竜とクリスタル:2-4
「立ち去れ。さもなくばその身は業火に焼き尽くされて灰となろう」
アルタイルが警告する。
ミアが無言でエリオのほうを見る。
彼はかぶりを振って答えた。
そういうわけでミアとエリオたちはクリスタルの復活をあきらめて山を下りたのだった。
町長の屋敷に戻ってくる。
町長が心底心苦しそうに謝罪を述べる。
「なんと言いますか……。本当に申し訳ありません」
「まさかクリスタルを竜に横取りされていただなんて思いませんでした」
「このことを王国に知られればどんな罰を受けるかおそろしく、代々秘密にしてきたのです」
竜にクリスタルを奪われた事実は数百年間、秘密にされてきたのだった。
「聖女さまとその従者さま。無理なお願いなのは承知ですが、どうかアルタイルからクリスタルを取り戻していただけないでしょうか」
しかし、ミアもエリオも黙ったまま。
エリオは無理だと内心思っていた。
竜からクリスタルを取り戻す方法なんて思いつくわけがない。
「うーん」
そのときエリオは気付いた。
うつむいているミアは困っているというよりも、考えごとをしているようだった。
するとミアが顔を上げて、思いもよらぬことを口にした。
「エリオは気付いた? アルタイルの翼が片方無かったこと」
「えっ?」
「そうだったのですか?」
エリオはまったく気づいていなかった。
町長もそうらしい反応をした。
アルタイルの姿を思い出すも、翼にまで注視していなかったから本当に翼が片方無かったのかはっきり思い描けない。
「アルタイル、たぶん空を飛べないんじゃないかな」
「だからクリスタルのある神殿から立ち去ろうにも立ち去れない、と」
だとしても、少し横に動けば神殿には入れる。
アルタイルが人間を愚かな存在だと決めつけてクリスタルを使わせないようにしているのは確かだろうとエリオは思う。
町長がよろこびながら言う。
「空を飛べないなら、遠くから弓で殺せばよいですね」
「ダ、ダメだよっ」
慌ててミアが反対する。
「じゃまをするから殺しちゃうって、それこそわたしたち『愚かな人間』だよ」
「し、しかし、聖女さま。クリスタルにマナを注がねば大地をよみがえらせられません」
町長の意見にエリオは賛成せざるを得なかった。
ミアの言葉ももっともだが、現状、クリスタルに近づくにはアルタイルを倒すしかない。
ところがミアはまた思いもよらぬ提案をした。
「アルタイルを説得するんだよ。わたしたちが『愚かな人間』じゃないっていうのを証明して」
「説得!?」
「アルタイルに信用してもらえれば、クリスタルも返してくれるよ」
竜の信頼を勝ち取る。
それはかんたんにできることではない。
1000年以上も敵対関係にある相手だ。




