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王妃陛下とお会いしてから数日経った。
私は、師匠とヴィンセルへ話す為に、特殊部隊室へと来ていた。
そっと部屋へ入り辺りを見回すと、副団長以外誰もいない。
「お疲れ様です、副団長。
お聞きしたいのですが、ヴィンセルはいつ頃戻りますか?」
その言葉に書類から目を離した副団長が丁寧に教えてくれた。
「アレンか、お疲れ様。
そうだな、昼には戻ってくると思うぞ。
あと、団長は奥にいる」
『ありがとうございます』と言い置き、団長室をノックした。
「アレンです。今よろしいですか?」
「入れ」
扉を押し開き中へと入る。
師匠は、入って来た私に目を向けた。
「どうした?何かあったのか?」
「はい。
先日の件でお伝えし忘れた事がありまして」
そう言い置いてから、深呼吸をして再度話し始めた。
「あと三ヶ月弱で、実家に帰ろうと思っているんです。
師匠には大変お世話になったのに、こんな形となってしまった事、本当に申し訳なく思っております」
私は話終わったと同時に、頭を下げた。
落ち着いた深緑色のカーペットが目に入る。
すると、椅子を引く音が聞こえた。
どんどんと近づいて来る足音・・・師匠が私の前へとやって来たのだ。
下を向いている私には、師匠の靴先が見える。
ジッと待っていると、私の頭をわしゃわしゃと撫でた。
「辛気臭い顔をするんじゃない!
それに、お前のせいじゃないだろ?
俺は、お前に時間を割いた事を無駄だとは思っていない」
『で、でも』と、まごつく私に再び口を開いた。
「それに離れたとしても、お前の師匠を辞める訳じゃないからな!何かあれば、相談しろよ」
そうやって、いつも背中を押してくれる師匠に、私はどれ程助けられて来たのだろうか。
仕事だけではない関係に嬉しくなった私は、鼻水を啜りながら答えたのだ。
「ありがとうございます。
師匠は私の生涯の恩師です。
これからも、よろしくお願いします」
すると『鼻垂れてんぞ』と言いながらも、ちり紙を顔に押し付けてきた。
「それにしても、アーデンヴァルト女王の恩師とは、俺も出世したもんだな」
と戯けて見せたのだった。
その後は、引き継ぎやヴィンセルと話し合う事を言われた私は、団長室を後にしたのだ。
部屋を出た私に『早かったな!』とにこやかに声を掛ける副団長に、私は『団長に伝えたのですが、三ヶ月ほどで辞める事になりました。今まで本当にお世話になりました』と頭を下げて伝えた。
すると副団長は目を見開き驚いていたが『自分で決めた事だ。どんな道を選ぼうと私は応援している』と激励してくれたのである。
私は再度会釈をし、部屋を退出した。
すると、ヴィンセルが歩いて来たのだ。
「ヴィンセル、おかえり!
話したい事があるんだけど、時間もらえないかな?」
「報告してからでいいなら大丈夫だ。
少し待っててもらえる?」
私は、ヴィンセルの態度に違和感を覚えつつも『あ、うん。ここで待ってるよ』と返した。
・・・なんだろう。いつもと違う。
そんな事を考えながら、窓の外へ目をやった。
訓練場では、重騎士が訓練しているのが見える。
ゲイルを探したいが、皆、重装備を身に纏っている為、誰が誰だか分からない。
すると・・・
「ゲイルは三列目の右から2番目だよ」
そう教えてくれたのは、報告を終えたヴィンセルだった。
「ゲイルとも友達になったの?」
「・・・アルトに誘われてね。
何回かみんなでご飯を作ったんだ」
そう言って、照れ臭そうにしている。
なんだか、その姿を微笑ましいと思った。
「そっか、良かった。
実は先日の件で話したいんだ。
場所を変えない?」
「・・・ねぇ?
この件をアルト達にも話すんでしょ?」
「・・・うん、今度話すよ」
するとヴィンセルは外を見ながら呟いた。
「じゃあ、今日でいいんじゃない?
みんな定時には帰ってくるからさ」
「お邪魔していいのかな」
するとヴィンセルは、横にいる私を見つめた。
最近身長が伸びてきたのだろう。
私の目線は、ヴィンセルの顎辺りになっていた。
「うん、みんなでご飯を作って食べよう」
思わず頷きそうになってしまったが、寮にいない私が食材を使うのは憚れる。
「食材は使えないよ」
「入寮時の規約で客人が食材を使う時は、一定金額払えば可って書いてあったから大丈夫だよ」
私も規約に目を通してサインしたはずなのに、全く記憶にない。
・・・きっと、読んだ気になっていたんだな。
これからは、立場上そんな事は許されなくなる。
もっと気を付けねばと、静かに決意をしたのであった。
それからヴィンセルとは、定時になったら王宮のエントランス前で待ち合わせる事を約束し、ローレンス様の元へと帰る。
執務室の扉を開き、静かに入室した。
見回すとレノンさんは居ないようだ。
すると、書類から目を離したローレンス様が口を開く。
「ジェラルドには話したのか?」
「はい。
ヴィンセルには今日の夜、食事がてら話すことにしました」
「そうか。
それと聞きたいんだが、アレンは生家に帰ってから、いつアーデンヴァルトへ発つんだ?」
そう問いかけられて、何も知らない事に気づいた。
・・・これは一度、魔石で連絡を取らなければいけないな。
「まだ何も決まってないので、連絡を取ってみます」
「出来れば俺も、その者達に会ってみたいんだが、会えるか?」
「・・・えっと、何か用件があるのでしょうか?」
すると二っと笑い『アーデンヴァルトへ俺も行くからだ』と言った。
・・・!!?
「正式に許可が出たんですか!?」
「ああ!
もちろん、父からも許可を得たから何も心配はいらない。
だから、その者達と話がしたいんだ」
ローレンス様は平然と言うが、国王陛下とは一切面識がない。
「・・・あの、国王陛下が本当に許可を出されたのですか?」
「本当だ。
こんな大事な事を嘘つくわけないだろう?
だが、アレンに一度会いたいようだ。
来月、晩餐に招待すると言っていたな」
え!!?
なんで、そんな大事なことを今言う?
晩餐って事は、ハインデルト王家の方達に囲まれるのだ。
・・・耐えられるのか・・・自分。
そう自問自答しながら、途方に暮れるのであった。




