課せられた使命:3-5
「聖女が役目を果たさなかったら、家族がひどい目にあうって」
聖女は命を消費してクリスタルをよみがえらせる見返りとして、富と名誉が与えられる。
逆に使命から逃げ出せば、その両者は剥奪される。
それどころではない。一族は一生侮蔑の対象となる。
「エリオだってそうなるんだよね?」
「……僕のことはどうでもいいです」
「よくないよ」
聖女の従者もそうだ。
従者としての役目を果たせば最上の名誉を得られるが、果たせなかった場合は一族もろとも不名誉が与えられる。
「わたし、エリオが大好きだもん」
「……」
うれしい言葉のはずが、エリオの胸をきつく締めつける。
聖女の従者には二つの役目がある。
一つは、旅をする聖女の守護。
もう一つは、聖女の見張り。
マナを宿した聖女は、その力の使い道を誤れば一国を滅ぼすのもたやすい。
そうさせぬために従者がいる。
つまり、ミアが使命を放棄した場合、エリオは彼女を殺さなくてはならないのだ。
エリオはそのことをミアには教えなかったはず。
だが、ミアは気付いていた。従者が己にあてがわれた本当の理由を。
「哀れだな」
アルタイルが言う。
あざけるわけではなく、小さな少女に負わされた使命を嘆いて。
モーングレイヴの町に帰ってきた。
町を挙げて宴が開かれ、主賓のミアとエリオは文字通り救世主として称えられた。
歌と踊りが披露され、豪勢な料理が振舞われた。
ミアは終始ごきげんで、目をきらきらさせながら歌と踊りを楽しみ、その小さな身体のどこに入るというのかというくらいごちそうを食べた。
エリオのためにそんなふうに演じていた。
宴が終わり、人々が寝静まる時刻。
ミアとエリオは同じ部屋にいた。
エリオはイスに、ミアはベッドに腰かけている。
「楽しかったね」
エリオは返事をしない。
「みんなの笑顔を見るたびにわたし、聖女になれてよかったって思うんだ」
「それで、自分の命が失われてもですか?」
「……」
今度はミアが黙る。
笑みを浮かべているものの、それが心からの笑顔ではないのはエリオにもわかっていた。
「エリオ。今夜はいっしょに寝て」
話をそらしてくる。
男女としての密な交わりを求めているわけではない。
子供が親にすがっているだけだ。
ミアが自分の隣をぽんぽんと叩く。
ここに座れと言っているらしい。
エリオはイスから立ち、ミアの隣に座った。
こうして並ぶとミアの小ささが際立つ。
彼女の頭は自分の肩に届く程度。
本当に小さな少女だ。
手折れば枯れる道端の花。
そんな少女は今日まで命を捧げてきた。




