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特殊部隊室から帰ると、誰もいない部屋には静けさが漂っていた。
私は自室の扉を通り過ぎ、ローレンス様が書類仕事をする際に使う机にそっと触れる。
・・・いつも、ローレンス様が出迎えてくれるから気付かなかったが、これが普通なんだよね。
そしてこの静けさの中を、ローレンス様はいつも待っていてくれているのだと気付いた。
・・・どんな事を思って、私を待っていてくれたのだろうか。
そう思うと、胸が熱くなる。
だから今日は、私がローレンス様が帰ってくるのを待つ事にしたのだ。
窓の外を眺めると、回廊の光がボンヤリとガラスに映る。
見上げる空は、昨日とは打って変わって、星一つ見えなかった。
・・・明日は雨かもしれないな。
ーーそして待つ事1時間弱。
晩餐を終えたローレンス様とレノンさんが帰ってきた。
「・・・!?
アレン?
自分の部屋へと戻っていなかったのか?」
「はい。
まだ、時間が早いので待っていたのです」
流石にレノンさんの手前、会いたいから待っていたとは言えない。
するとローレンス様は、嬉しそうに『そうか』と呟いた。
『ローレンス様、そろそろご準備いたしましょうか』と促すレノンさんに頷いたローレンス様は、私に一言告げた。
「アレン、このあと少し時間をもらえないか?」
晩餐での事を教えてくれるのだろうと思った私は『はい。大丈夫です』と返答した。
それからしばらくして、レノンさんが退出して行った。
私も準備を済ませて部屋で待機していると、呼ばれたのだ。
自室を出て、ローレンス様の座るソファへと腰掛ける。
寝支度を終えたローレンス様からは、相変わらずいい香りがした。
昨日、私だから男でも受け入れたと言われた事を思い出す。
それは純粋に、私を好きだと言ってくれた事に変わり無い。
・・・そう思うとドキドキした。
「アレン、疲れてないか?」
そう優しく私の手を取り気遣ってくれる姿に胸が高鳴る。
「はい、大丈夫です。
ローレンス様はどうですか?」
「俺は・・・まぁ、大丈夫だ。
それで、アレンにお願いがある」
「何でしょうか?」
そんな切実に見つめられるとドキドキしてしまう。
「・・・実は、母に会ってもらいたいんだ」
・・・・・・え?
その言葉を理解するまでに、だいぶ時間を要した。
そして先程とは打って変わって、違うドキドキに晒されている。
「・・・あの。
王妃陛下と私が会って、何をすれば良いのでしょうか・・・?」
「特に何もしなくて大丈夫だ。
だから俺と一緒に、三日後会って欲しい」
これも、アーデンヴァルトに行くという課題なのだろうか。
本音を言えば、一緒に来てくれたらすごく嬉しい。
だが、危険な事を考えると、安易に喜ぶ事ができない自分がいる。
どっちつかずの気持ちに、なんて答えて良いか分からなかった。
「・・・アレン、嫌か?」
「いえ、その・・・。
嫌ではないです。
けど、ローレンス様?
アーデンヴァルトは、何があるか分からないのですよ?」
「もちろん、承知の上だ。
それと・・・アレンも魔力を持っているんだろう?」
「・・・はい。
日々、強くなるのを感じています」
その言葉に『そうか、俺には魔力はないからな』と呟いた。
何だかそれが寂しそうに見えたので、私はローレンス様の手を強く握ったのだ。
すると、私をまっすぐ見据えて話し始めた。
「アレンが心配してくれているのは分かる。
だが俺は、女王となる君を支えたいんだ。
・・・俺では不足だろうか?」
「・・・いいえ。
とても嬉しいです。
けどそれは、ローレンス様を不幸にしませんか?」
「不幸?
俺は、アレンといられる事が幸せだからな。
だから、不幸にはならないから安心しろ」
そう微笑むローレンス様に、私の心も軽くなった。
「ローレンス様。
王妃陛下の件、分かりました」
「ありがとう。
それと、アレンはいつまで此処にいられるんだ?」
「レオナード殿下からは、一週間と言われております。なので、あと六日でしょうか」
すると、ローレンス様は首を振り『それは気にしなくていい。兄上にも了承を得たからな。だから、アレンの都合を聞きたい』と聞き返された。
ローレンス様やみんなと一緒にいたいが、家族とも一緒に過ごしたい私は、ローレンス様の手を握り、悩んだ。
そして——
「・・・三ヶ月でしょうか。家族とも過ごす時間が欲しいのです」
「分かった。ではまずは、母の事から片付けよう」
・・・えっと、その言葉選びはなんなんだろう・・・?
頭の中に疑問は残るが、私には知る術がないので頷くだけに留めたのであった。




