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不老の魔女と名無しの旅人  作者: きりくま
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不老の魔女の魔構式


 「しっかしまぁ・・・君も随分と無茶な事をしたもんだね」


 部屋に戻ったフロウは呆れた様な・・・しかし、どこか嬉しそうな表情で酒を仰ぐ。


 「無茶も何も・・・私の言葉をお忘れですの?私は本気で貴方を見定めたいだけですの」

 「見定めるって・・・何を?私は特別何かをしでかそうという訳では無いよ?」

 「しでかそうとしているでは無いですの!だって貴方は・・・その・・・各国から罪人扱いされてるんでしょう?そんな貴方の話を誰が真面に聞くというんですの!?そもそも何で「はいはい、ティルちゃんストップ、ストップ。少し落ち着きーや。そないに質問ばっかせんの。王様と同じ事してるで・・・な?」

 「アズ・・・!貴方も貴方ですの!何で彼女の正体を私に伏せていたんですの!?」

 「ほんまに王様そっくりやな・・・だって聞かへんかったやろ?」


 仲裁に入った『黒砂』と問答をしている横で、ボンボルドンドが代わりに尋ねる。


 「しかし、ティルティーラ王女の言う事も尤もです。フロウさん、貴方一人では恐らく各国の王達を説得することは難しいでしょう」

 「それはそうだろうね。全てが上手くいくなんて微塵も思っちゃいない」

 「だからドワーフ達に手を貸し、恩を売った・・・と?」

 

 フロウは視線を窓に移し、夜空を見上げる。


 「信じる信じないは別として・・・これに関してはただの成り行きだよ。いや・・・正確には、助ける気はなかったといった方がいい」

 「何故です?」

 「ははっ、だってそうじゃない?助けたところで私に何のメリットがあるのかな?」

 「・・・実際、恩は売れましたよ?」


 フロウは鼻を鳴らし、酒を仰ぐ。


 「別に助けるのはドワーフ全体じゃなくてもいい。王が捕まっていると分かった時点で、単独で助けだせばいいと思わないかい?むしろ・・・その方がよかった。囚われの身でドワーフが危機的状況、娘は行方不明、敵方には魔女。この絶望的な状況で私が単身現れてさっきと同じ条件を出したら・・・飲んだ可能性の方が高い。人質がいなければ黒ちゃんが『狂乱』程度なら倒してくれるだろうしね。まぁ・・・『赤矛』が現れた事だけが懸念点だったが・・・その辺りは私が上手くやってたかもね」

 「ならばどうして・・・そうしなかったのですか?」


 机にグラスを置き・・・彼女は薄く笑う。


 「どうしてって・・・決まっているだろう?黒ちゃんとの約束もあるが、何よりもナナシ君が『ドワーフを助けたい』と決めたからさ」

 「それだけ・・・ですか?」

 「あぁ、それだけさ。放っておいたら彼・・・一人でも戦いに行くだろうて」


 呆れつつも嬉しそうなその表情に、ボンボルドンドは困惑した。

 たったそれだけで・・・?

 自分の目的が叶わないかもしれないのに?

 

 「何故そこまで・・・ナナシさんに拘るのですか?」

 「友人だから。この答えでは不満かい?」


 これ以上の質問は不要と判断し、話を変える。


 「フロウさん。もしよろしければ、その背中の魔構式・・・もう一度見せてもらっても?」

 「おや?気になるのかい?」

 「はい」

 「別に構わないが・・・それだけでいいのかい?ボンボンニード君はいい子だからね。特別に前を見せても「結構です。それと、ボンボルドンドです」


 わかったよ。と、彼女は手招きをする。

 指示に従い向かうと彼女は服を脱ぎ、髪を上げる。

 月明りに照らされる柔肌に描かれている魔構式をじっと見つめる。

 ・・・これは何だ?

 まるで理解できない。

 数々の書物を読み漁り、多少なりとも知識には自信があったが・・・

 拘束系の魔構式・・・いや、違うな。

 彼女は幽閉されていた地から抜け出している。

 力を奪う・・・も、違うか。

 魔力コントロールは凄まじいが、魔力量は年相応。

 駄目だ・・・分からない。

 気が付くと言い争いをしていた2人も魔構式を眺めていた。


 「流石にそんなにじろじろ見られると照れるんだが・・・何か分かったかい?」

 「・・・いえ、すみません。お恥かしながら何も・・・」

 「当然の答えだよ。何も恥じる事は無い」

 

 服を着た彼女は軽く伸びをする。


 「その魔構式を解除したら・・・どうなるのですか?」

 「・・・知りたいのかい?」

 「はい」

 「うーん・・・答えてもいいけど、2つ程条件があるかな」


 条件?

 一体なんだ?


 「一つはこの事はナナシ君とパルシィ君には言わない事」


 あの2人に言えない事?

 すでに答えを察している『黒砂』は目を伏せ、2人は頷く。


 「王女様、君に聞きたい事がある」

 「・・・っえ?私ですの?」

 「君以外に王女はいないだろうて」


 唐突に呼ばれたティルティーラは瞬きを繰り返す。


 「私としては君が同行してくれる事に反対はしない。まぁ、ナナシ君とパルシィ君が反対しなければだが。それで・・・だ、君は私を恩人とも友人とも呼んでくれたね?」

 「え、えぇ・・・そうですの」

 「もう一つの条件は・・・君がこの話を聞いても同行を取りやめない事だ」


 ・・・どういう事だ?

 話を聞けば同行を取りやめるとでも?

 困惑したティルティーラはボンボルドンドに視線を向ける。


 「・・・すみません。私は何も力になれそうにもありません。ティルティーラ王女が決めてください。私はそれに従います」


 ・・・答えは決まっている。


 「約束しますですの。私は絶対に・・・同行しますですの」

 「・・・わかった。約束は守ってもらう。私は約束を守る魔女だ・・・破る事は許さない。それじゃあ、教えよう。これは―――」

 

 フロウの口から出た言葉に―――2人の顔色は一気に青ざめた。

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