課せられた使命:3-7
モーングレイヴの町で防寒具を調達した後、ミアとエリオは次の場所へと発った。
目指すははるか南。
極寒の地にあるフラワーヴェールの町。
汽笛が鳴り、列車がゆっくりと動きだす。
徐々に加速していき、車窓に映る景色の流れが速まっていく。
緑まぶしい草原。
太陽を乱反射させる湖。
そんな景色を楽しめたのも束の間、モーングレイヴの町を離れてしばらくすると、むき出しの赤褐色の大地が広がる不毛な風景に変わった。
この景色が世界の大半。
聖女たちがどれだけクリスタルにマナを注ごうと、根本的に世界を救ったことにはならない。
「いつか世界全部が緑でいっぱいになるといいね」
「……そうですね」
ミアとエリオの列車での長い旅が始まった。
車窓に映る景色のほとんどは乾いた大地だったが、ときおり緑豊かな土地を通過することもあった。
どこかの聖女がクリスタルにマナを注いだのだ。
その聖女は今頃どうしているだろうか、とエリオは思いをはせる。
まだ旅を続けているのか。
あるいはすでに力を使い果たして……。
「エリオ。この料理おいしいよっ」
列車は毎日、整備と燃料の補給のために一晩駅で停車する。
乗客たちはそこでいったん下車し、町の宿で宿泊する。
二人も宿屋で部屋を借りた後、食事をとりに酒場を訪れたのだった。
酒場は仕事を終えた町の男たちで賑わっている。
いずれも屈強な肉体。近くの鉱山で働く炭鉱夫だと一目でわかった。
そんな彼らに混じってミアとエリオは夕食を食べていた。
「エリオも食べてみて。はい、あーん」
ミアがテーブルに手をついて身を乗り出し、フォークに刺した鶏肉を差し出してくる。
エリオは頬を染めてきょろきょろと周囲をうかがう。
「あ、あの、お皿に置いてください……」
「いいじゃない。『あーん』して。めーれーよ」
「め、命令ですか!?」
「そっ。聖女さまのめーれー。従者は従わなくちゃいけないのよ。こういうときこそ使わなくちゃ」
「わ、わかりました……」
エリオは高潔なる聖女さまの『めーれー』に従って『あーん』した。
口の中に鶏肉が入る。
口を閉じて歯で鶏肉を噛むと、ミアはフォークを引いた。
もぐもぐもぐ……。
鶏肉を噛む。
噛み応えのある食感。
ハーブの味付けがとてもおいしい。
中までしっかり火の通った弾力のある肉と、パリパリに焼かれた皮がたまらない。
肉体労働に勤しむ男たちが好む味だ。
「おいしいです」
「でしょ?」
少々行儀が悪いのではないか、とエリオは思ったが、気にしないことにした。




