表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法少女しか見えない怪物を、天才中学生が科学で観測してしまった  作者: 悪癖


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/66

第39話 魔法設計という領域

 結論から言う。


 もう“再現”は終わった。


 ここからは――

 設計だ。


「……は?」


 澪のいつもの反応。

 もはや様式美だなこれ。


「いやだからさ」


 僕はモニターに並んだデータを指差す。


 重力操作。

 音響制御。

 時間遅延。

 空間転移。

 物質変換。


 それぞれの魔法の波形が、幾何学的な模様として重なっている。


「全部分解しただろ」

「……したわね」


「共通構造も見えた」

「……見えたわね」


「じゃあ次は?」


 澪が、嫌そうな顔で答えた。


「……組み合わせる?」


「正解」


 僕は頷く。


「それだけじゃない。編集する」


「編集って何よ……」


「だから」


 僕は画面を操作する。


 重力制御の波形を引き出し、そこに時間遅延のパターンを重ねる。


 さらに、空間転移の位相を部分的に組み込む。


「こうする」


 数値が収束する。


 式がまとまる。


 そして――


「……完成」


 沈黙。


「いやいやいやいや」

「何?」

「何ってそれ、何が完成したのよ!?」


 仕方ない。


「“落下を遅らせながら位置をずらす魔法”」


「意味わかんない!」


 太陽が横から覗き込む。


「え、それってどういうことだ?」


「簡単」


 僕は机の上のペンを持ち上げた。


「落ちる」


 手を離す。


 ペンは普通に落ちる。


「でもこれを使うと」


 再びペンを持つ。


 軽く魔力を流す。


 そして手を離すと――


 ペンは、ゆっくりと落ちた。


 しかも。


 落ちながら、横に滑るように移動して――


 全く違う場所に着地した。


「……は?」


 澪の口が開いたまま止まる。


「これ、今作った」


「今作った!?」


「うん」


 当たり前だろ。


 材料は揃ってた。


 組み合わせただけだ。


「……ねえ理久」

「なに」


「それってもう、“魔法をコピーしてる”んじゃないわよね」


「うん」


 僕は即答する。


「作ってる」


 ゼロから。


 自由に。


――――――


 その日から、やることは変わった。


 “解析”じゃない。


 “設計”だ。


 部室のホワイトボードは、完全に様変わりしていた。


 びっしりと書かれた式。

 重なり合う波形。

 変換効率の計算。


 そして中央に、大きく一行。


 魔法=変換関数


「……ほんとにやるのね」


 澪が呟く。


「何を?」


「魔法の“設計図化”」


「もう終わってる」


「終わってるの!?」


 うん。


 基礎は完成してる。


 あとは応用。


 いくらでも広がる。


「太陽」

「おう?」


「ちょっと魔力出して」


「お、おう!」


 太陽が手をかざす。


 炎が揺れる。


 それを、僕はそのままデータとして取り込む。


「……で?」


「これ使う」


 僕はさっき作った式に、太陽の魔力パターンを組み込む。


 そして出力。


 発動。


 炎が――


 “曲がった”。


「うお!?」


 直進するはずの炎が、途中で軌道を変える。


 まるで、意志を持っているみたいに。


「……これ、何?」


「誘導機能付き炎」


「そんな雑な名前ある!?」


「機能が伝わればいいだろ」


 でも重要なのはそこじゃない。


「魔力さえあれば、何でもできる」


 僕は呟く。


 これはもう、仮説じゃない。


 事実だ。


 魔法は特別なものじゃない。


 ただの――


「再現可能な現象」


 なら。


「設計すればいい」


――――――


 数日後。


 部室に、鬼塚が来た。


「……相変わらずだな」


 入ってきた瞬間に言われる。


「何が?」

「空気が違う」


 まあ分かる。


 ここ、もう普通の部室じゃないし。


「で、今日は?」


「現場からのフィードバックだ」


 来たか。


 僕は椅子を回して向き直る。


「聞かせて」


 鬼塚はタブレットを取り出す。


「まず一つ目」


 画面を操作。


「“負傷者の位置を即座に特定できる手段が欲しい”」


「簡単」


 即答。


「生命反応の魔力パターン拾って、位置特定すればいい」


「……できるのか」


「できる」


 もう設計は見えてる。


「次」


「“逃げ遅れた一般人を、安全に避難させる手段”」


「転移でいい」


「誤差があると危険だ」


「なら座標固定する」


 問題ない。


 精度を上げればいいだけだ。


「……次」


 鬼塚が少しだけ苦笑する。


「“魔法少女がいなくても、一定時間戦線を維持できる装備”」


「もうある」


「は?」


「対ヴォイド自律迎撃ユニット、強化すればいい」


 魔法の組み込み。


 行動パターンの最適化。


 エネルギー供給は発魔所で解決済み。


「量産できる?」


「できる」


 当たり前だ。


 設計は完成してる。


 あとは作るだけ。


 鬼塚が息を吐く。


「……そうか」


 そして、小さく言った。


「現場が欲しがっているものが、全部出てくるな」


「そりゃそうだろ」


 僕は肩をすくめる。


「必要だから作る」


 それだけだ。


――――――


 その日の夜。


 再びモニターに白峰が映る。


『報告は受けているわ』


「早いな」


『現場の変化が速すぎるのよ』


 まあね。


『……確認するわ』


 白峰の目が真っ直ぐこちらを見る。


『あなた、今どこまでできるの?』


 いい質問だ。


 僕は少し考えて――


 正直に答えた。


「魔力の範囲内なら、何でも」


 沈黙。


『……具体的には?』


「回復も、防御も、攻撃も、移動も」


 指を折りながら数える。


「時間操作も、空間操作も、物質変換も」


『……』


「全部、設計できる」


 白峰が目を細める。


『それはつまり――』


「魔法少女じゃなくても、同じことができる」


 言い切る。


『……』


 長い沈黙のあと。


 白峰はゆっくりと息を吐いた。


『本当に、やってしまったのね』


「まだ途中」


 僕は首を振る。


「量産がある」


 ここからが本番だ。


『……どこまで広げるつもり?』


「全部」


 即答。


「必要な場所に、必要な分だけ」


 魔法を。


 配る。


 白峰はしばらく黙っていた。


 そして――


『……分かったわ』


 静かに言った。


『こちらも体制を整える』


 来た。


『現場からの要望は、すべてあなたに回す』


「了解」


『その代わり』


 少しだけ、声が強くなる。


『必ず制御しなさい』


「する」


 できるから。


『……本当に?』


「うん」


 迷いなく答える。


 白峰は、ほんの少しだけ笑った。


『ならいいわ』


 通信が切れる。


――――――


 静かになった部室。


 外はもう暗い。


 でも、ここだけは違う。


 モニターの光。

 装置の駆動音。


 そして――


 積み上がっていく設計図。


「……ねえ理久」


 澪が小さく言う。


「なに」


「これ、もう止まらないわよね」


「うん」


 止める理由がない。


「怖くないの?」


 少しだけ考える。


 そして。


「楽しい」


 それが答えだ。


 だって――


 今、僕は。


 世界のルールを、書き換えてる。


 それ以上に面白いことなんて――


 あるわけないだろ。

お読みいただきありがとうございました!


この作品を

「面白い!」

「続きが気になる!」


と思っていただけましたら、

★評価・ブックマークで応援していただけると嬉しいです。


皆さまの応援が更新の大きな力になります。


今後ともよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ