竜とクリスタル:2-5
むろん、話し合いで解決するならそれに越したことはない。
だが、人間ならともかく、竜相手に話し合いなど到底通じないのは明らか。
ミアの意見は皆からすればできっこない理想論だった。
ミアはただ一人、自信ありげな表情をしている。
彼女はなにか秘策を持っているらしいのにエリオは気付いた。
だからこう尋ねた。
「アルタイルを説得する方法があるというのですか?」
「あるよ」
「本当ですか、聖女さま!」
町長たちがざわつく。
「人間が愚かじゃない証拠を見せてあげるの」
「どうやってですか?」
「アルタイルに翼をつくってあげるの」
それを聞いたエリオや町長たちはぽかんとした。
ミアの言葉が理解できなかったからだ。
翼をつくる、とはどういうことなのか。
「アルタイルはたぶん、翼が片方なくて困ってると思うの。だからわたしたちが人工の翼をつくってあげて、アルタイルに贈るの」
「そうすれば、アルタイルの信頼を勝ち取れると」
「だめかな?」
上目遣いでおずおずとするミア。
互いに目を見合わせているモーングレイヴの大人たち。
皆、困惑した面持ち。
ミアの提案はあまりにも突拍子もなく、大人たちを戸惑わせていた。
エリオも彼らと同じ心境だった。
倒すのではなく、信頼を得る。
戦いの歴史を重ねてきた竜を助けるなど、ありえない話だ。
それなら飛べないアルタイルを遠くから射殺すほうがはるかに現実的である。
エリオはどう返事をするべきか悩んだ。
「ミアさま」
「お願い、エリオ」
エリオを見つめるミアのうるんだ瞳。
その瞳に応えてあげたいとエリオは強く思った。
だから彼はこう返事をした。
「試す価値はあるかと」
「ほんと!?」
「従者さま!?」
大人たちがすっとんきょうな声を出す。
エリオは彼らにこう言った。
「お願いです。どうか僕たちに力を貸してください」
「で、ですが……」
町長たちモーングレイヴの大人たちは、どだい無理な話だと決めつけている。
とはいえ、アルタイルがクリスタルを横取りしたのはもともと自分たちのせいだという負い目も感じているようで、即座に否定の言葉を出そうとはしなかった。
「翼を片方失っているとはいえ、アルタイルは竜です。戦いとなれば少なからぬ犠牲を伴うでしょう。その前に、そうならない方法を試してみませんか」
「お願いします! わたし、誰かを傷つけてまで聖女の力を使いたくないんです!」
血塗られた手段でミアに聖女の力を行使させたくない。
アルタイルを殺せば、ミアは悲しむ。ミアを悲しませたくない。
それがエリオの本音だった。




