神社への道
お互いの背中を洗い終えると、お父さんと僕は小さな木の桶を使って、もう一度体を流した。長い間熱さの中にいたせいで、その水は肌にひんやりと感じられた。
お父さんのすることを全部そのまままねした。一つひとつの小さな動きを、疑問も持たずに合わせた。木の桶は、思っていたよりも手の中で重かった。
体を流し終えると、浴場の奥にある木のドアの方へ、お父さんと並んで歩いた。
そこに着くと、お父さんがドアを引き開けた。
中から、分厚くて重たい湯気がすぐにあふれ出てきた。中に足を踏み入れる前から、顔にその温かさを感じるくらいで、かすかに杉の木の香りも混じっていた。
中には、お年寄りの男の人が一人、小さな子供が二人、そして大人の男の人が一人座っていた。みんな、壁際に並んだ木のベンチに静かに腰かけていた。
「ギラン、これはサウナっていうんだ。でもホテルにあるものと、こういう日本の伝統的なサウナとは、また違うんだよ」
ゆっくりとうなずいて、お父さんについて中に入った。
お父さんは、お年寄りの男の人と大人の男の人の間に座った。
僕はその代わりに、二人の子供の近くに座った。
その二人は、僕にはわからない言葉で、低く早口に話していた。
僕は黙っていることにした。
まるで、いい意味で丸ごと蒸されているみたいな感覚だった。熱さが肌のすみずみまで押し寄せてきて、息をするたびに、胸の奥深くまで染み込んでいった。
最初は不快で、じっと座っているだけでも大変で、額には数秒のうちに汗の粒が浮かんできた。
でも少しずつ、体がそれに慣れていって、その不快感は、だんだん重たさに近い何かへと変わっていった。
しばらくして、お父さんが外に出ようと合図した。
もう一度水で体を流してから、タオルで体を拭いた。
それから脱衣所へと向かった。
さっき部屋から温泉まで着てきたのと同じ浴衣を、また身につけた。
服を着終えると、お父さんと一緒にお母さんが待つ部屋へ戻った。
なぜか、体全体が信じられないくらいすっきりしていた。
その瞬間、思い切り走れそうな気さえした。今日一日ずっとなかったようなエネルギーが、足の中でうずいていた。
その夜、お父さん、お母さん、そして僕は、宿の中にあるレストランに向かった。そこまでたどり着くために横切った冷たい空気とは対照的に、食堂の暖かさが心地よかった。
しばらくして、店員さんが木のお盆にきれいに並べられた小皿をいくつも運んできて、静かに丁寧な手つきで、一つずつ僕たちの前に置いていった。皿が低いテーブルに触れるたびに、コトンと小さな音が続いた。
一つひとつの皿が、それぞれ小さな世界だった。丸いもの、四角いもの、葉っぱや小舟みたいな形のものもあって、まったく同じものは一つもなかった。いくつかの皿からはうっすらと湯気が立ちのぼっていて、他のものはレストランの暖かい光の下で、冷たいまま艶やかに光っていた。どれも丁寧に盛りつけられていて、何かわからないうちは触っちゃいけないような気がした。
ご飯は、小さくて艶のある漆塗りの茶碗に盛られていて、そこに自分の顔がほとんど映って見えるくらいだった。
温かいスープは、色が濃くて香りが良くて、表面のすぐ下に何か柔らかいものが浮かんでいた。
焼き魚は、皮がぱりっと焦げていて、緑色の何かの小枝が一本、皿の脇に添えられていた。
野菜は、とても手作業とは思えないくらいきれいな形に切られていた。少なくとも僕にはそう見えた。
それから、今まで一度も見たことのない料理もいくつかあって、それぞれが食事というより、一口分だけの味見みたいに小さかった。
「お父さん……なんで、こんなに一皿ずつが少ないの?」
「こっちだと、普通こういう風に出てくるんだよ」
「でも、種類がすごく多いよね」
数えるつもりはなかったのに、目の前の皿を無意識に数えながら、ゆっくりとうなずいた。
「へえ……」
一皿ずつ、少しずつ全部試してみた。箸が、新しい皿の上で決心がつかないまま迷った。
いくつかは、今まで出会ったことのない食感や味で、少し変な感じがした。一口、予想していなかった塩気に驚かされた。
でもいくつかの料理は、自分でも驚くくらい気に入った。特に魚は、簡単にほろほろとほどけて、かすかに燻製の風味がした。
時々、お父さんとお母さんは静かに話し合っていて、明日の予定を確認していた。その声は、周りの他のお客さんの食事する音に静かに溶け込んでいった。
僕はただそこに座って聞いていて、一口ごとに箸の動きが遅くなっていった。部屋の暖かさと料理のせいで、まぶたが少しずつ重くなってきた。
明日は、富士山の麓にある二つの洞窟と、一つの森を訪れる予定だった。
あの巫女の女の子が書いたメッセージが、また頭の中に戻ってきた。歓迎できない、振り払うことのできない記憶として、テーブルの周りで鳴る静かな箸の音に重なるように、何度も再生された。
富士山から離れろ。神社へ行け。
半分だけ食べた皿を見つめた。温かい料理が急に飲み込みにくくなって、煙と塩の味がまだ舌の上に残っていて、お腹の中には、食事とは何の関係もない何かがぎゅっと締めつけていた。
夕食が終わると、部屋に戻った。廊下は、さっきまでいた暖かい食堂に比べて、はっきりと冷たかった。
お父さんはテーブルの近くに座って、明日持っていく予定のカメラを見ていた。バッテリーとレンズを静かに集中して確認しながら、時々小さな布でレンズを拭いていた。
お母さんは、冬用の服をたたんで整理するのに忙しくて、それをきれいにスーツケースに詰めていた。手際よく、慣れた動きだった。
その間、僕はベッドに座って、スマホを持っていた。浴衣は、さっきのお風呂のおかげで、まだ肌に温かかった。
いつも何か疑問があるときに使っているAIのアプリを開いた。薄暗い部屋の中で、画面の明かりだけが唯一の光だった。
指を、ゆっくりと画面の上で動かした。
「富士山の近くにいる場合、一番近い神社はどこですか?」
少しして答えが出てきて、思っていたよりずっと詳しい内容で画面が埋まった。
AIは、富士山周辺にある神社の名前をいくつか挙げてくれた。
河口浅間神社という名前があった。
富士御室浅間神社という名前も、そのリストに出てきた。
それから、これらの神社のいくつかは、河口湖の周辺からバスで、あるいは宿泊施設のあるエリアから車で行けるとも説明していた。
一つひとつ、ゆっくりと読んでいった。親指が、一行ずつのところで止まった。すべての言葉を頭に残そうとしながら。
「でも……どこに行けばいいんだろう……」
忘れないと確信できるまで待ってから、AIとの会話履歴を消した。親指が、必要以上に長くボタンの上にとどまっていた。
お父さんやお母さんに読まれたくなかった。
もしまた神社を探していることが二人にばれたら……
きっと怪しまれる。それに、自分でもちゃんとわかっていないことを、説明する準備はまだできていなかった。
下唇をかんで、その小さな名前のリストをじっと見つめた。文字がだんだんぼやけて見えてくるまで。親指が、落ち着かなさそうにスマホの端を叩いていた。
あの巫女の女の子は、一度も具体的な神社の名前を教えてくれなかった。
ただ、どこか一つに行けとしか言わなかった。あとは全部、僕自身で見つけ出すしかなかった。
だったら……
「このリストの中から、ほとんど当てずっぽうで一つ選んで、それが正解であることを願うしかないのかな」
もし運が良ければ……もう一度、あの子に会えるかもしれない。
スマホの画面にまだ光っている神社の名前を、もう一度見比べた。それぞれの名前を天秤にかけながら、聞き慣れない音の並びを、声には出さずに口の中で繰り返した。
最終的に、一番覚えやすそうなものを選んだ。文字の形の何かが、他のどれよりも記憶に残った。
それから、声には出さずに、何度も何度も心の中で繰り返した。借り物みたいな感じがしなくなって、自分自身のものだと感じられるようになるまで。
スマホを枕元に置いた。お風呂の熱さと、夕食のテーブルの暖かさのあとだったから、マットレスがひんやりと感じられた。
「明日の朝……」
神社の名前を、もう一度頭の中で繰り返した。自分の心臓の鼓動に合わせるみたいに。
絶対に忘れるわけにはいかなかった。
何度も何度も、自分自身に言い聞かせるように繰り返した。繰り返すたびに、音節はどんどん柔らかく、あいまいになっていって、眠りが訪れる直前の考えみたいに、輪郭がぼやけていった。
やがて、まぶたがどんどん重くなっていって、スマホはまだ手の中で温かいままだった。
気づかないうちに眠りに落ちていて、手にはまだスマホを握ったままだった。画面には、眠気に負けるまで見ていたゲーム大会の映像が、まだかすかに光り続けていた。




