父 対 娘連合
王の感情は滅茶苦茶だった。
甘やかして育てた我儘な娘が・・・他人の為にここまで真剣になれるとは。
その成長には喜びを感じる他ない。
だが・・・それとこれとは話が違う。
例え最愛の娘の言葉でも、こればかりは自分の独断では決められない。
これは世界が決めた答えだ。
今更になってそれを覆すなど出来ない。
仮に『星月』の魔女の言う通りにしたらどうなる?
ドワーフは裏切者とみなされ、他種族から軽蔑・・・最悪、攻撃されるぞ?
それだけは何とか避けねばならない。
「ティル・・・それとオークの友人よ。お前達の考えは分かった。・・・だが、こればかりはどうする事もできん。アズリット・・・お前はさっき言ったよな?王としてではなく自分の意思で答えろと。答えよう。俺がその魔構式を解除する事は―――無い。・・・これで満足か?」
王はハッキリと拒絶した。
『黒砂』はその表情を見て確信した。
これ以上は何を言っても無理・・・か。
彼も生半可な覚悟で出した答えじゃない。
王としての責任を果たす・・・随分と立派になったもんだ。
昔を懐かしみつつも、如何したものかと考えていると・・・ティルティーラと目が合う。
(・・・何やの?ティルちゃん?何か良い考えでもあるんか?)
彼女が何かを思いついた事は分かるが・・・一体何を?
・・・いや、考えるのは止めよう。
あの目を見れば分かる。
自分を信じてくれ。
(わかっとるよ、ティルちゃん。何を言うても、ウチはティルちゃんの味方やで)
小さく頷くと、彼女は王に視線を向ける。
「お父様のお考えはよく分かりましたですの。何よりもドワーフや世界を優先する姿勢は尊敬しますですの」
「そうか・・・わかって「ですので・・・私も決めましたですの。お父様、私は『星月』の魔女・・・いえ、フロウさん達と共に旅をしますですの」
・・・は?
その場にいる誰もが間の抜けた声を出す。
ただ一人・・・『黒砂』だけは肩を震わせ笑いを堪えている。
そうか・・・そういう事か。
だったら自分がやるべき事は・・・
「今・・・何て言った?」
「『フロウさん達と共に旅をします』と言いました」
「何故・・・そうなる?」
「お父様は仰いました。『自分の一存では決められない』と。ならば私が彼女達の旅に同行して、その行動を監視しますですの。それで納得したら各国の王達を説得して見せますですの。他の王達も納得したのなら、お父様も断る事は出来ないはずですの」
「おまっ・・・!バカな事を言うな!どうしてそうなる!?誰がそんな危険な旅を許すか!!」
王の怒りは尤もだが、ティルティーラは一歩も退かない。
「お父様がドワーフや世界の為に退かない様に、私も恩人の為ならば退きはしませんですの!」
毅然とした態度の彼女に口を噤んでいると・・・『黒砂』の声。
「ええんとちゃう?可愛い子には旅させろって言葉もあるやろ?ティルちゃんもええ歳やし、あんただって昔は旅に出てたやん。『ドワーフの王族たるもの世界を見て回れ』やっけ?」
「あれは王位を継ぐ為の旅だ!ティルにはまだ早い!」
「どうせティルちゃんがあんたの後継ぐんやろ・・・早いも遅いもないんちゃう?ドワーフだけで旅するよりも、他種族と旅してた方が知見も広がると思うで?それに、忘れてへんか?あの処刑人形のお兄さんが持っとんの・・・ドワーフの宝やろ?あれの手入れもティルちゃんならできるやん。それとも何かい?恩人の剣の手入れもせぇへん位、心狭なったんか?まぁ・・・あんたがこれから子供こさえる気があるなら別やけど・・・流石に年ちゃう?」
「だが・・・!ティルにもしもの事があったらどうする!?助けてもらってあまりこういう事は言いたくないが、俺は『星月』の魔女を完全に信用してはいない。仲間には処刑人形も亜人種もいる。そんな中に可愛い娘を同行させるなど・・・!」
先程まで笑っていた『黒砂』の表情が変わる。
「もしもの事があった時は―――ウチを殺し。それで責任が取れるとも思えへんけど・・・憂さ晴らし位にゃなるやろ?」
「・・・何を言ってる?」
「当然やろ?旅を進めたんはウチや、責任はウチにある。あんたにゃ勝てんけど、ウチだってティルちゃんの事は大事な友達や思っとる。星ちゃんもや。だから、星ちゃんにはウチの命を預けたる。そん位の覚悟も無しに、こんな勝手言えるかいな」
王は激しく動揺した。
何でこんな事に・・・
これはどういう状況だ・・・
どうすればいい・・・
どうにかこの場を収めようと考えていると、これまで黙っていたフロウが尋ねる。
「色々と盛り上がっている所恐縮なんだが・・・当人の私の意思は置いてけぼりかい?」
「・・・『星月』、これからの予定は?」
王の言葉に、フロウは暫し考え答える。
「・・・まずはこのままオークの国へ行きます。その後でエルフの国。一度王国領に戻り、公爵領の亜人種の集落へ。最後は帝国に。・・・こんな感じです」
なるほど。と、王は暫し考える。
「・・・少し考えさせてくれ。明日、もう一度話し合おう。全員・・・頭を冷やす時間が必要だ」
それだけを言い残し・・・王は広間を後にする。
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