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魔法少女しか見えない怪物を、天才中学生が科学で観測してしまった  作者: 悪癖


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第45話 規格外に届く刃

 ――閃光が、消える。


 遅れて、衝撃が走った。


 地面が揺れる。


 空気が押し潰される。


 爆音が、ようやく耳に届いた。


 「なっ……!」


 「今のは――!?」


 背後で、現地の兵士たちがざわめく。


 魔法少女たちも、明らかに動揺している。


 無理もない。


 会議で決めた布陣も、合図も、何もかも無視して。


 僕たちは、勝手に“始めた”。


 「勝手に撃ったぞ……!」


 「まだ指示が――!」


 翻訳越しでも分かる焦りと苛立ち。


 でも。


 そんなのは、どうでもいい。


 僕は視線を前に向けたまま言う。


 「黙って見てろ」


 小さく。


 でもはっきりと。


 その一言で、背後の空気が一瞬凍る。


 鬼塚が何か言いかけて、やめた。


 理解してる。


 もう止まらないって。


 視界の先。


 爆心地。


 煙が立ち込めている。


 地面は抉れ、空気はまだ震えている。


 でも――


 「……浅いな」


 僕は呟いた。


 次の瞬間。


 煙が、割れた。


 風もないのに。


 内側から押し広げられるように。


 そこに――立っている。


 バル=グラド。


 無傷ではない。


 腕の一部が削れている。


 表皮のようなものが剥がれ、黒い内部が露出している。


 胸部にも、焦げた痕。


 確かに、当たっている。


 「……へえ」


 低い声が響く。


 ゆっくりと、顔を上げる。


 視線が、こちらに向く。


 圧が来る。


 ただ見られているだけで、空気が重くなる。


 「やるな」


 口元が歪む。


 笑っている。


 「今のは、少し効いた」


 軽く腕を振る。


 削れた部分が、ゆっくりと再生していく。


 肉が、戻る。


 何事もなかったみたいに。


 「……でも」


 目が細くなる。


 「まだ足りん」


 太陽が舌打ちする。


 「チッ、やっぱ一発じゃ無理かよ!」


 「当たり前だろ」


 僕は即答する。


 「でも“効いてる”」


 それで十分。


 澪が空中で体勢を整える。


 「理久、次は!?」


 「そのまま削る」


 短く答える。


 透花が後方から声をかける。


 「支援、維持します!」


 光が広がる。


 バフが重なる。


 状態が最適化される。


 いい。


 「行け」


 僕が言うより早く。


 太陽が動いた。


 「おらぁぁぁ!!」


 地面を蹴る。


 消える。


 次の瞬間には、バル=グラドの懐。


 拳を振り抜く。


 ――ドンッ!!


 衝撃。


 確かに当たる。


 バル=グラドの体が、わずかに揺れる。


 「ほらよ!!」


 追撃。


 連打。


 炎が爆ぜる。


 圧縮された熱量が叩き込まれる。


 だが――


 「遅い」


 バル=グラドが言う。


 そのまま。


 腕が動く。


 ただ振るだけ。


 それだけで。


 「っ!!」


 太陽の体が吹き飛ぶ。


 空気ごと。


 「太陽!!」


 澪が叫ぶ。


 でも太陽は、空中で体勢を立て直す。


 「まだだ!!」


 着地と同時に再加速。


 止まらない。


 いいね。


 その間に。


 「――貫く」


 澪が構える。


 光が一点に集束する。


 指輪が輝く。


 極限まで圧縮された光。


 「スターライト・レイ!!」


 撃つ。


 一直線。


 空気を裂く速度。


 今度は避けない。


 バル=グラドが、そのまま受ける。


 ――ズンッ!!


 貫通。


 肩口を撃ち抜く。


 明確に、穴が開く。


 「ほう」


 バル=グラドが小さく唸る。


 そのまま、視線を澪に向ける。


 「それは、さっきよりいい」


 腕が動く。


 予備動作。


 「澪、避けろ」


 僕が言う。


 同時に。


 プレディクターが赤く光る。


 ラインが走る。


 澪がそれを踏まないように、空を蹴る。


 次の瞬間。


 「――消えろ」


 バル=グラドの一撃。


 空間が削れる。


 さっきまで澪がいた場所が、何もかもごっそり“消える”。


 でも――


 当たらない。


 「っ……!」


 澪が息を吐く。


 ギリギリ。


 でも避けた。


 「いい反応だ」


 バル=グラドが言う。


 楽しそうに。


 その間に。


 透花が静かに杖を振る。


 「戻します」


 光が揺れる。


 太陽の負傷がなかったことになる。


 位置も微調整される。


 「サンキュー透花!!」


 太陽が再び突っ込む。


 止まらない。


 澪が空から射撃を続ける。


 僕は全体を見ている。


 流れは――


 悪くない。


 確実に削れてる。


 でも。


 「まだ足りない」


 僕は呟く。


 バル=グラドは笑っている。


 余裕がある。


 それでも。


 最初よりは――


 確実に“戦いになっている”。


 その事実だけで、十分だった。


 「……あれが、四天王……」


 背後で、誰かが呟く。


 翻訳越しでも分かる、息を呑む音。


 それでも。


 止まっているわけにはいかない。


 「支援、入ります!」


 鋭い声。


 振り返るまでもなく分かる。


 現地の魔法少女だ。


 数人。


 それぞれが前に出る。


 「近接は日本側がやる! 私たちは後方から合わせる!」


 指示が飛ぶ。


 統率は取れている。


 いい判断だ。


 「援護、来るぞ!」


 太陽が叫ぶ。


 次の瞬間。


 ――ドドドドド!!


 後方からの銃撃。


 重火器の音。


 空気が震える。


 弾丸が、バル=グラドに向かって集中する。


 ただの弾じゃない。


 魔力干渉弾。


 以前から共有していた対ヴォイド兵装。


 「……面白い」


 バル=グラドが腕を振るう。


 弾丸が消える。


 でも。


 「そこ!」


 澪の声。


 空中からの狙撃。


 弾丸に意識を向けた一瞬。


 その隙を突く。


 ――ズンッ!!


 光が突き刺さる。


 今度は腹部。


 明確に抉る。


 「いいぞ澪!!」


 太陽が叫びながら突っ込む。


 そのまま拳を叩き込む。


 ――ドンッ!!


 衝撃が重なる。


 バル=グラドの体が、わずかに後ろへ滑る。


 「……ほう」


 低い声。


 でも、さっきより明らかに“反応している”。


 効いてる。


 「続けろ!」


 鬼塚の声。


 自衛隊の隊員たちが動く。


 「第二射、装填!」


 「座標固定、撃て!」


 ――ドンッ!!


 今度は砲撃。


 地面が揺れる。


 爆煙が上がる。


 「今ですわ!」


 透花の声。


 同時に。


 現地の魔法少女たちが動く。


 「束ねる!」


 「合わせて!」


 複数の魔法が重なる。


 炎。


 雷。


 氷。


 色の違う光が、一点に収束する。


 「撃て!!」


 ――ドォォン!!


 合成魔法。


 巨大な一撃。


 それが爆煙の中へ叩き込まれる。


 衝撃波が広がる。


 地面がひび割れる。


 風が巻き起こる。


 数秒。


 静止。


 そして――


 煙が、割れる。


 「……効いているな」


 バル=グラドの声。


 さっきより、低い。


 立っている。


 でも。


 肩口。


 腹部。


 脚。


 複数箇所が削れている。


 再生しているが――


 間に合っていない。


 「押してる……!」


 澪が息を呑む。


 太陽が笑う。


 「いけるぞこれ!!」


 現地の魔法少女たちも、確信を持ち始めている。


 「続ける!」


 「一気に削る!」


 連携が変わる。


 最初の警戒が消えている。


 完全に“戦闘”に入った。


 いい。


 そのまま行け。


 「理久!」


 鬼塚の声。


 「このまま押し切れるか!」


 僕は少しだけ考えて――


 「五分」


 正直に答える。


 「削りきる前に、向こうが慣れる可能性あり」


 鬼塚が歯を食いしばる。


 「……なら」


 「だから」


 僕は遮る。


 「一気に削る」


 視線を前に向ける。


 バル=グラド。


 その動き。


 癖。


 全部、見えてる。


 「澪、右上から連続射撃」


 「了解!」


 「太陽、正面維持。引きつけろ」


 「任せろ!」


 「透花、状態維持と緊急巻き戻し準備」


 「はい!」


 現地側の声も重なる。


 「我々も合わせる!」


 「タイミングを揃えろ!」


 いい。


 統一されてきた。


 「行け」


 僕の一言。


 全員が動く。


 澪が空を蹴る。


 太陽が突っ込む。


 現地魔法少女が詠唱を重ねる。


 自衛隊が射撃を開始する。


 すべてが、重なる。


 「――叩き込め!!」


 次の瞬間。


 火力の嵐。


 光。


 炎。


 弾丸。


 爆発。


 それらが一点に集中する。


 バル=グラドを中心に。


 逃がさない。


 削る。


 削る。


 削る。


 その中で。


 バル=グラドが――


 初めて。


 「……面白い」


 低く笑った。


 その声は。


 さっきまでとは、少し違っていた。


 「――叩き込め!!」


 火力が、収束する。


 光が走る。


 炎が唸る。


 弾丸が穿つ。


 爆発が重なる。


 すべてが一点に集中して――


 バル=グラドを飲み込んだ。


 ――轟音。


 衝撃。


 空気が悲鳴を上げる。


 「……やったか!?」


 太陽が叫ぶ。


 澪も息を呑む。


 現地の兵士たちも、一瞬だけ期待を見せる。


 でも。


 「まだ」


 僕は即答した。


 次の瞬間。


 煙が“弾けた”。


 内側から。


 力任せに。


 「――ぬるい」


 低い声。


 今までとは違う。


 少しだけ、苛立ちが混じっている。


 現れたバル=グラドは――


 明らかに“削れていた”。


 全身に走る損傷。


 再生が追いついていない部位。


 片腕は半ば崩れたまま。


 それでも。


 立っている。


 そのまま。


 ゆっくりと、前に出る。


 「だが」


 一歩。


 地面が沈む。


 「いい」


 二歩。


 空気が歪む。


 「ようやく」


 三歩。


 圧が跳ね上がる。


 「戦いになる」


 その瞬間。


 消えた。


 「――っ!?」


 太陽の声。


 次の瞬間には――


 「がっ!!」


 太陽の体が、地面に叩きつけられていた。


 見えなかった。


 動きが。


 「太陽!!」


 澪が叫ぶ。


 同時に光を撃つ。


 だが。


 「遅い」


 バル=グラドが腕を振るう。


 空間が削れる。


 「っ!」


 澪が回避。


 ギリギリ。


 でも――


 「――甘い」


 追撃。


 今度は読めない角度。


 「澪、左!!」


 僕が叫ぶ。


 プレディクターが赤く光る。


 ラインが走る。


 澪が踏み外すように空中を蹴る。


 間一髪。


 削除が空を抉る。


 「くっ……!」


 澪の呼吸が荒くなる。


 さっきまでの余裕が消えている。


 それでも。


 「まだ……いける!」


 撃つ。


 連射。


 精度は落ちない。


 むしろ上がっている。


 「――鬱陶しい」


 バル=グラドが手をかざす。


 空間が歪む。


 「透花!」


 僕が叫ぶ。


 「戻します!」


 光。


 澪の位置が巻き戻る。


 ギリギリ回避。


 「助かった……!」


 その間に。


 「どけぇぇぇ!!」


 太陽が再突撃。


 さっきの一撃で吹き飛ばされたはずなのに。


 もう戻ってる。


 透花の支援だ。


 拳に炎を纏う。


 圧縮。


 爆発寸前。


 それを――叩き込む。


 ――ドンッ!!


 バル=グラドの体が、わずかに揺れる。


 「効いてるぞ!!」


 太陽が叫ぶ。


 現地側も動く。


 「今だ、合わせろ!」


 「撃て!!」


 砲撃。


 魔法。


 再び火力が集中する。


 バル=グラドが押される。


 一歩。


 また一歩。


 確実に後退している。


 優勢。


 間違いなく。


 でも――


 「……はは」


 バル=グラドが、笑った。


 低く。


 楽しそうに。


 その目が、光る。


 「いい」


 その瞬間。


 圧が変わる。


 空気が重くなる。


 さっきまでとは違う。


 明確に。


 “何か”が変わる。


 「……来るぞ」


 僕が呟く。


 バル=グラドが、ゆっくりと腕を広げる。


 その動きは大きい。


 隙だらけ。


 普通なら。


 「今です!!」


 現地魔法少女が叫ぶ。


 全火力が再び集まる。


 澪が撃つ。


 太陽が突っ込む。


 砲撃が重なる。


 でも。


 「――遅い」


 バル=グラドの声。


 その瞬間。


 爆発が、逸れた。


 いや。


 “逸らされた”。


 見えない何かに。


 「なっ……!?」


 「防いだ……!?」


 違う。


 防いでない。


 “干渉してる”。


 「位相が……変わってる?」


 澪が呟く。


 正解。


 バル=グラドの周囲の空間が、歪んでいる。


 今までとは違う構造。


 「……なるほど」


 僕は小さく呟く。


 「そう来るか」


 バル=グラドが、ゆっくりと顔を上げる。


 その体が――軋む。


 変質する。


 膨張する。


 「いいぞ」


 低い声。


 「ここまで来たなら」


 笑う。


 明確に。


 「本気で潰してやる」


 その瞬間。


 全身から、異質な気配が噴き出した。


 空気が震える。


 地面が軋む。


 空が歪む。


 変身。


 それが、始まる。


 「――全員、距離取れ!!」


 鬼塚の声。


 でも。


 遅い。


 変化は止まらない。


 バル=グラドの姿が――


 別物へと、変わっていく。


 


 そして。


 “本当の戦い”が、始まろうとしていた。

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