樹海の中へ
鳴沢氷穴に行ってみたら、それなりに楽しかった。でも正直に言うと、東京で過ごした時間の方が、僕にとってはずっとわくわくした。
洞窟の中には、思わず目を引かれる美しい氷と岩の連なりが広がっていた。光が当たると、きらきらと輝いて見える場所もあって、必要以上に長く立ち止まって見入ってしまうことが何度もあった。
それでも、あの洞窟の中で一番感じたのは、寒さだった。
鳴沢氷穴は、凍えるくらい寒かった。
息を吐くたびに、白い霧みたいになった。
両手を何度もこすり合わせて温めた。手袋をしていても、寒さは指先の奥まで届いてきた。狭い通路を、お父さんとお母さんの後ろについて歩きながら、時々自分の手のひらに温かい息を吹きかけた。
「氷穴」という名前は、伊達じゃなかったんだと実感した。
中は本当にそのくらい寒くて、本当にどこにでも氷があった。
洞窟を見終えると、お父さんとお母さんと一緒に、次の目的地に向かって外へ歩いていった。お母さんは僕の左手を握って、お父さんは右側を歩いていた。
「行こう、ギラン。次の洞窟に向かう前の、最後の目的地だよ」
しばらくこちらをちらちら見ていたお母さんが、話しかけてきた。お父さんも話に加わったけど、視線は僕たちよりも先の方に向いたままだった。
「そうだね、いよいよこのホラー旅行の本番だ。青木ヶ原樹海、インドネシア語で言えば海みたいな木の海、あるいは樹海とも呼ばれてる場所」
お母さんがうなずいている様子を見た。お父さんの言葉に引き出されたみたいな、明るい興奮が顔に浮かんでいた。
「そうそう。でもそれだけじゃなくて、富士山も遠くから見ても、近くで見ても美しいのよね。岩とか氷がきれいだったのもあるけど、さっきの鳴沢氷穴の中も、すごく寒かったでしょ、ギラン?」
しっかりとうなずいて、にっこり笑った。
「そうだよ、お母さん!ギラン、手をこすったり息を吹きかけたりしないと、あったかくならなかったんだ」
正直に言うと、鳴沢氷穴の話をしたのは、ホラー観光そのものにはあまり興味を持ったことがなかったからだった。こういう場所を訪れるたびに、いつも何かが僕たちについてくる気がした。あるときは、あの耳無し悪魔だった。ジョグジャカルタの、スダユ駅からずっと僕たちについてきて、最終的には拝み屋さんを呼んで追い払ってもらうことになった、あれだった。
それに加えて、あの巫女服の女の子がどこにいるのか、その手がかりを見つけるために神社に行くことも、まだ頭から離れなかった。
宿を出てから今まで、まだ一度も彼女には会えていなかった。
お父さんがあれこれ指さして、お母さんが目を輝かせながらうなずいている間、僕の足取りは二人より半歩遅れていて、視線は二人が見ているものよりも、木々の隙間の方にばかり向いていた。
僕にとっては、ただの旅行の次の目的地でしかなかった。それ以上でもそれ以下でもなかった。
歩いている場所からそう遠くないところに、列を作って並んでいる人たちのグループが見えた。近くには、メガホンと、まったく読めない日本語の文字が書かれた看板を持った人たちも何人かいた。
その様子をしばらく見てから、お父さんとお母さんに追いついて、僕たちも同じ列に加わった。
ほどなくして、僕たちも他の観光客たちと一緒に、その列の中に組み込まれた。いくつかの家族やツアーグループが、僕たちと同じウォーキングツアーに参加するらしく、それぞれジャケットに貼られた色違いのシールで区別されていて、その色は、先頭を歩くガイドさんが持つ小さな旗の色と対応していた。少し先の道では、もう一つ別の列がすでに動き出していて、そのガイドさんの旗は明るいオレンジ色で、人混みの上にぴょこぴょこと見え隠れしていた。僕たちの旗はただの青一色で、少し目を離すとすぐに見失いそうになるくらい地味だった。
ここからはまず北側から富士山を眺めて、それから西側から、というのが、お父さんとお母さんがインドネシアにいたときに話していた予定だった。
もう一度前を見て、ジャケットを体にぴったりと引き寄せた。氷穴の中に長くいたせいで、体はまだ完全には温まっていなかった。
洞窟の中で氷を見たあと、今度はまったく違う角度から富士山を見ることになる。
ここからの景色がどんなものになるのか、まだまったく想像がつかなかった。
周りの人たちは、僕にはわからない言葉で話していたけど、いくつかの声には、なぜかジャワ語に少し似ているような訛りが混じっていた。
お父さん、お母さん、そして僕は、順番を待ち続けた。前にいた人たちが、少しずつグループと一緒に前へ進んでいく間、僕たちはまだその場に根を張ったように立って待っていた。
もう一度、富士山の方を見た。
ここから見ると、その山は本当に巨大だった。
日本に着いてから、飛行機の窓越しから今まで、富士山は何度も目にしてきたはずだった。でもこんなに近くで見るのは、なぜかまったく違う感覚だった。それに、そもそも日本に来るのは、これが初めてだった。
山のふもとは広く広がっていて、木々に厚く覆われていた。じっくり見れば見るほど、あの頂上まで本当にたどり着ける人がいるなんて、想像するのが難しくなっていった。
冷たい風が、立っている場所を吹き抜けていった。近くのどこかで、葉や枝がこすれる音が聞こえた。時々、前の方でガイドさんの声がメガホン越しにパチパチと響いたけど、一言も理解できなかった。
ただ、お父さんとお母さんについていくしかなかった。
しばらくして、前の列がさらに前に動き始めた。
「もうすぐ順番みたいだね」お父さんが前の方を見てから、お母さんと僕を交互に見て言った。
前を見て、お母さんの手を握った。
少しして、僕たちのグループもついに動き始めた。
お父さんとお母さんと並んで歩いて、残りの列を後ろに残していった。歩きながら、木々の隙間から時々見える富士山を、何度も振り返って見た。
その山はとても巨大に見えたけど、立っている場所からは、それでもやっぱり美しいものとして受け止められた。
歩き続けた。一歩ごとに、富士山のふもとがどんどん近づいていくのを見つめながら。
一度たりとも、あの頂上の大きさと美しさに心を奪われずにはいられなかった。
特に今、こんなに近くから見ると、頂上に厚く積もった雪がはっきりと際立って見えて、思わず小さくつぶやいてしまった。
「あそこにいたら絶対凍死するよね。まあ、エベレストに比べたらそれでもましなんだろうけど」
歩きながら、左右を何度も見渡して、お父さんとお母さんのすぐそばに寄り添っていた。
時々お父さんが、インドネシアのバニヤンツリーよりもさらに大きな根を持つ、巨大な木を指さした。本当に、比べものにならないくらい大きかった。
一方お母さんは、時々お父さんに話しかけて、この木々の間に、何か超自然的な存在や『ソウ』みたいなホラーの場面がいきなり現れたらどうしようと、想像を膨らませていた。
木々に注意を向けるだけじゃなくて、あちこちに散らばる、変わった形の珍しい岩や、たくさんの苔にも気づいた。
この旅の細かいところを一つひとつ観察していて、絶対に忘れないだろうなと思いながら、僕たちが歩く間、周りを遠くから眺めては、静かに独り言をつぶやいていた。
「ここ、すごく湿ってるな。キノコとか変わった植物もあるし、インドネシアの山にはないやつばっかりだ」
時々、気づかないうちにカタツムリやアリの姿も目に入った。
そのカタツムリは、バンドンの家の庭にいる普通のカタツムリよりも小さく見えた。少なくとも僕にはそう見えた。
でも心の奥では、この時間が早く終わってほしいという気持ちもあった。それが終わったら、ようやくここを出て、あの巫女服の女の子が示そうとしていた神社を、探しに行けるから。




