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枯れゆく世界と旅立つ少女  作者: 帆立
課せられた使命
17/31

課せられた使命:3-3

 いや、余計な考えはよそう。

 エリオはミアと共に神殿の入り口に足を踏み入れた。


 数百年間、誰も足を踏み入れられなかった神殿。

 薄暗い。

 崩落した天井から差し込む太陽の光が唯一の光源。


 神殿内は経年によってあちこち崩れており、廃墟と化していた。

 クリスタルはその最奥に無言でたたずんでいた。


 六角形の巨大なクリスタル。

 本来は澄んだ透明であるはずのそれは、墨を流し込んだかのように黒ずんでいる。

 大地にマナを供給する力を失っているのは明らかだった。


 しかも、このクリスタルは今まで見たものよりもかなり濁っている。

 もはやマナは一滴たりとも残っていないのだろう。

 ミアは無言のままクリスタルを見上げていた。


 聖女とはいえ、こんな小さな少女がマナを満たせるのだろうか。

 不安をおぼえるエリオ。

 ミアの表情も同様だった。


 しばらくの沈黙の後、ミアは一歩前に出た。

 そして、聖印を宿した手でクリスタルの表面に手を触れた。


「エリオ。わたし、やるね」

「……はい」


 よぎるさまざまな感情を振り払い、エリオはうなずいた。


 クリスタルに振れたミアが目を閉じる。

 すると、彼女の輪郭に青い光が浮かびだした。

 可視化されたマナ。


 青い光は彼女の手を伝ってクリスタルに流れ込んでいく。

 人々はその光景を奇跡と呼ぶが、エリオにはクリスタルがミアの命を喰らっているように見えた。

 クリスタルは貪欲にミアからマナを吸っていく。


 クリスタルの黒い淀みが徐々に失われていく。

 ミアは苦しげな表情をしている。

 足をふらつかせたのを見た瞬間、エリオは彼女を抱いて身体を支えた。


「ミアさま。いったん休みましょう」


 エリオは異変を感じ取っていた。

 これまではもうとっくにクリスタルは輝きを取り戻していたのに、このクリスタルは未だに光を完全には取り戻していなかった。

 これ以上はミアの身体が持たない。


「まだ……。まだだよ。わたし、まだいけるよ」


 ミアはやめようとしなかった。

 強がりの笑みを見せて再び集中する。

 ミアの顔色は悪い。


 無理矢理にでもクリスタルから引きはがすべきか。

 エリオは迷う。

 そうしている間にもマナはミアからクリスタルに流れ込んでいく。


 クリスタルの内部に漂う淀みが失われていく。

 それと同時に光が宿っていく。

 薄暗い神殿はすでにクリスタルの光に染められていた。


 そしていよいよ目もくらむほど光が強くなる。

 クリスタルがよみがえる。

 光が爆発する瞬間、エリオはミアをクリスタルから引きはがした。


 すさまじい光がクリスタルから発せられる。

 爆発した光は神殿の内部を瞬時にして白に染めた。

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