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魔法少女しか見えない怪物を、天才中学生が科学で観測してしまった  作者: 悪癖


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第40話 それでも届かないもの

 その日、その街は“勝っていた”。


 少なくとも――人類は、そう思っていた。


 舞台は、日本から遠く離れた大陸の大都市。


 高層ビル群が立ち並び、数百万人が生活する巨大都市。

 経済、交通、軍事、すべての拠点として機能するその街は、今や――


 対ヴォイド戦において、世界でも最先端の都市だった。


 理由は明確だ。


 天原理久。


 彼が開発した技術が、すでにこの都市にも展開されていたからだ。


 空の上。


 通常なら誰にも見えないはずの歪み。


 だが今は違う。


「フェーズレーダー反応、検知!」


 司令室に声が響く。


 巨大モニターに、空間の裂け目が可視化される。


 その中心に、赤いマーカー。


「出現予測まで、残り二分!」


 従来ならありえなかった。


 ヴォイドは“突然現れるもの”だった。


 だが今は違う。


 理久の技術によって――


 出現前に察知できる。


「迎撃ユニット、展開開始!」


 ビルの屋上。

 道路脇。

 あらゆる場所に設置された装置が起動する。


 無人の砲台。


 対ヴォイド自律迎撃ユニット。


 魔力を帯びた弾丸が装填される。


 発魔所から供給されたエネルギーが、都市全体を巡っている。


 魔法少女がいなくても。


 人類は、戦える。


 空間が裂けた。


 そこから現れる――


 ヴォイド。


 歪んだ影のような存在。


 だが。


「撃て!」


 次の瞬間。


 無数の光弾が、空を埋め尽くした。


 正確な射撃。

 完璧なタイミング。


 出現と同時に――


 ヴォイドは消し飛んだ。


「……撃破確認!」


 歓声が上がる。


 それも当然だ。


 以前なら、被害は避けられなかった。


 だが今は。


 被害ゼロ。


 それが当たり前になりつつあった。


 別の場所。


 倒壊しかけた建物。


 だが、そこにも人はいない。


 すでに避難は完了している。


「転移ゲート、正常稼働!」


 空間が歪み、人々が安全地帯へと転送されていく。


 理久の技術による、安定化された転移装置。


 かつては危険だったそれも、今ではインフラの一部だ。


 さらに。


 負傷者が出たとしても――


「ポーションタブレット使用!」


 錠剤が砕かれ、魔力が発動する。


 傷は一瞬で消える。


 骨折も、出血も、なかったことになる。


 回帰魔法の外部化。


 それは、医療すら変えていた。


 人類は。


 明確に、進化していた。


 そして――


「本日、ヴォイド被害ゼロを達成!」


 司令室に、拍手が響いた。


 誰もが、同じことを思っていた。


 もう負けない。


 そう、思っていた。


 その時だった。


 ――異常値。


「……何だ?」


 オペレーターが眉をひそめる。


「フェーズレーダー……反応が――」


 数値が、跳ね上がる。


 今までに見たことのないレベル。


「こんな……出力、ありえない……!」


 空が、歪む。


 だがそれは、今までのような“裂け目”ではなかった。


 もっと深い。


 もっと濃い。


 まるで――


 空そのものが、別の何かに侵食されていくような。


 そして。


 現れた。


 それは、ヴォイドではなかった。


 “人の形”をしていた。


 だが、その存在感は――


 明らかに異質だった。


「……なに、あれ……」


 誰かが呟く。


 答えはない。


 だが、一つだけ分かることがあった。


 格が違う。


 それは、ゆっくりと地上に降り立った。


 まるで重力など存在しないかのように。


 静かに。


 優雅に。


 そして。


 拳を、軽く振るった。


 ――それだけだった。


 次の瞬間。


 ビルが、消えた。


 崩れたのではない。


 爆発したのでもない。


 存在ごと、削り取られた。


「……は?」


 誰も理解できなかった。


 迎撃ユニットが反応する。


 自動で照準を合わせ、射撃を開始する。


 だが――


 光弾は、届かない。


 その存在の“手前”で、消えた。


 まるで、そこに“触れてはいけない何か”があるかのように。


「全ユニット、最大出力!」


 命令が飛ぶ。


 だが結果は同じ。


 効かない。


 まったく。


 それは、少しだけ首を傾げた。


 まるで、興味もないというように。


 そして。


 今度は、腕を振り上げる。


 ゆっくりと。


 振り下ろす。


 ――世界が、割れた。


 地面が裂け、道路が崩壊し、建物がまとめて吹き飛ぶ。


 衝撃波ですらない。


 ただ、“そうなった”。


 それだけだった。


「撤退! 全員撤退しろ!!」


 叫び声。


 だが遅い。


 転移装置が起動する。


 だが。


 空間が、歪まない。


 干渉されている。


 使えない。


「そんな……」


 誰かが呟く。


 その存在は、ゆっくりと周囲を見渡した。


 そして。


 初めて、声を発した。


「……弱いな」


 低く、冷たい声。


「これが、今の人類か」


 その言葉には、失望すら含まれていた。


 次の瞬間。


 街が、崩壊した。


 迎撃ユニットは機能しない。

 転移もできない。

 回復も、間に合わない。


 すべてが。


 意味をなさない。


 人類が積み上げてきたものが。


 この短期間で手に入れた“優位”が。


 まるで紙のように、踏み潰されていく。


 それは、圧倒的だった。


 抵抗という概念すら、成立しない。


 ただ一方的に。


 ただ理不尽に。


 ただ絶対的に。


 破壊された。


 そして――


 数分後。


 そこには、もう“都市”は存在していなかった。


 瓦礫すら残らない。


 ただ、抉れた大地だけが広がっていた。


 その中心に。


 “それ”は、立っている。


「……退屈だ」


 呟き。


 そして、空を見上げる。


「次だ」


 その姿が、消える。


 静寂だけが残った。


 ――四天王。


 ネメシスの頂点に立つ存在。


 その一角。


 バル=グラド。


 人類はまだ。


 その本当の意味を、理解していなかった。


 だが。


 この日。


 世界は、思い知ることになる。


 技術では届かない領域が、確かに存在するということを。


 そして――


 戦いは、まだ始まったばかりだということを。

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