表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法少女しか見えない怪物を、天才中学生が科学で観測してしまった  作者: 悪癖


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/63

第17話 人工ピクシスと、最初の魔法少年

「できた」


数日ぶりに虚界研究部の部室に入った僕は、開口一番そう言った。


机で資料を確認していた澪と鬼塚が、同時に顔を上げる。


「……できたって、何が?」


澪が眉をひそめる。


鬼塚はすでに察しているのか、静かに腕を組んだままこちらを見ている。


僕は短く答えた。


「人工ピクシス。完成」


部室の空気が、ぴたりと止まった。


澪がゆっくり立ち上がる。


「……え、ちょっと待って。理久くん、それって……」


「そのままの意味。人工的に作ったピクシス」


「……早すぎない?」


澪は半分呆れたような顔で言った。


鬼塚も静かに口を開く。


「フェーズビーストの完成から、まだ数日だが」


「フェーズビーストより大変だった」


僕は即答した。


その言葉に、澪が意外そうな顔をする。


「え? でもフェーズビーストってかなりすごい技術じゃなかった?」


「すごいけど、あれは“ヴォイド寄り”だからまだ楽」


僕は机の上の端末を操作し、解析データを表示する。


「ヴォイドは単純。攻撃性と位相エネルギー中心の構造。戦闘用としては設計しやすい」


「……それで楽って言うのね」


澪が小さくため息をついた。


僕は続ける。


「でもピクシスは違う。契約機能、魔法補助機能、成長機能、意思疎通機能……全部別系統の技術が混ざってる」


鬼塚が頷く。


「戦闘兵器ではなく、支援ユニットだからか」


「そう。しかも契約者との相互作用前提」


僕は肩をすくめた。


「単体で完成しない設計。だからフェーズビーストよりずっと厄介」


「……なるほど」


澪が納得したように小さく頷いた。


「それに」


僕は次のデータを表示する。


「量産性も悪い」


「え?」


「フェーズビーストは素材あれば増やせる。でも人工ピクシスは契約者ごとに調整が必要」


鬼塚の表情が少し引き締まる。


「……つまり」


「人工ピクシス量産は基本無理」


僕はあっさり言った。


澪がすぐに反応する。


「やっぱりそうなるのね……」


「個体ごとに契約適性調整が必要。大量生産は非現実的」


「でも……それじゃ」


「少数精鋭なら問題ない」


僕はそう言いながら、机の横に置いていたケースを持ち上げた。


「それに、もう一つメリットがある」


澪が首を傾げる。


「メリット?」


「ピクシスの欠点、ひとつ潰した」


鬼塚が目を細める。


「欠点?」


僕はケースを机の上に置きながら言った。


「年若い少女しか契約できないってやつ」


澪が目を見開いた。


「……え?」


「人工だから調整できる。男とも契約できるようにした」


数秒、沈黙が落ちる。


「……えええ!?」


澪が思わず声を上げた。


「それって、すごいことじゃない!?」


「まあね」


鬼塚も明らかに驚いた表情をしている。


「それは……軍としても極めて重要な技術だな」


「ただし」


僕は続けた。


「起動試験で自分で使った」


澪が固まる。


「……え?」


「契約プロセスの確認が必要だったから」


僕は何でもないように言った。


「だからこの個体、僕と同年代の男にしか契約できない状態になってる」


澪が頭を抱えた。


「ちょっと待って、理久くんそれ……」


「初期化はできる」


僕は軽く言う。


「でもまあ、大人とかが使いたいなら別の作ればいい。この個体はこのままにする」


鬼塚が少し苦笑する。


「……随分と贅沢な判断だな」


「試作機だし」


僕はロックを解除しながら言った。


「それに当てがある」


澪が顔を上げる。


「当て?」


「うん」


僕はケースの蓋を開けた。


中にあった小さな存在が、ふわりと浮かび上がる。


手のひらサイズ。


白を基調とした半透明の身体。


小さな羽がゆっくりと動いている。


ピクシスの姿。


ただし――


表情がない。


感情の色が一切浮かんでいない、無機質な瞳。


その存在は静かに空中に浮かび、


「起動完了。環境スキャン開始」


機械のような声で言った。


澪が目を丸くする。


「……ピノと全然違う」


「学習前だから」


僕は説明する。


「契約者の望む方向に成長する学習機能つけてる。今はまだ何も学習してない」


鬼塚が興味深そうに見つめる。


人工ピクシスはゆっくりと部室を見回す。


「識別対象登録」


「天原理久」


「星川澪」


「鬼塚錬」


淡々と読み上げる。


澪が少し苦笑する。


「……ほんとにAIみたい」


「そういう設計」


僕は頷いた。


「それと」


僕は続ける。


「個体名については、正式な契約者につけてもらえってことにしてる」


「え?」


澪が首を傾げる。


「名付けも契約プロセスの一部」


「なるほど……」


「だからまだ名無し」


人工ピクシスは静かに空中で待機している。


まるで指示を待つ機械のように。


僕はそれを見上げてから言った。


「で、さっき言った当て」


澪が身を乗り出す。


「……誰なの?」


僕はポケットからスマホを取り出した。


「もう呼んでる」


鬼塚がわずかに目を細める。


「このタイミングということは……」


「うん」


僕はスマホの画面を確認する。


ちょうどその時――


コンコン、と軽いノックの音が響いた。


「どうぞ」


僕がそう言うと、すぐにドアが開く。


「おー、やっぱここだったか」


入ってきたのは、見慣れた短髪の少年だった。


朝比奈太陽。


僕の幼馴染であり、隣の家に住んでるやつ。


運動バカで、頭は残念だけど、性格はやたらと明るい。


そして今は――まだ、何も知らない一般人だ。


太陽は部室に入った瞬間、足を止めた。


「……おお」


周囲を見渡す。


壁一面のモニター。


机の上に並ぶ測定装置。


透明なケースに収められた素材サンプル。


そして、天井から吊られた配線やセンサー類。


普通の中学校の部室とは思えない光景。


「……なんか、すげぇなここ」


太陽が素直に言った。


「前来た時と全然違うじゃん」


「設備増えたから」


僕は軽く答える。


「虚界研究部になってから、予算ついた」


「予算ってレベルじゃねぇだろこれ……」


太陽は近くの機材を覗き込む。


「これ何? なんか未来っぽい」


「フェーズレーダーの簡易モニター」


「……わかんねぇけどすごそう」


太陽は頷いた。


それから僕の方を見て、にやっと笑う。


「つーか、いきなり呼び出してどうしたー?」


いつもの軽い口調。


完全に気安い関係。


澪が少し驚いた顔をしている。


僕はいつも通り答える。


「用事あったから」


「そりゃそうだろ」


太陽が笑う。


「でも理久から呼ばれるの珍しくね? いつも俺が来る側じゃん」


「今日は来てもらう必要あった」


「ふーん?」


太陽は首を傾げる。


そのとき、ようやく澪と鬼塚の存在に気付いた。


「あ」


少しだけ姿勢が正しくなる。


「えっと……」


澪が軽く会釈する。


「初めまして。星川澪です。二年です」


太陽も慌てて頭を下げた。


「朝比奈太陽です。一年です」


「はい、よろしくお願いします」


澪は優しく微笑む。


太陽が少し安心したように笑う。


「えっと……理久の知り合いですか?」


「虚界研究部の部員です」


「おお、部員いたんだ」


太陽が素直に言った。


澪が苦笑する。


「はい、一応……」


次に鬼塚が一歩前に出た。


「鬼塚錬だ」


太陽が一瞬固まる。


鬼塚は自衛官らしい引き締まった体格。


年齢も明らかに大人。


制服ではないが、雰囲気で只者じゃないと分かる。


「……えっと」


太陽が少し戸惑う。


「先生……ですか?」


鬼塚が小さく笑う。


「違う。特別顧問みたいなものだ」


「特別顧問?」


太陽がさらに困惑する。


僕が補足する。


「自衛隊」


「……え?」


太陽が固まった。


「え、自衛隊!?」


「ヴォイド対策部隊」


「……マジで?」


太陽が僕を見る。


「理久、お前なんかすごいことやってね?」


「普通」


「普通じゃねぇよ!」


太陽が思わずツッコんだ。


澪がくすっと笑う。


そのやり取りを見ながら、僕はポケットから一つの眼鏡を取り出した。


黒縁の、少しだけ無骨なデザインの眼鏡。


フェーズグラス。


僕はそれを太陽に差し出す。


「これ、かけて」


「え?」


太陽が首を傾げる。


「何これ?」


「いいから」


「……まあいいけど」


太陽は素直に受け取り、眼鏡をかける。


そして――


「……うわっ!?」


太陽が思わず声を上げた。


「なんだこれ!?」


太陽の視線の先。


そこには――


ふわりと空中に浮かぶ、小さな存在。


白く半透明の身体。


小さな羽を動かしながら静かに浮遊している人工ピクシス。


太陽が思わず指をさす。


「なんか浮いてる!?」


澪が太陽の反応を見て、小さく息を吐いた。


「……見えてる」


鬼塚も静かに頷く。


太陽は驚いたまま、人工ピクシスをじっと見る。


「え、これ何? ドローン? いや違う……」


人工ピクシスがゆっくりと太陽の方へ移動する。


「うおっ」


太陽が一歩後ずさる。


「来た来た来た!」


「安心して」


僕は言った。


「危険じゃない」


太陽は恐る恐る人工ピクシスを見る。


「……なんか、生きてるっぽくね?」


「うん」


僕は短く答えた。


太陽が僕を見る。


「理久……これ何?」


僕はその視線を受け止めて、静かに言った。


「人工ピクシス」


「……は?」


太陽が固まる。


数秒の沈黙。


そして――


「……え、人工って何?」


太陽がゆっくり聞き返す。


僕は淡々と答えた。


「人工的に作ったピクシス」


「……は?」


太陽が完全に固まる。


「ピクシスって……何?」


澪が一瞬だけ僕を見る。


説明するか、という視線。


僕は軽く頷いた。


「ヴォイドって知ってる?」


太陽が頷く。


「ああ、ニュースでやってるやつだろ? なんか魔法少女が戦ってるやつ」


「そう」


僕は続ける。


「魔法少女はピクシスって存在と契約して魔法使ってる」


「……」


太陽が黙る。


人工ピクシスを見て、また僕を見る。


「……つまり」


「それ、魔法使うためのやつ」


数秒の沈黙。


太陽が人工ピクシスをまじまじと見つめる。


「……これで?」


「うん」


太陽の顔に、徐々に好奇心が浮かぶ。


僕はその表情を見て、言った。


「太陽」


「ん?」


「魔法使ってみたくない?」


太陽の目が、一瞬で輝いた。


「……使えんの!?」


「契約すれば」


「マジで!?」


太陽が前のめりになる。


その瞬間――


「え、ちょっと待って」


澪が慌てて割って入った。


「理久くん、それ……」


澪は太陽を見てから、小さく声を落とす。


「完全に民間人ですけど……いいんですか?」


その言葉で、部室の空気が少し引き締まる。


僕は肩をすくめる。


「問題ない」


「でも……」


澪は困惑した表情のまま言う。


「魔法少女って……ヴォイドと戦うんですよね?」


「うん」


「危険すぎませんか……?」


その言葉に、太陽が少し驚いた顔になる。


「……戦う?」


僕は頷く。


「魔法少女と同じ。魔法少年になって、ヴォイドと戦う」


太陽の表情が、わずかに真剣になる。


その時、鬼塚が口を開いた。


「朝比奈」


太陽が鬼塚を見る。


鬼塚は落ち着いた声で言った。


「リスクはある」


太陽の表情が引き締まる。


「ヴォイドは危険な存在だ。命の危険もある」


澪が小さく頷く。


鬼塚は続ける。


「だが、メリットもある」


「……メリット?」


太陽が聞き返す。


「まず、魔法の戦闘能力。これは通常兵器では対抗できないヴォイドに対する有効戦力だ」


鬼塚の視線が人工ピクシスに向く。


「さらに、理久の技術支援」


太陽が僕を見る。


鬼塚が続ける。


「フェーズシールド、フェーズレーダー、フェーズビースト……」


「……あの犬?」


太陽が思い出したように言う。


「うん」


僕は軽く指を鳴らす。


すると――


何もない空間から、アルゴが姿を現した。


位相潜航を解除したアルゴが、僕の横に静かに立つ。


「うおっ!?」


太陽が飛び退いた。


「犬!? いついた!?」


「アルゴ」


僕が呼ぶと、アルゴは静かに尻尾を振る。


太陽が目を見開く。


「……何これ、かっこよ……」


鬼塚が言う。


「このような支援戦力がある。単独で戦わせるつもりはない」


澪も小さく頷いた。


「私もいます」


太陽が澪を見る。


「え?」


澪が少し照れたように言う。


「私、魔法少女なので」


「……え?」


太陽が固まる。


「え?」


「スターライト・ミオ」


澪が小さく言った。


太陽の口がゆっくり開く。


「……えええ!?」


僕はその反応を横目に見ながら言った。


「だから、完全に一人で戦うわけじゃない」


太陽はしばらく黙ったまま考える。


人工ピクシスを見る。


アルゴを見る。


僕を見る。


そして――


少しだけ笑った。


「……なんか、すげぇな」


その笑顔は、いつもの太陽のものだった。


「魔法使えるんだろ?」


「うん」


「空飛んだり?」


「できる」


太陽の目がさらに輝く。


「かっこいい技とか?」


「できる」


太陽は、少しだけ考えてから――


にやっと笑った。


「……やる」


澪が少し驚いた表情になる。


「いいの?」


太陽が頷く。


「なんか面白そうだし」


そして僕を見る。


「それに」


太陽は笑った。


「理久がやってるなら、絶対すげぇだろ」


僕は小さく息を吐いた。


「じゃあ決まり」


人工ピクシスが静かに太陽の前に浮かぶ。


太陽がその存在を見つめる。


「……これと契約すればいいんだよな?」


僕は頷いた。


「名前つけて」


「名前?」


「契約プロセスの一部」


太陽は人工ピクシスをじっと見つめる。


手のひらサイズの、小さな存在。


ふわふわと浮かび、静かに太陽を観測している。


無機質な瞳。


まだ何も学習していない、空白の存在。


太陽は少しだけ首を傾げた。


「……そうだな」


数秒考えて――


ぱっと笑う。


「空飛んでるし……ソラ!」


澪が思わず小さく笑う。


「シンプルね……」


僕は頷く。


「いいと思う」


太陽が人工ピクシスに向かって言う。


「お前、今日からソラな」


その瞬間――


人工ピクシスの羽が、わずかに光った。


「名称登録」


機械的な声が響く。


「個体名:ソラ」


「契約プロセス開始」


部室の空気が、わずかに震えた。


太陽の前に浮かぶソラが、淡く光を放つ。


細い光の糸のようなものが、太陽へと伸びる。


「うお……?」


太陽が少し驚く。


光は太陽の胸元に触れ――


そのまま、すっと消えた。


一瞬の静寂。


そして――


「契約完了」


ソラの声が、再び響く。


同時に。


ソラの瞳の色が、わずかに変わった。


先ほどまでの無機質な光が、ほんの少し柔らかくなる。


「契約者:朝比奈太陽」


「契約者情報解析開始」


太陽が瞬きをする。


「……なんか、頭の中に……」


僕は頷く。


「契約パス」


「契約パス?」


「情報共有用の接続」


ソラの瞳が、わずかに点滅する。


「契約者の嗜好解析開始」


「……?」


太陽が首を傾げる。


その瞬間。


ソラの声が、わずかに変化した。


「……朝比奈太陽。よろしく」


先ほどよりも、ほんの少しだけ柔らかい口調。


澪が目を見開いた。


「え……?」


鬼塚もわずかに眉を動かす。


ソラが続ける。


「契約者の心理的負担軽減のため、会話インターフェースを調整します」


太陽がぽかんとする。


「……え?」


ソラの瞳がさらにわずかに光る。


「口調最適化」


「親和性優先モード起動」


そして――


「……よろしくな、太陽」


今度は、明らかに変わっていた。


少しフランクな、自然な口調。


太陽が目を見開く。


「……おお」


澪が思わず言う。


「ちょっと待って……今……」


鬼塚も驚いた様子で言った。


「契約と同時に学習したのか……?」


僕は軽く頷く。


「契約パスから、人格調整」


「そんなことが……」


澪が驚いたままソラを見る。


ソラが太陽の周りをふわりと回る。


「契約者の行動パターンを予測」


「サポートモード移行」


太陽が笑う。


「……なんか、いいな」


ソラが太陽の前に止まる。


「太陽の相棒として最適化する」


その言葉に、太陽の表情がさらに明るくなる。


「相棒か」


太陽が笑う。


「いいじゃん、ソラ」


ソラの羽が、ほんの少しだけ軽やかに動いた。


澪が小さく息を吐く。


「……すごい」


鬼塚も頷く。


「契約直後でここまで変化するとは……」


僕はソラを見ながら言った。


「契約パス経由でリアルタイム学習してる」


「理久くん……それ……」


澪が少し呆れたように言う。


「普通じゃないわよ」


「そう?」


僕が肩をすくめると、


その時――


ソラが太陽の肩の横に浮かぶ。


「太陽」


「ん?」


「魔法の初期化を開始する」


太陽の目が一瞬で輝いた。


「……おお!」


ソラの身体が、淡く光り始める。


同時に、太陽の体の周囲に、微かな光が集まり始めた。


「うお……なんか、体が軽い……」


太陽が驚いたように手を握る。


「魔法回路の構築中」


ソラが静かに言う。


澪が思わず身を乗り出す。


「魔法回路って……今作ってるの?」


僕は頷く。


「人工ピクシスだから、契約と同時に最適化できる」


鬼塚が感心したように言う。


「通常のピクシスよりも効率が良いということか」


「うん」


太陽の足元に、淡い光が広がる。


「うわ……」


太陽が自分の手を見つめる。


指先に、わずかに光が集まっていた。


「魔法属性解析」


ソラが続ける。


「契約者の適性を測定」


「属性決定中」


太陽の周囲の光が、徐々に色を帯びる。


赤。


橙。


そして――


金色のような光。


澪が小さく息を呑む。


「……光?」


僕は頷く。


「太陽っぽい」


鬼塚がわずかに笑う。


「名前通りだな」


ソラの声が続く。


「適性属性確認」


「陽炎系統魔法」


太陽がぽかんとする。


「……ようえん?」


僕が補足する。


「炎と光の混合系」


太陽の顔が一気に明るくなる。


「かっこよくね!?」


澪が苦笑する。


「そういうところは変わらないのね……」


ソラが続ける。


「魔法回路構築完了」


「初期魔法セット完了」


太陽の体を包んでいた光が、すっと収束する。


同時に――


太陽の手のひらに、小さな光が灯った。


「おおっ!?」


太陽が目を見開く。


手のひらの上で、小さな炎のような光が揺れる。


「……すげぇ」


太陽が息を呑む。


その光は、まるで呼吸するように揺れていた。


ソラが静かに言う。


「魔法使用可能」


太陽が僕を見る。


「理久……」


「うん」


太陽の表情が、ゆっくり笑顔になる。


「俺……魔法使ってる……」


澪も、少し嬉しそうに笑った。


「おめでとう」


鬼塚も頷く。


「新たな戦力の誕生だな」


太陽はまだ手のひらの光を見つめている。


まるで子供のような、純粋な表情。


「……すげぇな、これ」


ソラが太陽の横に浮かぶ。


「太陽の力」


太陽が小さく頷く。


「相棒、よろしくな」


「了解、太陽」


ソラの羽が、ふわりと揺れた。


僕はその様子を見ながら、小さく息を吐いた。


これで――


戦力がまた一つ増えた。


しかも、信頼できるやつ。


太陽は光を消して、拳を軽く握る。


「……よし」


そして、僕を見る。


「で、理久」


「何」


太陽がにやっと笑った。


「これ、戦えるんだよな?」


僕も少し口元を緩めた。


「当然」


太陽の目が、さらに輝く。


部室の中で、新しい風が動き始めていた。


――こうして。


虚界研究部に、新たな仲間が加わった。


魔法少女スターライト・ミオ。


フェーズビースト・アルゴ。


そして――


人工ピクシス・ソラと契約した、新たな魔法少年。


朝比奈太陽。


人類側の戦力は、確実に増え始めていた。


そしてこの日――


新たな魔法少年が誕生した。

お読みいただきありがとうございました!


この作品を

「面白い!」

「続きが気になる!」


と思っていただけましたら、

★評価・ブックマークで応援していただけると嬉しいです。


皆さまの応援が更新の大きな力になります。


今後ともよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ