第17話 人工ピクシスと、最初の魔法少年
「できた」
数日ぶりに虚界研究部の部室に入った僕は、開口一番そう言った。
机で資料を確認していた澪と鬼塚が、同時に顔を上げる。
「……できたって、何が?」
澪が眉をひそめる。
鬼塚はすでに察しているのか、静かに腕を組んだままこちらを見ている。
僕は短く答えた。
「人工ピクシス。完成」
部室の空気が、ぴたりと止まった。
澪がゆっくり立ち上がる。
「……え、ちょっと待って。理久くん、それって……」
「そのままの意味。人工的に作ったピクシス」
「……早すぎない?」
澪は半分呆れたような顔で言った。
鬼塚も静かに口を開く。
「フェーズビーストの完成から、まだ数日だが」
「フェーズビーストより大変だった」
僕は即答した。
その言葉に、澪が意外そうな顔をする。
「え? でもフェーズビーストってかなりすごい技術じゃなかった?」
「すごいけど、あれは“ヴォイド寄り”だからまだ楽」
僕は机の上の端末を操作し、解析データを表示する。
「ヴォイドは単純。攻撃性と位相エネルギー中心の構造。戦闘用としては設計しやすい」
「……それで楽って言うのね」
澪が小さくため息をついた。
僕は続ける。
「でもピクシスは違う。契約機能、魔法補助機能、成長機能、意思疎通機能……全部別系統の技術が混ざってる」
鬼塚が頷く。
「戦闘兵器ではなく、支援ユニットだからか」
「そう。しかも契約者との相互作用前提」
僕は肩をすくめた。
「単体で完成しない設計。だからフェーズビーストよりずっと厄介」
「……なるほど」
澪が納得したように小さく頷いた。
「それに」
僕は次のデータを表示する。
「量産性も悪い」
「え?」
「フェーズビーストは素材あれば増やせる。でも人工ピクシスは契約者ごとに調整が必要」
鬼塚の表情が少し引き締まる。
「……つまり」
「人工ピクシス量産は基本無理」
僕はあっさり言った。
澪がすぐに反応する。
「やっぱりそうなるのね……」
「個体ごとに契約適性調整が必要。大量生産は非現実的」
「でも……それじゃ」
「少数精鋭なら問題ない」
僕はそう言いながら、机の横に置いていたケースを持ち上げた。
「それに、もう一つメリットがある」
澪が首を傾げる。
「メリット?」
「ピクシスの欠点、ひとつ潰した」
鬼塚が目を細める。
「欠点?」
僕はケースを机の上に置きながら言った。
「年若い少女しか契約できないってやつ」
澪が目を見開いた。
「……え?」
「人工だから調整できる。男とも契約できるようにした」
数秒、沈黙が落ちる。
「……えええ!?」
澪が思わず声を上げた。
「それって、すごいことじゃない!?」
「まあね」
鬼塚も明らかに驚いた表情をしている。
「それは……軍としても極めて重要な技術だな」
「ただし」
僕は続けた。
「起動試験で自分で使った」
澪が固まる。
「……え?」
「契約プロセスの確認が必要だったから」
僕は何でもないように言った。
「だからこの個体、僕と同年代の男にしか契約できない状態になってる」
澪が頭を抱えた。
「ちょっと待って、理久くんそれ……」
「初期化はできる」
僕は軽く言う。
「でもまあ、大人とかが使いたいなら別の作ればいい。この個体はこのままにする」
鬼塚が少し苦笑する。
「……随分と贅沢な判断だな」
「試作機だし」
僕はロックを解除しながら言った。
「それに当てがある」
澪が顔を上げる。
「当て?」
「うん」
僕はケースの蓋を開けた。
中にあった小さな存在が、ふわりと浮かび上がる。
手のひらサイズ。
白を基調とした半透明の身体。
小さな羽がゆっくりと動いている。
ピクシスの姿。
ただし――
表情がない。
感情の色が一切浮かんでいない、無機質な瞳。
その存在は静かに空中に浮かび、
「起動完了。環境スキャン開始」
機械のような声で言った。
澪が目を丸くする。
「……ピノと全然違う」
「学習前だから」
僕は説明する。
「契約者の望む方向に成長する学習機能つけてる。今はまだ何も学習してない」
鬼塚が興味深そうに見つめる。
人工ピクシスはゆっくりと部室を見回す。
「識別対象登録」
「天原理久」
「星川澪」
「鬼塚錬」
淡々と読み上げる。
澪が少し苦笑する。
「……ほんとにAIみたい」
「そういう設計」
僕は頷いた。
「それと」
僕は続ける。
「個体名については、正式な契約者につけてもらえってことにしてる」
「え?」
澪が首を傾げる。
「名付けも契約プロセスの一部」
「なるほど……」
「だからまだ名無し」
人工ピクシスは静かに空中で待機している。
まるで指示を待つ機械のように。
僕はそれを見上げてから言った。
「で、さっき言った当て」
澪が身を乗り出す。
「……誰なの?」
僕はポケットからスマホを取り出した。
「もう呼んでる」
鬼塚がわずかに目を細める。
「このタイミングということは……」
「うん」
僕はスマホの画面を確認する。
ちょうどその時――
コンコン、と軽いノックの音が響いた。
「どうぞ」
僕がそう言うと、すぐにドアが開く。
「おー、やっぱここだったか」
入ってきたのは、見慣れた短髪の少年だった。
朝比奈太陽。
僕の幼馴染であり、隣の家に住んでるやつ。
運動バカで、頭は残念だけど、性格はやたらと明るい。
そして今は――まだ、何も知らない一般人だ。
太陽は部室に入った瞬間、足を止めた。
「……おお」
周囲を見渡す。
壁一面のモニター。
机の上に並ぶ測定装置。
透明なケースに収められた素材サンプル。
そして、天井から吊られた配線やセンサー類。
普通の中学校の部室とは思えない光景。
「……なんか、すげぇなここ」
太陽が素直に言った。
「前来た時と全然違うじゃん」
「設備増えたから」
僕は軽く答える。
「虚界研究部になってから、予算ついた」
「予算ってレベルじゃねぇだろこれ……」
太陽は近くの機材を覗き込む。
「これ何? なんか未来っぽい」
「フェーズレーダーの簡易モニター」
「……わかんねぇけどすごそう」
太陽は頷いた。
それから僕の方を見て、にやっと笑う。
「つーか、いきなり呼び出してどうしたー?」
いつもの軽い口調。
完全に気安い関係。
澪が少し驚いた顔をしている。
僕はいつも通り答える。
「用事あったから」
「そりゃそうだろ」
太陽が笑う。
「でも理久から呼ばれるの珍しくね? いつも俺が来る側じゃん」
「今日は来てもらう必要あった」
「ふーん?」
太陽は首を傾げる。
そのとき、ようやく澪と鬼塚の存在に気付いた。
「あ」
少しだけ姿勢が正しくなる。
「えっと……」
澪が軽く会釈する。
「初めまして。星川澪です。二年です」
太陽も慌てて頭を下げた。
「朝比奈太陽です。一年です」
「はい、よろしくお願いします」
澪は優しく微笑む。
太陽が少し安心したように笑う。
「えっと……理久の知り合いですか?」
「虚界研究部の部員です」
「おお、部員いたんだ」
太陽が素直に言った。
澪が苦笑する。
「はい、一応……」
次に鬼塚が一歩前に出た。
「鬼塚錬だ」
太陽が一瞬固まる。
鬼塚は自衛官らしい引き締まった体格。
年齢も明らかに大人。
制服ではないが、雰囲気で只者じゃないと分かる。
「……えっと」
太陽が少し戸惑う。
「先生……ですか?」
鬼塚が小さく笑う。
「違う。特別顧問みたいなものだ」
「特別顧問?」
太陽がさらに困惑する。
僕が補足する。
「自衛隊」
「……え?」
太陽が固まった。
「え、自衛隊!?」
「ヴォイド対策部隊」
「……マジで?」
太陽が僕を見る。
「理久、お前なんかすごいことやってね?」
「普通」
「普通じゃねぇよ!」
太陽が思わずツッコんだ。
澪がくすっと笑う。
そのやり取りを見ながら、僕はポケットから一つの眼鏡を取り出した。
黒縁の、少しだけ無骨なデザインの眼鏡。
フェーズグラス。
僕はそれを太陽に差し出す。
「これ、かけて」
「え?」
太陽が首を傾げる。
「何これ?」
「いいから」
「……まあいいけど」
太陽は素直に受け取り、眼鏡をかける。
そして――
「……うわっ!?」
太陽が思わず声を上げた。
「なんだこれ!?」
太陽の視線の先。
そこには――
ふわりと空中に浮かぶ、小さな存在。
白く半透明の身体。
小さな羽を動かしながら静かに浮遊している人工ピクシス。
太陽が思わず指をさす。
「なんか浮いてる!?」
澪が太陽の反応を見て、小さく息を吐いた。
「……見えてる」
鬼塚も静かに頷く。
太陽は驚いたまま、人工ピクシスをじっと見る。
「え、これ何? ドローン? いや違う……」
人工ピクシスがゆっくりと太陽の方へ移動する。
「うおっ」
太陽が一歩後ずさる。
「来た来た来た!」
「安心して」
僕は言った。
「危険じゃない」
太陽は恐る恐る人工ピクシスを見る。
「……なんか、生きてるっぽくね?」
「うん」
僕は短く答えた。
太陽が僕を見る。
「理久……これ何?」
僕はその視線を受け止めて、静かに言った。
「人工ピクシス」
「……は?」
太陽が固まる。
数秒の沈黙。
そして――
「……え、人工って何?」
太陽がゆっくり聞き返す。
僕は淡々と答えた。
「人工的に作ったピクシス」
「……は?」
太陽が完全に固まる。
「ピクシスって……何?」
澪が一瞬だけ僕を見る。
説明するか、という視線。
僕は軽く頷いた。
「ヴォイドって知ってる?」
太陽が頷く。
「ああ、ニュースでやってるやつだろ? なんか魔法少女が戦ってるやつ」
「そう」
僕は続ける。
「魔法少女はピクシスって存在と契約して魔法使ってる」
「……」
太陽が黙る。
人工ピクシスを見て、また僕を見る。
「……つまり」
「それ、魔法使うためのやつ」
数秒の沈黙。
太陽が人工ピクシスをまじまじと見つめる。
「……これで?」
「うん」
太陽の顔に、徐々に好奇心が浮かぶ。
僕はその表情を見て、言った。
「太陽」
「ん?」
「魔法使ってみたくない?」
太陽の目が、一瞬で輝いた。
「……使えんの!?」
「契約すれば」
「マジで!?」
太陽が前のめりになる。
その瞬間――
「え、ちょっと待って」
澪が慌てて割って入った。
「理久くん、それ……」
澪は太陽を見てから、小さく声を落とす。
「完全に民間人ですけど……いいんですか?」
その言葉で、部室の空気が少し引き締まる。
僕は肩をすくめる。
「問題ない」
「でも……」
澪は困惑した表情のまま言う。
「魔法少女って……ヴォイドと戦うんですよね?」
「うん」
「危険すぎませんか……?」
その言葉に、太陽が少し驚いた顔になる。
「……戦う?」
僕は頷く。
「魔法少女と同じ。魔法少年になって、ヴォイドと戦う」
太陽の表情が、わずかに真剣になる。
その時、鬼塚が口を開いた。
「朝比奈」
太陽が鬼塚を見る。
鬼塚は落ち着いた声で言った。
「リスクはある」
太陽の表情が引き締まる。
「ヴォイドは危険な存在だ。命の危険もある」
澪が小さく頷く。
鬼塚は続ける。
「だが、メリットもある」
「……メリット?」
太陽が聞き返す。
「まず、魔法の戦闘能力。これは通常兵器では対抗できないヴォイドに対する有効戦力だ」
鬼塚の視線が人工ピクシスに向く。
「さらに、理久の技術支援」
太陽が僕を見る。
鬼塚が続ける。
「フェーズシールド、フェーズレーダー、フェーズビースト……」
「……あの犬?」
太陽が思い出したように言う。
「うん」
僕は軽く指を鳴らす。
すると――
何もない空間から、アルゴが姿を現した。
位相潜航を解除したアルゴが、僕の横に静かに立つ。
「うおっ!?」
太陽が飛び退いた。
「犬!? いついた!?」
「アルゴ」
僕が呼ぶと、アルゴは静かに尻尾を振る。
太陽が目を見開く。
「……何これ、かっこよ……」
鬼塚が言う。
「このような支援戦力がある。単独で戦わせるつもりはない」
澪も小さく頷いた。
「私もいます」
太陽が澪を見る。
「え?」
澪が少し照れたように言う。
「私、魔法少女なので」
「……え?」
太陽が固まる。
「え?」
「スターライト・ミオ」
澪が小さく言った。
太陽の口がゆっくり開く。
「……えええ!?」
僕はその反応を横目に見ながら言った。
「だから、完全に一人で戦うわけじゃない」
太陽はしばらく黙ったまま考える。
人工ピクシスを見る。
アルゴを見る。
僕を見る。
そして――
少しだけ笑った。
「……なんか、すげぇな」
その笑顔は、いつもの太陽のものだった。
「魔法使えるんだろ?」
「うん」
「空飛んだり?」
「できる」
太陽の目がさらに輝く。
「かっこいい技とか?」
「できる」
太陽は、少しだけ考えてから――
にやっと笑った。
「……やる」
澪が少し驚いた表情になる。
「いいの?」
太陽が頷く。
「なんか面白そうだし」
そして僕を見る。
「それに」
太陽は笑った。
「理久がやってるなら、絶対すげぇだろ」
僕は小さく息を吐いた。
「じゃあ決まり」
人工ピクシスが静かに太陽の前に浮かぶ。
太陽がその存在を見つめる。
「……これと契約すればいいんだよな?」
僕は頷いた。
「名前つけて」
「名前?」
「契約プロセスの一部」
太陽は人工ピクシスをじっと見つめる。
手のひらサイズの、小さな存在。
ふわふわと浮かび、静かに太陽を観測している。
無機質な瞳。
まだ何も学習していない、空白の存在。
太陽は少しだけ首を傾げた。
「……そうだな」
数秒考えて――
ぱっと笑う。
「空飛んでるし……ソラ!」
澪が思わず小さく笑う。
「シンプルね……」
僕は頷く。
「いいと思う」
太陽が人工ピクシスに向かって言う。
「お前、今日からソラな」
その瞬間――
人工ピクシスの羽が、わずかに光った。
「名称登録」
機械的な声が響く。
「個体名:ソラ」
「契約プロセス開始」
部室の空気が、わずかに震えた。
太陽の前に浮かぶソラが、淡く光を放つ。
細い光の糸のようなものが、太陽へと伸びる。
「うお……?」
太陽が少し驚く。
光は太陽の胸元に触れ――
そのまま、すっと消えた。
一瞬の静寂。
そして――
「契約完了」
ソラの声が、再び響く。
同時に。
ソラの瞳の色が、わずかに変わった。
先ほどまでの無機質な光が、ほんの少し柔らかくなる。
「契約者:朝比奈太陽」
「契約者情報解析開始」
太陽が瞬きをする。
「……なんか、頭の中に……」
僕は頷く。
「契約パス」
「契約パス?」
「情報共有用の接続」
ソラの瞳が、わずかに点滅する。
「契約者の嗜好解析開始」
「……?」
太陽が首を傾げる。
その瞬間。
ソラの声が、わずかに変化した。
「……朝比奈太陽。よろしく」
先ほどよりも、ほんの少しだけ柔らかい口調。
澪が目を見開いた。
「え……?」
鬼塚もわずかに眉を動かす。
ソラが続ける。
「契約者の心理的負担軽減のため、会話インターフェースを調整します」
太陽がぽかんとする。
「……え?」
ソラの瞳がさらにわずかに光る。
「口調最適化」
「親和性優先モード起動」
そして――
「……よろしくな、太陽」
今度は、明らかに変わっていた。
少しフランクな、自然な口調。
太陽が目を見開く。
「……おお」
澪が思わず言う。
「ちょっと待って……今……」
鬼塚も驚いた様子で言った。
「契約と同時に学習したのか……?」
僕は軽く頷く。
「契約パスから、人格調整」
「そんなことが……」
澪が驚いたままソラを見る。
ソラが太陽の周りをふわりと回る。
「契約者の行動パターンを予測」
「サポートモード移行」
太陽が笑う。
「……なんか、いいな」
ソラが太陽の前に止まる。
「太陽の相棒として最適化する」
その言葉に、太陽の表情がさらに明るくなる。
「相棒か」
太陽が笑う。
「いいじゃん、ソラ」
ソラの羽が、ほんの少しだけ軽やかに動いた。
澪が小さく息を吐く。
「……すごい」
鬼塚も頷く。
「契約直後でここまで変化するとは……」
僕はソラを見ながら言った。
「契約パス経由でリアルタイム学習してる」
「理久くん……それ……」
澪が少し呆れたように言う。
「普通じゃないわよ」
「そう?」
僕が肩をすくめると、
その時――
ソラが太陽の肩の横に浮かぶ。
「太陽」
「ん?」
「魔法の初期化を開始する」
太陽の目が一瞬で輝いた。
「……おお!」
ソラの身体が、淡く光り始める。
同時に、太陽の体の周囲に、微かな光が集まり始めた。
「うお……なんか、体が軽い……」
太陽が驚いたように手を握る。
「魔法回路の構築中」
ソラが静かに言う。
澪が思わず身を乗り出す。
「魔法回路って……今作ってるの?」
僕は頷く。
「人工ピクシスだから、契約と同時に最適化できる」
鬼塚が感心したように言う。
「通常のピクシスよりも効率が良いということか」
「うん」
太陽の足元に、淡い光が広がる。
「うわ……」
太陽が自分の手を見つめる。
指先に、わずかに光が集まっていた。
「魔法属性解析」
ソラが続ける。
「契約者の適性を測定」
「属性決定中」
太陽の周囲の光が、徐々に色を帯びる。
赤。
橙。
そして――
金色のような光。
澪が小さく息を呑む。
「……光?」
僕は頷く。
「太陽っぽい」
鬼塚がわずかに笑う。
「名前通りだな」
ソラの声が続く。
「適性属性確認」
「陽炎系統魔法」
太陽がぽかんとする。
「……ようえん?」
僕が補足する。
「炎と光の混合系」
太陽の顔が一気に明るくなる。
「かっこよくね!?」
澪が苦笑する。
「そういうところは変わらないのね……」
ソラが続ける。
「魔法回路構築完了」
「初期魔法セット完了」
太陽の体を包んでいた光が、すっと収束する。
同時に――
太陽の手のひらに、小さな光が灯った。
「おおっ!?」
太陽が目を見開く。
手のひらの上で、小さな炎のような光が揺れる。
「……すげぇ」
太陽が息を呑む。
その光は、まるで呼吸するように揺れていた。
ソラが静かに言う。
「魔法使用可能」
太陽が僕を見る。
「理久……」
「うん」
太陽の表情が、ゆっくり笑顔になる。
「俺……魔法使ってる……」
澪も、少し嬉しそうに笑った。
「おめでとう」
鬼塚も頷く。
「新たな戦力の誕生だな」
太陽はまだ手のひらの光を見つめている。
まるで子供のような、純粋な表情。
「……すげぇな、これ」
ソラが太陽の横に浮かぶ。
「太陽の力」
太陽が小さく頷く。
「相棒、よろしくな」
「了解、太陽」
ソラの羽が、ふわりと揺れた。
僕はその様子を見ながら、小さく息を吐いた。
これで――
戦力がまた一つ増えた。
しかも、信頼できるやつ。
太陽は光を消して、拳を軽く握る。
「……よし」
そして、僕を見る。
「で、理久」
「何」
太陽がにやっと笑った。
「これ、戦えるんだよな?」
僕も少し口元を緩めた。
「当然」
太陽の目が、さらに輝く。
部室の中で、新しい風が動き始めていた。
――こうして。
虚界研究部に、新たな仲間が加わった。
魔法少女スターライト・ミオ。
フェーズビースト・アルゴ。
そして――
人工ピクシス・ソラと契約した、新たな魔法少年。
朝比奈太陽。
人類側の戦力は、確実に増え始めていた。
そしてこの日――
新たな魔法少年が誕生した。
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