第37話 治す者の居場所
わたくしは、ずっと“治す側”でした。
傷ついた人を治す。
壊れたものを戻す。
失われかけた命を引き戻す。
それが自分の役目であり、自分にしかできないことだと、そう思って生きてきました。
けれど今、わたくしの目の前には――その“特別”を、技術として分解し、再現し、量産し、ついには街の仕組みそのものへ変えてしまった中学一年生がいます。
「橘、ぼーっとしてる」
不意に声を掛けられて、はっと我に返る。
虚界研究部の部室。
放課後。
窓の外は夕方で、オレンジ色の光が差し込んでいる。
その中で、天原理久くんはいつも通りの顔をしていました。
何かとんでもないことを成し遂げた翌日だというのに、本人だけが何事でもないみたいにタブレットを操作しているのですから、やっぱりこの方はおかしいです。
「……少し、考え事をしていましたの」
「ふーん」
それだけ言って、彼は興味があるんだかないんだかわからない調子で視線をモニターに戻しました。
冷たいわけではないのです。
ただ、必要以上に踏み込まないだけ。
そのくせ、知りたいことがあると急に深くまで踏み込んでくる。
変な人です。
本当に。
けれど――。
その“変”が、今の世界を少しずつ変えている。
それも、間違いなく本当のことでした。
――――――
発魔所が完成してから、世界の空気は明らかに変わりました。
正確には、天霧市の、魔法少女とヴォイド対策に関わる人たちの空気が、ですけれど。
表向きには、そこまで大々的には報じられていません。
魔法少女協会も自衛隊も、この技術の重要性は理解していても、いきなり公表して混乱を招きたくはないのでしょう。
ですから一般の方々から見れば、最近ちょっと対ヴォイド戦が安定してきた、くらいの認識かもしれません。
でも、現場にいる者にとっては違います。
変化は、あまりにもはっきりしていました。
まず、ポーションタブレット。
理久くんがわたくしの回帰魔法をもとに作った、錠剤型の魔法道具。
魔法少女でなくても使えて、怪我や軽度の状態異常なら即座に“正常な状態”へ戻せる。
最初に見たときは信じられませんでした。
いえ、見たときだけではなく、実際に使われているのを見てもなお、しばらくは現実感がありませんでした。
あれは、わたくしの魔法です。
正確には、わたくしの魔法を解析して外部化したもの。
だから似ているのは当然なのですが、似ている、という言葉で片付けるには、あまりにもその本質を掴みすぎていました。
戦闘の後、魔法少女の方が自分でタブレットを使って擦り傷や打撲を治していく。
支援スタッフの方が、巻き込まれて怪我をした方に処置として使う。
前ならわたくしが呼ばれていた場面で、今は“道具”が先に役割を果たしてしまう。
それは確かに、被害を減らしました。
明らかに。
出血多量で危なかった方が、搬送中に持ち直すようになった。
ヴォイド戦の後、治療班が到着するまでの時間をしのげるようになった。
魔法少女の方々も、軽傷ならすぐ復帰できますから、継戦能力が上がった。
そして何より、“わたくしがその場にいなければ助けられなかった人”が減ったのです。
それは、本来なら喜ぶべきこと。
喜ばなければいけないこと。
わかっています。
頭では、よくわかっています。
けれど――。
「……複雑そうな顔してるな」
あの日、発魔所の視察の帰り道。
鬼塚さんにそう言われて、わたくしは少しだけ驚きました。
「そんなにわかりやすいですか?」
「わかりやすい、というほどではない。ただ、考え込んでる時の顔はしてる」
鬼塚さんは、自販機で買った缶コーヒーを片手に、少し離れた場所から現場を見ていました。
工業地帯の一角に建てられた発魔所は、夕暮れの空の下でも静かに稼働を続けています。
目に見える煙も、派手な光もありません。
それなのに、あれが今この街の魔法運用を支え始めているのだと思うと、不思議な感じがしました。
「……わたくし、自分の役目について考えていましたの」
「役目?」
「はい」
少しだけ間を置いて、わたくしは言いました。
「わたくしは、ずっと“治す人”でした。治癒魔法の使い手として、誰かが傷つけばわたくしが必要になる。そういう立場でやってきました」
「まあ、そうだろうな」
「でも今は、わたくしがいなくても回る場面が増えています」
鬼塚さんは何も言わずに聞いてくれました。
「もちろん、いいことですの。助かる方が増えるのですから。……それでも、少しだけ」
「寂しいか」
言い当てられて、胸の奥がきゅっとなりました。
寂しい。
その言葉は、たぶん正しいです。
「……はい」
わたくしは素直に頷きました。
「そんなふうに思う自分が、少し嫌でもあります」
「なんでだ」
「人が助かるなら、それでいいはずですもの。なのに、自分にしかできないことが減るのを惜しんでいるみたいで……」
「惜しんでるんだろ」
鬼塚さんはあっさり言いました。
「悪いことじゃない」
「でも」
「人間だからな」
短い言葉。
けれど、不思議と責められている感じはしませんでした。
「自分の価値が、自分だけの役割に結びついてることはある。特に、お前みたいにずっと“誰かを助ける側”をやってきたやつなら余計だ」
「……」
「その役割を他の手段に代替される。そりゃ、揺れる」
鬼塚さんは缶コーヒーを一口飲んで、少しだけ笑いました。
「むしろ何も感じない方が変だろ」
わたくしは、その言葉に少しだけ救われました。
ああ、そうか。
揺れてしまうこと自体は、別に間違いではないのだと。
「ただ」
鬼塚さんが続けます。
「それでお前の価値がなくなるかっていうと、そんなわけない」
「……そう、でしょうか」
「ポーションタブレットで代替できるのは、あくまで一部だ。高難度の回復、広範囲への対応、戦況を見ながらの最適な治療、判断……そういうのは、まだ人にしかできない」
「……」
「それに」
鬼塚さんは発魔所の方へ視線を向けました。
「理久がやってることは、“お前を不要にする”ことじゃない。“お前一人に背負わせてたものを、分散させる”ことだ」
その言葉に、わたくしは息を呑みました。
分散。
そう言われると、少し見え方が変わります。
「……一人に背負わせていたものを、ですか」
「違うか?」
違わない。
むしろ、ずっとその通りでした。
わたくしは回復役でした。
強力な治癒魔法の使い手でした。
だから、傷ついた方が出ればまず呼ばれるのはわたくしでしたし、“いざという時の最後の砦”として期待されてもいました。
それは誇らしいことでもありました。
必要とされているのだと実感できることは、救いでもありました。
けれど同時に、重かった。
わたくしが間に合わなければ助からない。
わたくしが判断を誤れば取り返しがつかない。
わたくしが倒れれば、その分だけ救える命が減る。
いつの間にか、そういう考え方が当たり前になっていたのです。
そして、それを“仕方ないこと”として受け入れていました。
でも、理久くんは違いました。
その構造自体を、おかしいと判断した。
わたくしが特別だから、その特別を前提に組み立てる。
わたくしがいなければ駄目だから、わたくしを戦場に縛り付ける。
そういう仕組みそのものを、彼は当然のように壊しにきたのです。
あの方は、本当に容赦がありません。
常識にも。
前提にも。
“これまでそうだったから”というもの全部に。
だから、怖い。
でも――眩しくもあるのです。
――――――
わたくしが魔法少女になった頃のことを、今でも時々思い出します。
初めて誰かを治した時。
初めて“助かった”と言われた時。
初めて、自分の魔法が誰かの命をつなぎ止めたと実感した時。
嬉しかったです。
とても。
自分にできることがある。
自分の力が、誰かの苦しみをなくせる。
その事実は、わたくしにとって誇りでした。
回帰魔法は、派手ではありません。
澪さんのように華やかな光で敵を撃ち抜くわけでも、太陽さんのように勢いよく前線を切り開くわけでもない。
戦っていても目立つのは攻撃役の方々ですし、治癒は“できて当たり前”みたいに扱われることも少なくありません。
けれど、それでもよかったのです。
最後に誰かを助けられるのなら。
折れかけた流れを戻せるのなら。
倒れた方を立たせられるのなら。
それで十分でした。
いいえ、十分だと思おうとしていたのかもしれません。
だって、本当は怖かったから。
治せない時が。
間に合わない時が。
“わたくしの魔法でもどうにもならない”現実があることが。
理久くんが解析して制限を緩和するまで、わたくしの究極の回帰――ルクス・リバースには厳しい時間制限がありました。
死亡後一分以内。
その一分という数字は、短いです。
本当に、短い。
その場にいなければいけない。
迷ってはいけない。
他の方を優先している間に、手遅れになることもある。
“助けられるはずなのに、間に合わない”。
それがどれほど苦しいか。
どれほど自分を責めるか。
たぶん、理久くんは理屈としては理解していても、感情としては完全にはわからないと思います。
あの方はそういう人です。
悪い意味ではなく、視点が違うのです。
でも、あの方はその代わりに、そういう苦しみを“仕組みごと消す”方向へ進む。
わたくしが一人で背負わなくていいように。
間に合わないという事態そのものを減らせるように。
わたくしがいない場所でも、最低限の“助かる可能性”が生まれるように。
それをやってしまった。
しかも、あっさりと。
「……理不尽ですわよね」
部室で小さく呟くと、そばにいたミルが低い声で返しました。
「何がでございますか、お嬢様」
「理久くんです」
「左様でございますか」
「もっと驚いてくださいまし」
「今さらでございますので」
ミルはいつもの渋い声で、平然と言いました。
「お嬢様が戸惑われるのも無理はありません。己の拠って立つ特別性を、あそこまで鮮やかに一般化されれば」
「……言い方がひどくありません?」
「事実を整理したまででございます」
否定できません。
わたくしは椅子にもたれ、天井を見上げました。
「ミル、わたくし……少しだけ、自分が薄くなったような気がしていましたの」
「薄く」
「ええ。これまで“わたくしだからできること”だったものが、“道具でもできること”になってしまって。そうしたら、自分の輪郭が曖昧になったみたいで」
「……」
「わたくしは、回帰魔法の使い手であることに、思っていた以上に依存していたのかもしれません」
口にすると、少しだけ胸が痛みました。
依存。
あまり認めたくない言葉です。
でも、たぶんそうなのでしょう。
“治せること”が、自分の価値の大きな部分になっていた。
だから、それが他者にも可能になったことで揺らいだ。
「ですが、お嬢様」
ミルは穏やかに言いました。
「それは能力への依存ではなく、責任感の裏返しでもございましょう」
「責任感……」
「お嬢様は、助けられるなら助けたいと常に考えてこられました。己にできるのであれば、己がやらねばならぬ、と」
「……はい」
「それゆえ、それが己のみの役割でなくなったことに安堵するより先に、喪失を覚えてしまう。人として、自然な反応でございます」
自然。
また、その言葉です。
今日はどうにも、そういう言葉に助けられてばかりでした。
「それに」
ミルは続けました。
「お嬢様の魔法は、道具になった今なお、“お嬢様そのもの”ではございません」
「……どういう意味ですの?」
「ポーションタブレットは、回帰魔法の一機能を切り出したもの。ですが、お嬢様が戦場でなされてきたことは、それだけではありますまい」
その言葉に、わたくしは少しだけ目を瞬かせました。
「……わたくしが、戦場でしてきたこと」
「治す順番を決め、誰を先に立たせ、どこを支えれば崩れぬかを見極め、皆の不安を抑え、倒れそうな心を支える。お嬢様は“傷を戻す装置”ではなく、“場を立て直す人”でございます」
「……」
「それは、いかなる量産技術をもってしても、容易く置き換えられるものではございません」
ミルの言葉は、いつも少しだけ大げさです。
でも今日は、不思議と胸に染みました。
ああ、そうか。
わたくしは、ただ治していたわけではない。
みんなの様子を見て。
無茶をしそうな方を止めて。
次に倒れそうな方を予測して。
戦線が崩れないように立ち回って。
“治癒魔法の使い手”である以上に、“治癒役としてその場を支える人”であったのです。
だったら。
ポーションタブレットが普及しても、全部がなくなるわけではない。
むしろ、基本的な回復を道具が担うなら、わたくしはもっと別の役割に力を割けるのかもしれません。
より難しい判断に。
より危険な局面に。
より大きな被害を防ぐために。
そう考えると――少しだけ、胸のつかえが軽くなった気がしました。
――――――
「橘」
その日の帰り際。
理久くんに呼び止められました。
すでに他の方々は先に部室を出ていて、残っていたのはわたくしと彼だけです。
「はい?」
「この前の戦闘データ、見た?」
「ポーションタブレットの使用ログのことですの?」
「そう」
「見ましたわ。軽傷者の現場復帰率が上がっていました」
「うん。あと、初動治療の成功率も」
理久くんはモニターを見たまま言います。
「橘が出るまでもないケースが増えてる」
「……はい」
その言葉に、まだ少しだけ胸がざわつきました。
けれど、前よりはましです。
「それについて、どう思う?」
その問いに、わたくしは少し驚きました。
理久くんが、こういうふうに“どう思うか”を真正面から聞いてくるのは珍しかったからです。
普通なら必要なデータだけ取って、結論だけ出す方ですのに。
「……正直に申し上げますと」
「うん」
「最初は、複雑でした」
「だろうね」
あっさり肯定されました。
「驚きませんのね」
「驚く要素ある?」
「もう少し、こう……慰めるとか」
「必要?」
「そういうところですわよ」
わたくしが少しだけ睨むと、理久くんは珍しく小さく笑いました。
「でもさ」
彼は椅子をくるりと回して、初めて正面からこちらを見ました。
「橘がそう思うの、別におかしくないよ」
「……」
「自分の一番大きい武器を、他人でも使えるようにされたら、そりゃ揺れるでしょ」
「……さらっと言いますわね」
「事実だから」
本当に、この方は変に飾りません。
でも、その不器用なくらい真っ直ぐなところは、嫌いではありませんでした。
「理久くんは」
わたくしは少し迷ってから、尋ねました。
「わたくしの魔法を外部化して、量産して……わたくしがどう思うか、考えたことはありまして?」
「ある」
「……あるんですの?」
「あるよ」
即答でした。
「意外ですわ」
「失礼だね」
「普段の行いです」
「否定はしない」
否定はしないのですね。
「どう考えましたの?」
理久くんは少しだけ視線を外して、それから言いました。
「たぶん、嫌だろうなって」
「……」
「自分にしかできないことだったのに、って思うだろうし。取られた感じもするかもしれないし」
思っていた以上に、わかっていました。
少しだけ、胸が詰まります。
「じゃあ、どうして」
「必要だから」
きっぱりと。
一切の迷いなく、彼はそう言いました。
「橘一人じゃ足りない」
「……」
「足りないっていうのは、能力が低いとかじゃなくて、物理的に数が足りないってこと。街全部、国全部、世界全部を一人じゃカバーできない」
それは、そうです。
反論の余地もありません。
「だから増やす」
「……」
「橘の価値を下げたいわけじゃないよ」
理久くんは淡々と続けます。
「むしろ逆。橘の魔法がそれだけ価値あるから、切り出して配りたい」
「……それ、褒めてますの?」
「褒めてる」
「言い方に難がありますわ」
「知ってる」
知っているのに直さないのですね。
でも。
でも、その言葉は、思った以上にまっすぐ胸に届きました。
わたくしの魔法が価値あるから。
価値があるからこそ、広げたい。
わたくし一人のためではなく、もっと多くの方を助けるために。
「あと」
理久くんが付け加えます。
「橘にしかできないこと、別に消えてないし」
「……そう、でしょうか」
「うん」
「なぜそう思いますの?」
「橘、戦場だと周り見て動いてるでしょ」
その指摘に、思わず目を見開きました。
「怪我人治すだけじゃなくて、前衛の動きとか、退路とか、誰が無茶しそうかとか、ちゃんと見てる」
「……」
「ポーションタブレットじゃそこまではできない」
理久くんは本当に、見ている時は細かいところまで見ているのです。
興味があることに限るのでしょうけれど。
「だから、橘がいらなくなることはないよ」
「……」
「負担は減るけど」
その言葉に、わたくしはしばらく何も言えませんでした。
負担は減る。
それは、たぶん――わたくしが一番、認めるべきことでした。
これまでずっと、“治せる自分がやらなければ”と思っていた。
それができるから引き受けてきたし、引き受けるべきだと思っていた。
でも、減っていいのです。
負担は。
背負うものは。
一人で抱え込む前提は。
理久くんは、そこを壊そうとしている。
わたくしから役目を奪うためではなく。
わたくしが潰れないようにするためでもあるのかもしれません。
「……理久くん」
「なに」
「あなた、本当にとんでもない方ですわね」
「知ってる」
「褒めているのか呆れているのかわからないでしょう?」
「どっちでもいい」
そう言って肩をすくめる様子が、妙に彼らしくて、わたくしは少しだけ笑ってしまいました。
「わたくし、まだ完全には整理できていませんの」
「うん」
「自分の魔法が広まっていくことも。自分の役目が変わっていくことも。嬉しい気持ちと、寂しい気持ちと、安心と、不安と……いろいろ混ざっています」
「だろうね」
「でも」
わたくしは息を吸って、ゆっくりと言います。
「今は、前より少しだけ前向きに考えられそうですわ」
「ならよかった」
「ええ」
「じゃあ次、別の回帰処理の分岐試すから手伝って」
「余韻をくださいまし!」
「必要?」
「そういうところですわよ!」
思わず声を上げると、理久くんはほんの少しだけ楽しそうに笑いました。
ああ、本当に。
この方は、人の心の機微に寄り添うのが上手いわけではありません。
優しく包み込んでくれるタイプでもありません。
むしろ、遠慮なく世界の形を変えていく側の人です。
でも――。
壊すべき前提と、残すべき価値を、彼なりにちゃんと見ている。
だから、怖いのに、信じられる。
危ういのに、ついていきたくなる。
わたくしの魔法を越えて、広げて、量産して。
それでもなお、“橘透花という人間の役割”は見失っていない。
それはたぶん、とても大事なことでした。
わたくしは“唯一の治す者”ではなくなるのかもしれません。
でもきっと、“治すことを中心に場を支える者”ではいられる。
そしてそれは、道具が増えた今だからこそ、もっと遠くまで届く役割なのかもしれません。
窓の外は、もうすっかり暗くなっていました。
どこかでまた、誰かが傷つくかもしれない。
どこかでまた、ヴォイドが現れるかもしれない。
けれど以前よりも少しだけ、この街には備えがある。
わたくし一人に頼らなくても、助かる命が増えている。
それは――たぶん、悔しくて、嬉しいこと。
そしてその中心にいるのが、あの小生意気で、とんでもなくて、けれど誰よりも先に未来を見ている少年なのだと思うと。
「……本当に、変な方ですわ」
小さく呟くと、ミルが後ろで静かに応じました。
「ですが、お嬢様」
「ええ」
「お嫌いではありますまい」
わたくしは、少しだけ考えてから。
そっと微笑みました。
「……信頼は、していますわ」
それはまだ、単純な好意と呼ぶには早いのかもしれません。
けれど少なくとも。
自分の役目が変わっていくこの先を、あの方の隣で見てみたいと――今のわたくしは、そう思っていました。
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