かくれんぼをしよう
歩いて、歩いて、日本のこの場所を包む山の景色を、ずっと眺め続けていた。足元の道は、舗装された石畳から、木の根が縫うように走る硬い土の道へと変わっていった。
それでも、前を歩くガイドさんがメガホン越しに話す言葉は、まったく理解できなかった。だから、お父さんとお母さんが指さすものをただ見ながら、この場所の美しさを作り上げた火山の山について二人が話すのを聞いていた。冷たい空気の中で、二人の声は低くて温かかった。
そのうえ二人は、富士山の周りに散らばる木や岩、洞窟の陰に隠れているという、人食いの生き物や幽霊、あるいは殺人鬼についての、奇妙な空想話にまで話を広げていった。その間ずっと、笑い声は軽くて、何の心配もなさそうだった。
ある地点にたどり着いたころには、森はここまでの道のりのどこよりもずっと密になっていて、数歩進むごとに、光が少しずつ弱くなっていった。
ガイドさんと一行が、ついに立ち止まった。ブーツが、冷たくてでこぼこした地面の上でザクザクと音を立てた。近くにいた何人かの観光客は、すでにスマホを構えて木々の連なりを撮影していて、シャッター音が二回、続けて鳴った。少し後ろにいた別のグループも、同じように足を止めていて、そこにいた小さな子供が、早く進みたそうに母親の袖を引っ張っていた。
前方を見つめた。目は、あらゆる方向に広がる暗い幹の壁をたどっていって、頭上の葉に覆われた天井から、日の光がほとんど差し込んでこないくらい密集していた。
「へえ……これが青木ヶ原、樹海って呼ばれてる森なんだ。面白いなあ」
お父さんの様子を見た。あごをさすりながら、興味津々の顔をしていた。
それからお母さんの方に目を移すと、頭を少し前に傾けて、森をもう少し近くから見つめていて、息が目の前でかすかに白く曇っていた。
「あの中に入ったら、前みたいにまた何か神秘的なことが起きるのかしらね。ハハ……」
お父さんとお母さんが、こういう場所を見るたびに毎回するように、またこんな話に戻っていくのを見ながら、ため息をついた。
でもそのとき、かすかに、誰かが僕を呼んでいるような声が聞こえた。すぐ近くのどこかから滑り込んでくる声だったけど、どこから来ているのか、正確にはわからなかった。
「おいで……いっしょに……かくれんぼ……しよう……」
その瞬間、体全体が固まった。その場に完全に凍りついた。
車の中であったときと同じように、周りの人たちを驚かせてしまうことが怖くて、口を固く閉じたままにした。見知らぬ人たちの前で変な行動をしていると思われるのは、それ以上に嫌だった。
その声がどこから来たのか考える前に、また聞こえてきた。
それは、シャーマンが耳無し悪魔を追い払う直前に起きたことと、まったく同じ感覚だと気づいた。耳の奥で膨らんでいく、あの圧迫感と同じだった。それに加えて、これから何かが起きる、自分が望むかどうかは関係なく起きてしまうという、じわじわとした確信が、お腹の底の方に低く沈んでいくのも感じた。
でもなんで、こんな日本で?
幽霊は海を渡れないはずじゃなかったの?
これは、あの巫女服の女の子と関係があるんだろうか。それとも、青木ヶ原樹海に元々ある、何かの超常現象なんだろうか。
頭の中で、何度も自分に問いかけた。なぜ周りの音がこんなにこもって聞こえるのか、ほとんど塞がれているみたいに。何かが耳の奥深くに入り込んで、はっきりとした音を通さないようにしているみたいに。周りの世界が、水の中みたいに遠く薄くなっていった。
それでも、あの一つの声だけは、はっきりと近くに聞こえ続けていた。他のすべてが遠のいていく中でも。
「かくれんぼ……楽しいよ……おいで……」
また、その声が聞こえてきた。
混乱と恐怖が、一度に押し寄せてきた。
その声が何度も何度も繰り返されるせいで、ついに、叫んだり泣いたりしないように抑え続けていた気持ちを、抑えきれなくなった。
目に、熱くて急な涙がにじんできて、目の前の木々が灰色と緑のにじんだ塊になっていった。
涙をこらえようとしたけど、どんなに頑張っても、声はどんどん大きくなっていって、短く途切れる嗚咽になって崩れていった。
慌てて、周りを見渡した。
誰も反応しなかった。一人として、こちらを振り向く顔はなかった。すぐ近くで、誰かが聞こえない冗談に小さく笑っていて、別の観光客はジャケットのポケットから取り出したお菓子を、まったく気にする様子もなくポリポリと食べていた。
お父さんとお母さんでさえ、まるで何も起きていないみたいに、お互いに話し続けていて、その声は、さっきと同じ気楽なリズムのままだった。
泣き始めた。肩が震えていた。
でも誰一人として気づいている様子がなかった。周りの人混みは、まるで僕がその世界から静かに消えてしまったみたいに、ただざわめきながら動いていた。
数秒後、両親は森から目をそらして、歩き始めた。足取りは落ち着いていて急いでいなくて、まるで周りの空気には何も変わったことなど起きていないみたいだった。
二人はただ歩いていた。
泣きながら、ずっと二人を見つめていた。体中があとを追えと叫んでいるのに、足は動くことを拒んでいた。
でもそれ以上に怖かったのは、二人が向かっている方向だった。
二人は、青木ヶ原に向かってまっすぐ歩いていて、その足取りは一度も緩まず、禁じられた場所の境目で普通の人ならためらうはずのところでも、まったくためらわなかった。一歩進むごとに、木々の連なりが目の前の空間を少しずつ飲み込んでいった。
お父さんとお母さんは、ゆっくりとグループの他の人たちから離れていった。周りの誰一人として、二人の方をちらりとも見なかった。
一人として、気づいた人はいなかった。
二人の注意を引こうとした。緊張のせいで、声がかすれた。
「お父さん!」
周りの人たちに助けを求めた。見知らぬ人の袖の近くに、無駄だとわかっていても手を伸ばしたけど、誰一人としてこちらを振り向かなかった。
「お母さん!」
まるで、僕という存在自体が、そこになかったみたいだった。
お父さんとお母さんが、森の入り口を示す境界線にどんどん近づいていくのを見つめた。その足取りは一度も遅くならず、禁じられた場所を前にした普通の人が見せるはずのためらいも、まったくなかった。その先には、人が越えてはいけないと示すらしい柵があって、二本の木の柱の間にただ一本のロープが張られているだけだった。誰かを止めるようなものには見えなかったのに、なぜか、それが世界そのものの端であるかのように感じられた。
泣き続けた。
「お願い……お父さん……お母さん……」
でも二人は歩き続けた。
そしてついに、お父さんとお母さんはその境界線を越えた。二人の姿は、木々の壁の中でどんどん小さく、薄くなっていった。
ただその場に立ち尽くすことしかできなかった。胸の中には、言葉にできないものが詰まって、大きく波打っていた。
二人は本当に、あの森の中に入っていってしまった。僕だけを、グループの他の人たちの中に完全に一人残して。
足の力が抜けていった。冷たい地面が、覚悟する間もなく一気に迫ってきた。
その場に、そのまま崩れ落ちた。できる限りの声で泣いた。でもその声は、一度もこちらを見ることのない人混みの中に、すっかり飲み込まれていった。周りの会話や足音が、まるで森そのものがすでに、僕のことも気にかける価値がないと決めてしまったみたいに、静かに閉じていった。




