失敗した脱出
「たしか昨日の夜、AIがこの時間くらいに宿の駐車場にバスが止まるって言ってたはずなんだけどな」
駐車場をゆっくりと見渡した。朝早くの寒さの中で、息がかすかに白く曇っていて、空はまだ、日の出前の最後の灰色を少しだけ残していた。
でも見えるのは、他の宿泊客のものらしい車が一台か二台だけだった。フロントガラスにはまだ夜の霜が張りついていて、ガラスの端には、繊細な模様の氷がまとわりついていた。
昨日は、お父さん、お母さん、僕が使っていたのと同じような車で、たくさんの観光客が迎えられていくのを見ていた。
だから、遅かれ早かれ、自分にも何かの乗り物が来るはずだと思っていた。
「バス、どこにあるんだろう……」
左右を何度も見渡した。スニーカーが、霜の降りた砂利の上でかすかにザクザクと音を立てていて、寒さがすでに手袋の薄い生地を通して忍び込んできていた。
時々、駐車場をもう少し先まで歩いてみて、建物の反対側に、さっきいた場所からは見えなかったバスが止まっていないか確かめた。一周するたびに、息が少しずつ速くなっていった。
数分が過ぎた。
それでも、何もなかった。
だんだん疲れてきて、こんなに長く待ってしまった自分が少し馬鹿らしく思えて、宿の正面まで戻って、入り口近くのベンチに腰かけた。木のベンチは、ジャケット越しにも刺さるくらい冷たくて、寒さから守るように両手をポケットの奥深くに突っ込んだ。
「ギラン、スケジュールを間違えて覚えてたのかな……」
ゆっくりと後頭部をかいて、前の晩に何か聞き間違えていなかったか、思い出そうとした。
「それとも、また学校の宿題を間違えたときみたいに、AIが間違えたのかな」
長く息を吐いて、それが薄い朝の空気の中に立ちのぼって消えていくのを見つめた。目はまだ、入り口の道路に向けられたままで、見るのをやめた瞬間にバスが現れるんじゃないかと、半分期待していた。
もしバスが来たら……
これまで計画してきたすべてを考えると、絶対に見逃すわけにはいかなかった。
そうやって座って待っていたとき、突然誰かが僕の名前を呼んだ。
「ギラン!」
体全体がびくっと固まって、ベンチの上で身動きできなくなった。心臓が一度、肋骨に強く打ちつけた。
ここには自分以外、誰もいないはずだった。少なくとも、その瞬間までは、そう信じていた。
完全に動けなくなった。声のした方向を向くことを、体が拒んでいた。動かなければ、これは本当に起きていることじゃないかもしれないという、何かの本能がそう言っていた。
少しして、足音が近づいてきた。凍った舗道の上で、だんだん大きくなっていく足音。急いではいないけど、確信に満ちていて、自分の行き先をすでにわかっているような足音だった。
誰かが、僕の真正面で立ち止まった。
ゆっくりと顔を上げた。首が、恐怖でこわばっていた。
「お……お母さん……」
顔から一瞬で血の気が引いた。ポケットの中の両手は、朝の寒さだけでは説明できないくらい冷たくなっていた。
「お母さん……」
「こんなところで何してるの?」
ごくりと唾を飲み込んだ。のどが急に渇いて、その質問が重く僕たちの間に垂れ下がった。
まさかお母さんが、こんな朝早くに、こんなに早く見つけ出すなんて、百年考えても想像できなかった。
慌てて、怪しまれない程度の理由を、急いで頭の中で探した。半分できあがった言い訳が、頭の中を駆け巡った。
でも答える前に、お母さんが先に口を開いた。
「あちこち探したのよ」
「フロントの人にも、宿の周りにいた何人かの人にも聞いたの」
「あなたが一人でバッグを持って外に出ていくのを見たって言ってたわ」
寒さにもかかわらず、首の後ろにうっすらと汗がにじむくらい、緊張がさらに跳ね上がった。
目が左右にせわしなく動いて、何か、何でもいいから言葉を探した。
それから、駐車場の方を指さした。腕が少し震えていた。
「あれは……お母さん……」
「ギラン、ガイドさんと車を待ってたんだ」
「洞窟と青木ヶ原樹海のことで、興奮しすぎちゃって……」
「へへ……」
お母さんは長い間、僕をじっと観察していた。何か隠しているんじゃないかと疑うときのいつもの目で、僕の顔を探っていた。
それから、ゆっくりと重たい息を吐いて、肩の力が抜けていった。
怒っている人がするようなため息じゃなかった。
もっと、ずっと抱えていた恐怖が、ようやく行き場を失って、安堵が追いついてきたときのような息だった。
「あなたに何かあったんじゃないかって、お母さん、本当に思ったのよ」
最後の言葉のところで、その声が少しかすれた。
「怖かったんだから」
お母さんはそれから、僕の手をそっと握った。その手のひらは、朝の冷たさにもかかわらず温かくて、指が、僕がもっと小さかったころみたいに、そっと絡みついてきた。
「そんなに楽しみなら、お父さんと一緒に部屋で待ってなさい」
「まだシャワーも浴びてないでしょう」
少し鼻にしわを寄せて、半分からかうような口調だった。
「歯も磨いてないし」
「そんなんじゃ、虫歯になっちゃうわよ」
ただゆっくりとうなずくことしかできなかった。罪悪感が、胸の中で温かく押し寄せてきた。
「うん、お母さん……」
お母さんについて宿の中に戻った。磨かれた床の上を、スニーカーが少し引きずるように鳴った。自動ドアが後ろで閉まった瞬間、ロビーの暖かさが体を包み込んだ。
部屋に着くと、ドアが後ろで閉まって、カチッという小さな音とともに自動的に鍵がかかった。静かな廊下では、その音がなぜか、実際よりも大きく聞こえた。
お母さんがルームキーをジャケットのポケットに戻す様子が、ちらっと目に入った。絶対にそこから落とさないようにと言わんばかりに、深く押し込んでいた。
こんなことがあったあとだから、もう二度と僕を一人で歩き回らせたくないんだろうと感じた。
まだベッドに横になっていたお父さんが、ゆっくりと目を開けた。カーテンから差し込む朝の光に、まぶしそうにまばたきをしていた。
大きなあくびを一つしてから、マットレスの端に体を起こした。片側の髪が寝ぐせで立っていて、外で何が起きたのかは、まったく気づいていない様子だった。
「おはよう……」
いつも通り、お父さんはすぐに起き上がって、電気ケトルが置いてある小さなテーブルの方へ歩いていった。すでに、そのそばにきれいに積まれたコーヒーのパックに手を伸ばしていた。
「まずコーヒーを淹れようかな」
まだ注ぐ前に、お母さんがお父さんの方を向いた。外でのことでまだ興奮が残っているせいか、その口調は、その場の空気にしては鋭かった。
「先にお水を飲んで」
「コーヒーはそのあと」
お父さんはただ小さく笑って、両手を軽く上げて降参のポーズをした。
「はいはい、わかりました」
それからお母さんはお父さんの方を見て、腕を軽く胸の前で組んだ。
「聞いてよ」
「さっき、ギランがもう宿の外で待ってたのよ」
「洞窟と青木ヶ原樹海に、待ちきれないくらい行きたかったんだって」
お父さんは柔らかく笑って、その声には温かさとまったく気にしていない様子がにじんでいた。
「はははっ……」
「間違いなく僕たちの子だな」
「昔の僕たちも、まさにこんな感じだったよな」
お母さんも少しだけ微笑んだ。でも、その目の奥には、まだ油断しない何かが残っていた。
「そうね」
「元気なところは、本当に私たちに似たわね」
それから、お母さんの表情が少し変わって、いくらか真剣な色を帯びた。お父さんから受け取ったばかりの水のコップを持つ指に、少し力がこもった。
「ただ……」
「……ロワン・スウ(Lawang Sewu)で起きたみたいなことに、また巻き込まれないといいけど」
その瞬間、部屋全体が急に静かになった。ケトルの温かさも、その空気に急に降りてきた冷たさを和らげてはくれなかった。その記憶は、二人ともが口には出したくないくらい、はっきりと重くのしかかっているみたいだった。
お父さんはただゆっくりとうなずいた。いつもの笑顔が、一瞬だけ消えた。
「そうならないことを祈るしかないな」
しばらくして、僕たちは支度を始めた。さっきまでお父さんとお母さんの間にあったぴりっとした空気は、いつもの気楽なリズムに戻っていて、小さなテーブルの上でコーヒーカップが軽くカチャカチャと音を立てていた。
シャワーを浴びて、歯を磨いて、冬用の服を着た。まだ、あと少しで誰にも気づかれずに抜け出せていたかもしれないことを考えていて、さっきの動揺は、まだ完全には収まっていなかった。
お父さんはカメラとその付属品を確認していて、シャッターを一度試してから、丁寧にケースにしまった。小さなクリック音が、静かな部屋にかすかに響いた。
その間お母さんは、部屋の中に忘れ物がないか、もう一度確認していた。いつもの習慣で、ナイトテーブルの端や枕の下に手を這わせていた。毎朝欠かさず続けている、いつもの丁寧な確認だった。
全部の準備が整うと、みんなで荷物を持って部屋を出た。廊下には、洗いたてのリネンのかすかな香りが漂っていた。
お父さんがフロントでチェックアウトの手続きをしている間、お母さんと僕はそのそばで待った。ロビーにはコーヒーの香りがかすかに漂っていて、他の宿泊客たちが、それぞれのスーツケースと眠たそうな朝の顔で、僕たちの前を通り過ぎていった。
しばらくして、三人で駐車場の方へ向かった。冷たい朝の光の中、息が白い雲になって立ちのぼった。
車とガイドさんは、すでにそこで待っていた。マフラーからは、寒さの中でかすかに排気が立ちのぼっていた。
車に乗り込んで、次の目的地へと向かった。エンジンが低くうなり始めて、宿が少しずつ後ろに消えていった。




