また会うその時まで:4-3
「まあ、ケガしない程度にやるこったな」
「待っててね、おじいさん。わたしがここをあったかい町にしてあげるからっ」
にこにことそう言うミア。
店主は彼女を一瞥するだけで、言葉を返そうとはしなかった。
ただ、その横顔は笑みを隠せていなかった。
食事を終えたミアとエリオは再び雪の降る外に出て町長の屋敷を目指した。
町の奥にある、大きな屋敷。
玄関のノッカーを鳴らすと使用人が現れて要件を尋ねてきた。
エリオが名前を告げると、使用人は「聖女さまとその従者さんでございますね」と合点し、二人を仲に招き入れた。
そして暖炉で暖まった部屋で町長と面会した。
「お待ちしていました、聖女さま。どうかフラワーヴェールを救ってください」
年老いた町長は神に救いを求めるようにミアの手を取った。
一緒にいる町長夫人も祈るように手を合わせている。
成人を迎えているであろう息子もミアに救済を求めるまなざしで見ている。
「わたしが必ず雪をはらしてみせますっ」
ミアは元気いっぱいうなずいて、町長一家に応えてみせた。
郊外にある神殿に町長とやってくる。
灰色の神殿は長い年月を経て古びており、ステンドグラスもくすんでいた。
入口の扉は固く閉ざされている。
町長が扉にカギを差し込む。
がちゃり。
カギの開く音がする。
今度は町長の息子が腰を深くして扉を押す。
古びた扉を開けるには一苦労するらしい。
エリオも手伝う。
ギィギィと軋む耳障りな音がする。
男二人がかりで扉を開けた。
神殿の中はさまざまな調度品で飾られていた。
年に一度、祭日にだけ神殿の扉を開け、クリスタルに祈りを捧げるのだという。
しかし、どれだけ祈りを捧げようとクリスタルが輝きを取り戻すことはなかった。
それも当然。
クリスタルが光を失っているのは信仰が足りないからではなく、根本的にマナが枯渇しているからだ。
旧時代的な儀式はフラワーヴェールに住む人のなぐさめにしかならない。
「どうぞこちらへ」
クリスタルは他の神殿と同じく、神殿の最奥に鎮座していた。
光を失い、くすんだクリスタル。
ミアがクリスタルに触れようと手を伸ばす。
「ミアさま!」
「えっ?」
エリオが大きな声を出して、ミアは驚いて彼のほうを振り返った。
「ど、どうしたの? エリオ」
「それに触れればあなたは……」
もう引き返すことができなくなる。
そう言いたかった。
「聖女さま。まさか今、クリスタルをよみがえらせようと?」
どうしてか動揺している町長。
「そうだけど? ダメだった?」
「いけません!」
町長が首を横に振る。
「大事な儀式なのですから、それ相応の準備をしませんと」




