課せられた使命:3-6
なにも、この小さな命が尽き果てるまで使命に従わなくたっていいではないか。
枝が尽きるまで聖女にマナを注がせる理由はもちろんエリオも知っている。
国を滅ぼすほどの力を持つ聖女をていよく始末するためだ。
世界の再生は、実のところ口実にすぎない。
聖女を処分するための。
だから王国は絶対に使命をまっとうさせようとしているのだ。
「ミアさま」
エリオが手を差し伸べる。
「エリオ」
ミアはか細い手を伸ばし、彼の手に触れる。
「わたしを次の場所に連れていって」
その答えを聞いてエリオは確信した。
ミアも気付いているのだ。
この旅は、自分の命を失わせるための旅だと。
自分は救世主などではない。
疎まれている存在だと。
「エリオ、痛いよ」
「す、すみません……」
知らないうちにミアの手を強く握ってしまっていた。
エリオは慌てて手を放す。
「ねえ、次はどこに行くの?」
「……次は」
エリオは勅命が書かれた書状を開く。
そこには枯渇しかけているクリスタルのある町が記されている。
「あと一回しかマナを注げないから、全部は回れないね」
ミアがエリオの肩越しに書状を覗いてくる。
本来なら書かれているすべての町をめぐるはずだったが、今回の件で聖印の枝を二つも消耗してしまった。
「あっ、わたしここがいい!」
ミアが指さす。
フラワーヴェール。
ここよりはるか南に位置する町。
「わたし、一度雪を見てみたかったの」
フラワーヴェールがある地方は一年中雪が降っている。
かつては温暖な気候だったが、クリスタルからマナが失われだして以降、雪に閉ざされてしまったのだという。
暖かそうな町の名前はその名残だ。
ミアがフラワーヴェールを選んでくれてエリオは少し安心した。
残された町の中で、フラワーヴェールはここから最も遠い。
列車を使っても一か月はかかる。
それを知っているからあえてミアはそこを選んだのだろうか。
だとすると、彼女も本心では自分の命が尽きるのを怖がっている。
彼女を説得する余地はある。
「では、次はフラワーヴェールに行きましょう」
「やったあっ」
ミアがベッドの上で飛び跳ねる。
「フラワーヴェールについたら雪合戦しようね」
「わかりました」
「あっ、雪だるまもつくらなくちゃ」
「そうですね」
「エリオも手伝ってよね」
「もちろんです」
むじゃきにはしゃぐミア。
エリオは思わずくすりと笑みをこぼしてしまう。
その瞬間だけ、やがてくる永遠の離別を忘れられた。
「フラワーヴェールはとても寒いです。あらかじめ防寒具を用意したほうがよさそうですね」




