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灰色王子のバラ色観察日記  作者: こさか りね


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そして次の日


私は特殊部隊室へと来ていた。


部屋を見回すと、ヴィンセルは見当たらず副団長や先輩がいたのでお土産のお菓子を渡した。


「副団長、今日は団長はいますか?」


「ああ、今ヴィンセルと団長室にいるぞ。

アレンならまぁ、大丈夫だろう、行ってみろ」


そう促されたので、団長室をノックした。


「誰だ?」


「お話中にすみません。アレンです」


「・・・入って来い」


部屋の中へ入ると、ヴィンセルが気まずそうにしていた。


・・・昨日も思ったが、やっぱりおかしい。


師匠は話の途中だったのだろう。

ヴィンセルに向かって話し出した。


「そんなに心配する事じゃない。

それに、お前は対象外だ」


「いや、だって、抱きしめてきたんですよ!

普通ではありません!」


抱きしめるなんて、恋の話なのだろうか。

・・・私だって、花の18歳。

恋の話に興味ぐらいある。


ドキドキしながら耳をそばだてていると、師匠が私に声を掛けた。


「乙女の妄想をしているところ悪いが、そんな話じゃない。

それと、ヴィンセルも気にするだけ時間の無駄だ。

で、アレンはどうしたんだ?」


「はい。

お休みを頂きありがとうございました。

それと、お土産になります」


私は二人にレモンのお菓子を渡した。


「おう、ありがとうな。

屋台のオヤジは元気だったか?」


「はい。師匠に会いたがっていましたよ」


すると懐かしむように『そうか』と呟いたのだ。



私はヴィンセルに向き直り『今日仕事終わったら時間ある?』と問いかけた。


「え?・・・大丈夫だけど・・・」


「何か食べに行かない?

ローレンス様の事を頼んじゃったし、お礼にご馳走させてよ」


その話を聞いていた師匠が口を挟んできた。


「お前達、どっか行くのか?

じゃあ俺も付いて行こうかな」


「はい!団長も是非来てください!」


すると、ヴィンセルが慌てて口を開いた。


「なんで叔父上が来るんだよ!

誘われたのはオレなんだからな!」


「だってお前、アレンと二人きりで普通に話せるのか?

沈黙の中で食うメシなんて、お互いに地獄だぞ」


師匠の言葉に思う事があるのか、もごもごと何かを呟き『・・・叔父上も来てくれ』と言ったのだ。


「じゃあ、今日は三人で食べに行きましょう!

食べたい物を考えておいてくださいね」


そう言い置き、特殊部隊室を後にしたのであった。


執務室へと戻ると、書類仕事をしているローレンス様の左手首には、緋色の天然石が輝いていた。


それを見ると、とても嬉しくなる。


「ローレンス様、戻りました」


すると、書類から顔を上げたローレンス様の天然石と同じ赤い瞳と目が合った。


「おかえり、随分と早かったんだな」


「はい。お土産を渡しただけですから。

それと、今日の勤務後は特殊部隊の人と食事に行って参ります」


「そうか。

では、楽しんでくるといい」


そう笑顔で返してくれた。

そして勤務も終わり、エントランスで待っていると、師匠とヴィンセルがやって来た。


「待たせたな!じゃあ、行くか」


師匠に促され、歩き出した私は、ヴィンセルと共に師匠の後ろへと続いた。


「師匠?どこへ行くんですか?」


「前に行ったところでいいだろ?

値段の割に美味いからな」


・・・え?

私からしたら、かなりの高級店なのだが・・・。


お金、足りるかな・・・?


私は不安になり、バレないように財布の中身を確認したのだ。


すると、前を歩いている師匠が口を開いた。


「アレン、今日は俺が出すから心配するな」


え!?何故バレた!?


私が目を丸くしていると、ヴィンセルが横から口を開いた。


「財布を出す音で分かったんでしょ。

オレは財布を出す前から分かってたけどね」


・・・そうだった。

師匠は耳が良くて、ヴィンセルは目が良かったんだなと、再度心に刻んだのであった。


って事は、静かにオナラをしてもバレるって事だ。


もちろん、いつもその辺でプップしている訳ではないが、より一層気を付けなくてはならない。


そんな私の頭の中は、今までに粗相をしていないかを振り返る事で、いっぱいになってしまったのであった。


そして、しばらく歩くとお店が見えて来た。

オシャレな門構えを見ると、やっぱり腰が引ける。あの日、師匠と来て以来だ。



「アレンは酒飲むか?

ヴィンセルはまだ飲める年じゃないから、ジュースか茶にしろよ」


「ジュースなんて飲むわけないだろ!

俺だって、あと一年で大人なんだからな!」


「そうか。じゃあヴィンセルは茶だな。

アレン、決まったか?」


私はメニュー表を見た。

前回は料理名がよく分からず、何となくしか見ていなかったのだが、よく見るとお値段がかなりお高い。


ビル達と行く飲み屋のエールと比べても倍違う。


・・・エールの原材料が違うから高いのかな?


と考えていると『アレンはエールでいいな』と遅い私に痺れを切らした師匠に決められてしまった。


私はそれに頷き、師匠がどんどん頼んでくれる。

その合間にヴィンセルが『オレはこれ食べたい!』とリクエストしていた。


師匠は私にも聞いてくれたのだが、やはり全く分からないので『お任せでお願いします』と返したのだ。


それからは、飲み物と前菜が来て落ち着いた頃に私は口を開いた。


「今日は、私がご馳走したかったんですが、師匠に出していただいてもいいんでしょうか?」


「お前達は頑張っているからな!

俺からの褒美だと思って、遠慮せずに食え。

それに、ガキに奢らせる趣味はないんでな」


相変わらず言葉遣いは酷いが、私に気を遣わせないように言ってくれているのが分かる。


「師匠、ありがとうございます」


そうして、楽しい食事会が始まったのだ。


場も盛り上がり、しばらくしてから私は気になる事を聞いてみた。


「ヴィンセルは何で寮生活しているの?」


「・・・世間勉強をして来いって父上が言うからだよ」


すると、エールを飲んでいた師匠が口を開いた。


「まぁ、自由なのも今だけだからな。

若いうちに色々と経験した方がいい。

それと、ヴィンセルに友達が出来たそうだぞ」


「叔父上!友達じゃないよ!

・・・ただ、執拗に話しかけてくるんだ」


その話に、一人の顔が浮かんだ。


「もしかして、アルト?」


「・・・そうだけど。

あの人、色々と聞いてきて(うるさ)いんだよ」


・・・やっぱり。

けど、アルトから話しかけるなんて、なかなかにすごい事なのだ。


「ヴィンセルはアルトに好かれているんだね。

アルトは興味のない事や人には無関心なんだよ。

だから、友達になれるんじゃないかな?」


「別に友達なんていらないし・・・」


というヴィンセルに、エールのおかわりを頼んだ師匠が口を挟んだ。


「友達はいいぞ!

いくらいても困る事はない。

・・・そう考えると、金と一緒だな。

金もいくらあっても困らないだろ!

それに、それも込みでお前の父、兄貴は寮へ住まわせてんだろ?」


「・・・友人を作れって言われたけど、必要性を感じないし」


その時、頼んでいたエールを受け取り、上機嫌の師匠が告げた。


「そういう言葉は、作ってから言え。

説得力がまるでないからな!」


と少し酔っているのか、ガハハと笑う師匠にヴィンセルが『叔父上!いったい何杯飲んでるの!?もうやめなよ!』とお酒を取り上げようとしている。


だが、酔っていてもそう易々とは取れないようで、逆にお酒の力で手加減なしになっているではないか。


私は二人の攻防を見ながら思った。


こうしてご飯を一緒に食べるのも、これが最後かもしれない。


だから今日は嫌な事を忘れて、目いっぱいに楽しもうと思ったのだ。


私はウェイターを呼び『エールをお願いします』と頼むと、ヴィンセルの目がギンとこちらに向いた。


「アレンも飲み過ぎじゃない!?」


そして、ヴィンセルの矛先から逃れた師匠が『いいぞ!いっぱい飲め!今日は無礼講だからな!』と、ちゃっかり自分のエールを注文していた。


それにヴィンセルも諦めたのだろう。

近くにあった肉に、かぶりついたのだった。


そろそろお開きかという時に、師匠が問いかけてきた。


「今日は風呂入んなくて平気なのか?」


「大丈夫ですよ!特殊部隊のみんなで飲みに行くって話してあるので」


すると、バクバクとエビを齧っていたヴィンセルがナプキンで口を拭い、話し始めた。


「え?何?・・・風呂って?」


その言葉に、ゲラゲラ笑いながら師匠が続く。


「コイツの主人は鼻が良いらしく、俺の匂いが分かるんだとよ。

前回の任務の時は、バレないようにうちの風呂貸してやったんだ」


「は!!?

・・・叔父上、なに言ってんの?」


すると師匠は私に向き直り『ほらっ。これが普通の反応だぞ!お前の非常識さを改めるんだな』と、未だにゲラゲラ笑っている。


・・・師匠は笑い上戸だったのか・・・

そして、非常識だったとは・・・


私は、これも心に刻む事にしたのだった。


それから帰り道・・・


「ねぇアレン、叔父上とは何もないんだよね?」


と、しきりに聞いてくるヴィンセル。


「なに?ってなに?」


すると『そ、そんな事オレに聞かないでよ!』と怒られてしまった。


・・・やっぱり、思春期男子は難しいな。


と、心に刻む事がいっぱいある一日となったのであった。


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