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灰色王子のバラ色観察日記  作者: こさか りね


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あの日から数日


もう王都へと帰る日になってしまった。


あれから色々と思い悩んでいる私は、答えを見出(みいだ)せないでいる。


そんな、もやもやとしている私にマイケルが声を掛けた。


「姉様?次はいつ帰ってくるの?」


その言葉にドキリとしたのだ。

次に帰る日は、騎士を辞めた時。

つい先日、騎士を続けたいと思った矢先なのに・・・。


悔しくて、思わず拳を握り締めてしまった。


「・・・えっと、そうね。

また近いうちに帰って来るわ」


「そっか!楽しみに待ってるよ!

じゃあ学園だからお見送り出来ないけど、気を付けてね」

 

マイケルはそう言って、学園へと行ってしまった。


私は帰り支度をして玄関先へと向かう。


見送りは義父母がしてくれた。


「お義父様、お義母様、お身体に気をつけてね。

また、帰ってくるわ」


「ああ、ありがとう。

アレンシアも元気でな!

いつでも帰って来なさい」


「帰りも長旅になるけど、気をつけるのよ。

また、会える事を楽しみにしているわ」


そうして、私は実家をあとにしたのだった。


帰りも行きと同様に途中駅で着替える事にする。

ブティックには、何も買う予定がない私は入れないので、飲食店のトイレで着替える事にしたのだ。


行きと違って、荷物が増えてしまうが仕方ない。


私はバッグに詰め込み、席へと戻った。

すると、すでに頼んであった紅茶が運ばれていたのだ。


席に着き、窓の外を眺めながら考える。


道ゆく人には皆、それぞれの幸せがあり、守るものがあるのだ。


私がこの国に残る事が原因で、壊していいものではない。


・・・はぁ。

ローレンス様には、なんて切り出そう。


それに師匠やヴィンセル、ビル、ゲイル、アルト。


お世話になったみんなの顔が浮かぶ。


私は、理由を考えながら再び馬車へと乗り込んだのであった。


王宮へと着く頃には、すでに日が傾いていた。


私は食堂で夕食を済ませてからローレンス様の部屋へと向かう。


扉をノックすると、ヴィンセルが顔を出した。


「ヴィンセル、ありがとう。

ローレンス様はどう?」


すると、眉間に皺を寄せて呟いた。


「・・・いや。

多分、普通だと思う」


と、ばつが悪そうにしている。


・・・なにがあったんだ?


そして、その様子を見ていたのだろう。

ローレンス様がヴィンセルの横から顔を出した。


それに驚いたヴィンセルが『うわっ!』と声を上げて、飛び退いたのだ。


「アレン!帰ったのか!」


私は、いつもとは違う反応を見せるヴィンセルを目で追いながら『はい。ただいま戻りました』と伝えると、ローレンス様は私の手を引いて部屋へと(いざな)った。


するとヴィンセルは『では、私はこれで』と言い置き、さっさと帰ってしまったのだ。


それからはローレンス様に、雑談をする時に座るソファへと案内された。

そしていつものように、少し隙間を開けて私の隣に座る。


「実家ではゆっくりできたか?」


「はい。お休みを頂き、ありがとうございます」


そう答える私をジッと見つめるローレンス様に、何かあるのかと思い問いかけた。


「ローレンス様はどうでしたか?」


すると、両手を握り締めたローレンス様が真剣に返してきた。


「・・・アレン。

体調はどうだ?」


「体調、ですか?

元気に過ごせております」


・・・・・・・。


なんだろう、この間は・・・


しかも、私を穴が空くほど見ている。

・・・この6日で何があったんだ?


そして、一通り観察を終えたローレンス様が口を開いた。


「何かあれば相談して欲しい」


私は『分かりました』と答え、騎士を辞める事を伝えようと口を開いた時にレノンさんが帰ってきた。


「アレンさん、お戻りだったのですね。

実家はいかがでしたか?」


私はすぐに立ち上がり、バッグの中をガサゴソと探しながら答えた。


「はい。お休みの間、ご迷惑をお掛けしてすみませんでした。

あの、こちらはお土産なんですが、良ければどうぞ」


私は領地の特産品、レモンのコンフィを差し出した。


「お気遣いありがとうございます。

これは、綺麗な色のお菓子ですね」


「はい。そのままでも、ヨーグルトや紅茶に入れても美味しいんですよ」


レノンさんに説明をしていると、視線を感じた。


ローレンス様がジッと見ている。


・・・そうだった!

話していて、つい渡しそびれてしまった。

私は、バッグからラッピングされた箱を取り出した。


「ローレンス様、遅くなってしまいましたが、よろしければ、こちらをどうぞ」


そう言って差し出したのだが、一向に受け取ってくれない。


そして、気付いたのだ。


いつも距離が近いので忘れていたが、ローレンス様は王子である。


私が買えるような物を喜ぶはずがないではないか、と。


「あの、申し訳ありません。

出過ぎた真似をしてしまいました」


そう言って引っ込めようとしたら、物凄い速さで手が伸びて来たのだ。


「いや、違う。

・・・嬉しくて、動けなかっただけだ。

・・・これは本当に、もらっても良いのだろうか?」


「はい。

・・・大した物ではなくて恥ずかしいのですが、受け取って頂けると嬉しいです」


すると、お土産を手に持ち、ずっと眺めている。

・・・待てども開封する気配はない。


出来れば、中を見てもらいたいと思った私は、ローレンス様を促した。


「・・・あの、開けて頂けないのでしょうか?」


すると、顔を上げて目が合い『勿体無くて開けられない』と言う。


「消え物ではないので、是非、見て頂きたいです」


すると、手元のお土産の包装をゆっくりと丁寧に開封している。

大事に開ける姿を見ると、なんだか面映(おもは)ゆくなった。


そして、箱を開けたローレンス様が呟いたのだ。


「アレンの髪と同じ、赤い色の石なんだな」と。


その時、レノンさんが口を開いた。


「ローレンス様は、色が分かるのですか?」


その言葉で気付いたのだろう。


目を丸くして、私とレノンさんを交互に見ている。

すると、ニヤリと笑って『レノンの小麦色の髪の毛が懐かしいな』と言ったのだ。


それを聞いたレノンさんは感極まり『ロ、ローレンス様!良かった!わ、私は嬉しいです』と涙を流して喜んでいる。


そんなレノンさんを横目に、ローレンス様が私に声を掛けた。


「これも、アレンのおかげだ。

君と出会ってから、色々な感情を知る事ができた。

本当に感謝している。

・・・でも、アレン以外の色が分かったとしても、君より綺麗なものはないがな」


そう言って屈託なく笑ったのだ。


その顔を見た私の心が思う。


・・・まだ、一緒にいたい。

もう少しだけだから、一緒に居させて欲しい。


「そうだアレン。

何か言いかけていなかったか?」


そう問いかけるローレンス様に、私は首を振り『いいえ、大丈夫です。それよりも、そのブレスレットは幸せを呼ぶそうですよ』と伝えたのだった。


すると、嬉しそうに『そうか』と呟き、手首に着けてくれた。


・・・来月にはちゃんと話そう。

そう決めて、私はローレンス様の事を見つめたのであった。


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