が去った広間。

 王は満足気な笑みを浮かべ・・・立ち上がる。




 「それじゃあ・・・ティルティーラも一緒に旅をするのか?」

 「はい、正解。・・・うん、脳に異常は無さそうだね。さっき伝えた事はちゃんと覚えている」


 ベットの上で呆けるナナシの額に手を置き、何度か頷く。


 「体調はどうだい?」

 「大分いいけど・・・身体は重いな」

 「そりゃずっと寝てたからねぇ。当然と言えば当然さ。何があったか覚えてる?」

 「・・・いや、あまり覚えてない」

 「あまり・・・ねぇ?まぁいいさ。私としても君が目を覚ましてれてほっとしてる。何か食べるかい?」


 返事を返す間もなく、彼女は果実を剥き始める。


 「『狂乱』の魔女は・・・」

 「『赤矛』か・・・いや、『赤矛』が殺したんだろうね。あっ!そうだ!ナナシ君?前にも言ったが、魔女と単独で戦うなんて無謀な事は止めたまえ。今回はたまたま運よく生き延びたけど、あんな無謀な事してたら命が幾つあっても足りやしないよ?」

 「それは・・・悪かっ―――」


 謝罪するナナシの口に果物を突っ込み、フロウは微笑む。


 「謝罪は無しだ。君の無謀で救われた命もある。次に同じ事があってもどうせ戦うんだろう?」


 バツが悪そうに口を動かす彼に彼女は頷く。


 「別にそれでも構わない。ただ・・・死なないでくれたまえ。君が死んだら・・・私は悲しいよ」

 「・・・わかったよ」

 「うん、いい子だね。さっ、そろそろ行こうか。君は眠っていて宴には参加できていなかっただろう?明日からはまた草だけの旅になるかもしれない。今の内に美味しい料理を詰め込んでおこう」


 わかったよ。と、重い身体を起こし―――2人は部屋を後にする。



 

 翌朝。

 

 「え?ボンボルドンドは一緒に来ないのか?」 

 「えぇ。申し訳ありませんが、私は個人的に調べたい事がありまして」


 王や王妃、ドワーフ達に挨拶をするティルティーラ。

 フロウとパルシィは『黒砂』と談笑。

 残念そうなナナシに彼は1通の手紙を差し出す。

 

 「これは?」

 「皆さんがオーク領で困った時に開けてください。助けになるかは分かりませんが・・・」

 「あぁ・・・ありがとう。そうならない事を願うけど・・・」

 

 ボンボルドンドは軽く笑みを浮かべ、歩き出す。

 その背中を眺めていると・・・背後からフロウの声。


 「なぁに、彼とはまたいずれどこかで会えるさ。さぁ、ナナシ君。私達も行こう」


 ドワーフ達に手を振り―――一行は歩き出す。

 次の目的地はオークの国、ンジト王国。

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